限界と苦しみ
「クレアさんがさらわれた・・・?どうして・・・」
「それが分からないの!なんか肩のところに牙みたいなロゴをつけている人間二人と獣人一人に路地に連れてかれて・・・私そこまでしか見れなかったんだけど、その後その路地見たらもういなくて・・・」
泣きそうになりながらそう伝えてきた果物屋のおばさんにハルは焦りと疑問が続いていた。
(なんでクレアさんが?確かにヒーラーってだけですごく使えるとか思うかもしれないけど、強さで言ったらそんなに強くない部類・・・わざわざクレアさんを狙う必要がない・・・それにヒーラーなんてもっと探せばたくさんいるはずだし・・・)
そう悩んでいる間にアリスがとても焦っているような顔をしていた。あのどんなにモンスターに囲まれようとも動揺している素振りすら見せなかったあのアリスが。そのように動揺しているアリスに、
「もう隠し通せないんじゃないのか」
そう後ろから声をかけてきたのはアーサーであった。
「アーサー・・・」
「これからずっとハル君に隠し通す気か」
「うるさい・・・」
「お前たちはいいかもしれないが、ハル君はどう思う」
「うるさい」
今まで見せてこなかったアーサーの静かな言葉にアリスは震えていた。
「お前が認めたハル・クラリスはそんなちっぽけな」
「うるさい!!!!!!!!!!!!!!」
次の言葉を言う前にアリスが叫び、周りには魔力が膨れ上がった。
「うるさい!うるさいうるさい!!アーサーお前に何が分かる!!世界で正しいとされている力を持っているお前に何が分かる!私たちはどんなに苦しい思いを」
ハルはアリスが初めて見せた荒々しい感情の前で戸惑っていた。
(いったい何が・・・)
「私の力!あの子に分け与えてしまった力の苦しみが!」
ハルはアリスの叫びをどう止めたらいいか分からなくなっていた。しかし、この光景はどこかで見たことがあると思っていた。
「お前に・・・いや・・・」
しかし、次の瞬間そんなことどうでもよくなっていた。
「私はどう・・・したら・・・良かったの・・・?」
「アリス」
「ハル・・・?」
ハルは魔力など気にせずにアリスの事を抱きしめていた。
「僕は、確かにアリスの事についてよく知らないし二人よりも弱い。けどね、これだけは言えるんだ」
「ハル・・・」
「僕はどんな君たちだって受け止める。だって」
ハルは言葉を紡いだ。
「僕たちは仲間なんだから」
「ハ・・・ル・・・」
「そもそも僕だって変わってるんだし」
アリスはその言葉を聞いたからなのか、魔力は収まってきていた。そして、
「あ・・・りが・・・と」
涙を流してそう言った。




