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087 アズサ、皇帝にリベンジその2

「朕に万一のことがあれば皇后と宰相がこれまで通り、政治を取り行うので心配はいらぬ。ただ天界からの軍勢は予想外であったが……」


「天界からの軍勢がお嫌なら、その泉の水は私に返して、皇帝殿が滝に一月打たれることで、龍神たる私が天界との仲介に当たってもよくてよ。もちろん、仲介費用はこの宮殿の建造費程度でお願いね」


「帝国が焼け野原になるのはお嫌でしょう?」


 貴族の間にざわめきが起きた。できれば天界との戦争は避けたい気分が伝わってくる。今の病状の皇帝が一月も滝に打たれれば確実に亡くなる。貴族たちとしては、龍神への仲介料は帝国が支払うし、はっきりいって死にかけの皇帝の命一つで丸く収まるなら万々歳だろう。


「龍神殿、朕は病気を治したいのだ。不老不死を望んでいるわけでもない。帝国は天界との戦争を望んではいない。そのことはわかってほしい」


「つまり、泉の水は返さないということね。それだと帝国全土が焼け野原になるわよ」


 貴族たちはどうか泉の水を諦めて龍神に返してほしいという顔になっている。帝国領全土が焼け野原になるということは、自分の領地が焼け野原になるということだから。


「仕方あるまい。また再建すれば良いだけだ」


 貴族の皆さんの落ち込み方が露骨だ。これって後で粛正しゅくせいする理由になると思う。マーリンのクソジジイが魔石に録画している。


「龍神殿、朕は泉の水は返すつもりはないが、どちらが命の水かを教えてくれるなら、国庫の金をすべて龍神殿に捧げるのだがいかがだろうか?」


 皇帝は龍神と交渉を始めた。すごい胆力だ。



「嬉しい申し出なのだけど、それはルール違反なの。ご自分で選んで、自分で適量を判断してちょうだいね」


「どちらの水を飲んでも、飲みすぎれば死ぬから」


 皇帝はテーブルの上に置かれたポーションの瓶を取り上げて口につけて一気に飲み干した。エルフのボワンナーレさんでも七転八倒をした量の水を飲んじゃった。これは間違いなく死ぬ。


 私は思わず「飲みすぎだ」っていってしまって注目を浴びた。


 皇帝はポーションの瓶を床に落とし、体は玉座から落ちそうになった。マーリンのクソジジイが駆け寄り、私も見たことのない大魔術を展開した。もしかして蘇生魔術かも!


 小一時間、大魔術が行われた。マーリンのクソジジイの全身から汗が吹き出しているのがわかる。


 皇帝は意識を取り戻して、大笑いを始めた。賭けに勝ったみたいだ。帝国全土を焼土にして命をながらえる、両親の仇、故郷の仇が笑っている。


 私の中で怒りが全身を駆け巡る。リーファさんが私の手を握った。えっと思ってリーファさんの顔を見た。リーファさんも笑っている。


「皆の者、朕の病は治らぬ。この病は朕の業から生み出された病だ。朕のこれまでの行いが病になって、朕に襲いかかっている。命の水を飲んでも朕の病は治らぬのだ!」


「皇帝は知恵の水を飲んだのよ。すべてがわかったみたいね」リーファさんが笑顔で私に説明してくれた。


「リーファさん、ポーションの瓶には本当に命の泉の水は入っていたのですか? どちらを飲んでも知恵の水ってことは……」


 あり得る。私はリーファさんが泉の水を汲んだのは見たけれど、瓶に入れるところは見ていない。ていうか見えなかった。


「ちゃんと泉の水は入れたわよ」


 命の泉の水だっていってるのに……。


「皆の者、これで天界との戦争は不可避になった。しかも魔王ともおそらく戦うことになるだろう。アズサは私が奴隷に落とした勇者の子孫、剣鬼の娘。龍神をその後見人とし、魔王を親友とする者。帝国を滅ぼす者。アズサ、気分はどうだ! 帝国が滅びるさまを見るのが楽しいか? お前の父親は私が殺した。母親も間もなく殺す」


「私の母は生きているのか?」


「ああ、生かしている。しかし間もなく死ぬ。帝国が滅びを迎える時にな」


「その前に、お前が育った街に軍隊を送ろう。お前の故郷を燃やしたようにすべて燃やそう」


「あら、想定外だわ。皇帝がご乱心してしまったわ、まさかポーションを一瓶一気飲みするとは思っていなかったから……」


「リーファさん……」


「アズサ、ここを脱出するわよ」


 そういうとリーファさんは黒龍の姿になった。私とアリスとルーがいつのまにか黒龍の背中に乗っている。大広間の天井に黒龍がブレスを吐いた。見事に大きな穴があいた。私たちはその穴から空に舞い上がった。




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