お嬢様サイエンスクラブがサイバー犯罪組織を倒しますわ
「Black Hat Hacker? 通報ですわ!」
エリーが叫んでスマホを持った。
「待ってや! エリー!」
岸が立ち上がってエリーに言った。そしてうつむくと、あきらめたように言った。
「俺、自首するわ……これで、いつ捕まるか、おびえずにすむ」
岸は顔を上げてシュウちゃんのほうを見た。
「俺はシュウちゃんを見張るために、この学校に来てん。えらい腕のいいハッカーがいるって分かって。それがシュウちゃんやってん」
「なぜ自分のことがバレないと思ったの?」
とシュウちゃんは冷たく言った。
「俺が甘かったわ……でもバレて良かったかもしれへん。あのな、乙女。好きな子には誤解されたくないから、アンタには言うけど」
「こんな時に告白とは、ダイタンじゃな」
「俺は乙女に言うてるねん。俺らは、だまされてたんや。信じてくれるか?」
岸が、あたしを見つめて言った。どうすればいいんだろう。どう言うのが正解なんだろう。
「信じられるかどうか分からないけど、話は聞く……そうしたら、自首するのよね?」
「おおきに」
岸は一瞬だけ笑って、あたしに話しはじめた。
「俺は組織に属さないハッカーやってん。悪くないほうの……サイバー犯罪の対策をするほうのハッカーや」
「どうして犯罪者になったの?」
「だから、だまされてん。軍事施設の破壊の仕事があって。危のうないし誰も死なへん、て言われたから、のってもうた。せやから、家族の個人情報がいるのも、しゃあないかと思うてた……せやのに、ほかの企業を攻撃するように命令されて……ことわったら家族が危ないて言われて……」
「どうして警察に言わなかったの!」
「わからへん……俺らはマインドコントロールされてたんやと思う……それに報酬も受け取ってしもうたし……俺以外にも、だまされたヤツがぎょうさん、おるねん」
岸はパソコンを操作すると、ウインドゥがいくつか開いている画面を見せた。
「これが専用ブラウザ。ひどいやろ」
シュウちゃんが、のぞきこんで
「なに、これ……」
と、つぶやくように言った。
「みんな自分がだまされてるって知っとるから、わざと雑に作ってるんや」
シュウちゃんが岸のパソコンの画面をにらみながら言った。
「これなら、わたしでも壊せるわ」
「シュウちゃん?」
いつもとちがうシュウちゃんのようすに、あたしは、あわててしまった。
シュウちゃんは岸に向かって言った。
「岸、わたしに協力しなさい。あなたが捕まってすむ話じゃないわ。今、世界中の金融機関が被害にあっているのよ。企業イメージを守りたいから表に出さないだけ。これが、どういうことか分かる?」
「俺が思ってるよりも、やばい感じなんや?」
「今はね、世界中を巻きこんだ心中みたいになっているの。きっかけは、死をおそれた一人の老人だったかもしれない。そうじゃなかったかもしれない。とにかく、そういう意識が集まって、実体のない宗教みたいになってる」
「そんなんやったんや……」
「でも、これぐらいのプログラムなら、わたしたちで壊せる」
あたしは怖くなって言った。
「そんな大変なこと、国にまかせたほうがいいよ……」
シュウちゃんは大声で言った。
「政府が何かしてくれたの!? してくれなかったから、こうなったのよ! わたしたちで、やるしかないわ!」
エリーも言った。
「無理と思ってはダメですわ! 本当に無理になってしまいますわ!」
エリーは4人を見わたしながら続けた。
「お嬢様サイエンスクラブは正義の味方ですわ! わたくしたちで悪を倒しましょう!」
岸はまだ、迷っているようだった。
「やっぱり今から自首したほうが、ええんちゃうやろうか」
シュウちゃんは
「味方のふりをして、つぶすほうがいいわ。岸には協力してもらうわよ」
と怖いことを言っている。エリーは
「岸様、だまされて、それで終わりなんて。それでも大和男子ですの!? お嬢様サイエンスクラブは正義の味方! 岸様はお嬢様サイエンスクラブのメンバーですのよ! 堂々としていらっしゃい!」
と岸をはげますように言った。
「どうせ捕まるんやから……」
と、言いながら岸は、作戦に加わることになった。




