088 アズサ、ドルドの街の責任者に指名される!?
ドルドの街に戻ると魔王グリムが待っていた。
「アズサ、私もお風呂に入ってみたいのだ。リーファが定時報告で盛んに気持ちよかった。アズサに体を洗ってもらったと自慢するのだ」
あのですね。何を呑気なことをって思ったけれど、「お風呂に行きましょうか? 疲れたし……」
私たちは神殿の湯にきている。
「グリム、皇帝がこの街を焼き討ちにするそうよ」
「皇帝は自暴自棄になったのだ。お風呂に入って気持ちよくなれば冷静な判断もできるだろうに……。ふう、極楽、極楽。魔王城にも大浴場を作るのだ!」
グリムも見た目の割にはオッサンが入っている。
「ドルドの街はすでに魔族の支配下にあるので、皇帝が軍隊を送っても問題ないのだ」
「グリム、どういうことなの?」
「私と一緒に魔族の部隊がドルドにきている。ダンジョンの十一階層に魔王城とドルドとの間に転移陣を設置したのだ」
「それで、この街には魔族がき放題なのだ」
それって思い切り問題が発生しそうなのだけど。
「ところで、アズサ、この小さいのはなんなのだ」
ルーとグリムは初対面だった。身長は二人とも同じくらいに見えるのだけれど。
「私の妹のルーです。グリム」
「アズサの妹なのにどうして、精霊を封印したままにしているのか? この子もアズサ同様に危険物なのか?」
私を危険物扱いするのはやめてほしい。
「ええっと、ルーは魔法とか魔術とかは使えませんけど」
「この子は生粋の精霊術師だから、そういう余計なものはない方が良いと思うのだ。アズサみたいになっては困るのだ」
「まあ、封印は私が外しておく、精霊術はエルフから学ぶと良いと思うのだ」
そういうとグリムは、ルーの胸を軽く触った。ルーは真っ赤な顔になっていた。とっても可愛い。
「さて、この街は魔王直轄地になったわけだが、責任者が魔族だと人種も嫌だろうから、この街の責任者を指名したいのだ」
「立候補または誰かを推薦してほしいのだ」
「……」
「誰もいないのか?」
「私たちには無理だと思います……、推薦って言われても誰がこの街に残るのかがわからないし」
「そうか、それならこの街をでれば、間違いなく捕まるアズサにしておこう。ちゃんと補佐は付けるから安心するように」
「ウゲ」と私は奇声を発してしまった。
「ギルドの掲示板を見た?」
「見たよ、びっくりだよ。この街が突然魔王直轄地だって……」
「ドルドの街の冒険者ギルドは解散なんだよ」
「魔族が支配する街に冒険者ギルドって悪い冗談だもの。ランカーさんとかはドルドからでて別の街のギルドに移るって」
「何日かしたら神殿も閉鎖だし。ここのお風呂は使えなくなるし……。私は一から出直しだけど、私も別の街に行くわ」
「私としては、この街に残る方が安全だと思うのだが、帝国全土が焼け野原になるのは確実だからね」
リーファさんは、助言したいけど、助言すればさらにパニックになるのがわかっているので、私たちにだけ聞こえるようにつぶやいた。
「リーファ、先に天界に殴り込みをかけるのもありだと思うのだけど?」
「グリム、私はこれでも龍神なのよ。神なわけね。天界から追放されているけど……」
「無実の罪なのに、リーファはなぜ怒らないのか?」
「神々も色々あって、私が油断していたから追放されたわけだし、怒っても仕方がないのよ」
「しかしだ、最近初代様が宣戦布告という名のもとで天界で大暴れしたから、天界の軍勢が地上に押し寄せるのは五年とか十年後ではと思うのだけれど」
「帝国領を焼き討ちにするだけだから十柱もいれば十分なの。形式的な処罰だから」
形式的な処罰で帝国領全土を燃やすって神々がどういう感性をしているのか理解できない。
「リーファさん、質問です。形式的な処罰ではなく本格的な処罰だとどうなったのですか?」
「地上の生き物がほとんど全部、いなくなるかな。神話でよくあるじゃない世界が大洪水になったっていうの。あれね」
天界の神々って手加減ってものを知らないのか。
「ねえ、グリム、私、天界にいきたいのだけど……」
「殴り込みか! 初代様にも連絡しないとだな」
「初代様は置いておいて、神々とお話し合いをしてみたいわけで……」
「アズサの首一つでは納得しないと思うのだけど」
私が死ぬのが前提のお話合いにどうしてもなるのだろうか?
私たちは、お風呂をでて街の様子を見ていた。街の人たちが右往左往している。これは完全にパニック状態だ。




