彼女たちの秘密(1)
「おーい、そこらへんでもういいかー?」
アリスが泣くのが収まってから少し経った後アーサーが声をかけてきた。
「え」
「そんないちゃつかれたらこっちが困るんだが・・・」
「「・・・・!!」
冷静になったアリスとハルは今の自分たちの状況が分かってきて恥ずかしくなってきていた。ハルは抱きしめていた手を外し、真っ赤になっていた。アリスの方はハル程でないが赤くなっているのが分かった。
「っで、アリスちゃん?心は決まったのかい?」
「もちろん、もう逃げない。私たちは私たちを受け入れる」
さっきまでの感情剥き出しの顔とは違っていたが、そこにはまっすぐな目をしたアリスがいた。
「ハル」
「はい」
「私は今から君に私たちが一体何を持っているかを言う。それを聞く覚悟はある?」
「もちろんです」
「やっぱり、ハルで良かったよ。じゃあ、始めるね」
私たちの秘密を
あれは私たちがダンジョン攻略者になって1年が経とうとしていた時のことなの。私たちはここに来るまでもずっと一緒だった親友だった。だから、基本的には二人でダンジョンに潜っていたの。
「アリス、そっちのモンスターよろしく!」
「任せて。フレイムタワー」
数々のモンスターを私たちは倒していった。私はもうその頃にはスキルで3重詠唱を使えて魔法も多彩になっていた。この頃もゴーレムは倒せていたしその頃に入っていたチームとの連携もとることができていた。しかし、ある日
「ここが第10階層か・・・」
「アリス、チームのみんなとまとまっていて」
「了解、クレア」
私たちは、初めて第10階層まできていた。チームで初めての第10階層ということでみんな緊張していたけれど、連携がしっかりと取れてどんどん次の場所に行こうとしていた。そして、
「みんなーあと、もう少しでダンジョンボスにたどり着くぞ」
「私たちやっとここまで来たのね」
他のチームメイトはかなり喜んでいた。私たちの所属していたチームは十人ぐらいのチーム。そんなチームが10階層まで来たとなれば人気も出てくる。私たちも喜んでいた。しかし、
「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!」
チームの一人が悲鳴とともに逃げていくのが分かった。他のみんなもあいつらの恐怖におびえていた。そのモンスターは、
「なんでだよ!噂じゃ一体だけって話じゃなかったか・・・・なんで・・・・
ミノタウロスが5体もいるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
」
本来第10階層から出てくるミノタウロスは1体だけのはずだった。けど、私たちは知らなかった。極稀にミノタウロスが多いデットタイムがあることを。5体のミノタウロスは容赦なくチームのみんなを襲っていた。私とクレアはそれでもみんなを守ろうと必死になって戦っていたんだ。
「エンチャント[姫の歌声]」
「オールキュア!」
私たちの活躍でミノタウロス1体はどうにかなりそうだった。しかし、
「うわああああああ、こっちにくるなああああ」
チームのリーダーが4体のミノタウロスに追いかけられていた。
(今チームのリーダーを失えば、みんな戦意喪失する)
私はそう思って、
「ウッドバインド!!!!!」
4体全部に捕縛魔法をかけた。ウッドバインドは一度の詠唱で2体の対象を30秒だけ止めることができる。
「リーダー今のうちに攻撃を!」
私はチャンスだと思い、リーダーに声をかけた。だが、リーダーから出た言葉は、
「無理だ」
「・・・・・・・え?」
敗北宣言だった。
「無理だ無理だ。なんだ畜生!やっぱり俺らじゃ・・・」
「リーダー何を・・・」
そして、
「じゃあ、あとはまかせた」
「は・・・・?」
「だから、任せたっていってんだよおおお!!!!!!!!!お前強いんだから平気だろう!!!!!それで足止めして俺たちをせいぜい守ってくれや!」
そう言ってリーダーと他のチームメイトは
ダンジョンボスエリアの扉を閉めた。
「な!!!!!!!!!!!」
ダンジョンボスエリアは基本的には逃げることができるようになっている。しかし、それは扉が開いている時だけだ。それを閉じてしまった時には、
「・・・・・・・・・・・・・・・・もう出られない」
絶望の音が聞こえてくるようだった。




