086 アズサ、皇帝にリベンジその1
翌日、午前中は待ったけれども皇帝からの呼びだしはなかった。で、リーファさんは午前中に呼びだしがなかったから「今日のアズサの呼びだしはない。なので帝都を案内して」と言われた。
大丈夫かなと思いつつも私とアリスは部屋をこっそり抜けだして、リーファさんと帝都観光に出かける。
黒龍様の提案を断れるほど、私は愚かではない。第一、泉の水が入ったポーションはマーリンのクソジジイに渡したし、私が皇帝に呼びだされる意味わからないもの。
私もアリスも帝都のことはわからないので、若様に連れていってもらった、レストランにリーファさんを連れていったら、「こんな田舎でもちゃんとした料理が食べられるのか」って感心していた。ここ帝都なんだけどって心の中で一応ツッコミを入れた。
リーファさんが一番気に入ったのはアクセサリのお店で、リーファさんは光ものに目がなくて爆買いをしていた。店にでていた商品を全部ってどんだけお金持ちなんだろう。しかも即金で支払って、商品は国に戻る時に取りにくるからって、私も一度で良いのでいってみたい。
翌日、朝食後、皇帝から呼びだしがあった。「アズサ男爵、皇帝陛下がお呼びです」って言われた。しばらくアズサ男爵とやらを目で探してしまった。
呼びにきた侍従の後に私はついて歩く。当然のようにアリスもリーファさんもついてきた。広間の扉の前で兵士が二人を止めようとしたが、動けなくなっていた。リーファさんが軽く威圧をしたから。
私たちは、大勢の貴族が待機している大広間に入ったら、敵意のある視線多数を浴びせられた。気の弱い冒険者だったら視線だけで死んでいたかもしれない。
大広間には白猫のエルリックさんの姿も見えた。泉の水の件でドルドから呼びだされたみたいだ。かなり疲労しているように見えるので、お友だち価格、金貨一枚のところを銀貨五枚で治癒魔法をかけてあげようかなと思う。依頼してくれるとは思わないけれど。
大広間の扉が閉められた。私たちの周り三メートルには誰も入ってこない。リーファさんの威圧が続いている。私もめっちゃ怖いので、早く威圧を止めてほしい。
マーリンのクソジジイと皇帝が大広間に入ってきた。皇帝は両脇を近衛騎士に支えられている。顔色は比較的良いので、病状は安定しているみたい。
「昨日より、朕がこのポーションの水を飲む方が良いのかどうか議論を続けてきた。ほとんどの貴族は反対であったので、朕は一日待つことにした」
昨日は朝からずっと泉の水を皇帝が飲んだ方が良いのかどうか、議論をしていたのか。人が飲んだらどうなるのかわからない水だし、エルフのボワンナーレさんだってあれだけ苦しんだ水だから、皇帝が泉の水の力に耐えられるかどうかが?
マーリンのクソジジイも鑑定ができなかったので助言のしようもないし。
「朕はこの水を汲むために兵士四万を死なせたのだ」
そこは反省すべきだと思う。私の帰りを待てば、四万の兵士は死なずに済んだのだから。
「朕がこの水を飲めば、病が治る」
いえ、治りませんからって心の中でツッコミを入れた。
「陛下、お畏れながら。どちらが命の水で、どちらが知恵の水なのかわからないことには、危険すぎます」
「陛下にとっての適量も不明では、毒を飲むのと同じでございます。ご再考を……」
まあ、普通そう思うよね。リスクが高すぎる。
「アズサ、どちらの水が命の水なのか? 水を汲んだその方ならわかるであろう!」
侯爵様かな、公爵様だろうか? たくさん勲章を付けているオジサンが私に問いかけるというか、咎める感じでいってきた。
「私が泉の水を汲んだわけではございません。泉の水を汲むには大量の魔力を神々に捧げないと汲めませんから、命の水を汲んだのは、私の隣におられますリーファ様でございます」
「リーファとは何者なのか?」
「サレル侯爵殿、それ以上の発言は宮殿の外でお願いする。リーファ殿は我が師、ファグニールの友。東方を治める龍神。神々の座に座るものがここにいる」
「神ならば、リーファ殿にどちらが命の水なのか尋ねれば良いではないか?」
「サレル侯爵、龍神への捧げものを用意してくれると約束してくれるのであれば、ワシが尋ねても良いが。そうだな、この宮殿をあと二つか三つ建てられる金貨が必要になるが……」
サレル侯爵が固まった。
普通に無理だ。で、リーファさんって東方を治める龍神だったのか。なのになぜ、ダンジョンの龍の谷にいたのだろう?




