085 アズサ、帝都に戻るその2
私、ルー、アリス、リーファさんの四人は皇帝から迎えの馬車に乗っている。馬車の周囲は騎馬に乗った騎士に守られている。ざっとその数数百騎。
これって護送だよね。逃げられないように軍隊で囲んでいる。騎馬兵は皇帝直属の部隊で超エリートさん。甲冑もキラキラもので実用性はゼロだと思う。お金持ちだから、汚れたらあっさり捨てるのだろうか? 捨てる時は呼んでほしい。拾いに行くから。
命の泉の水と知恵の泉の水の判別の仕方は、たぶんリーファさんは知っている。リーファさんがダンマリなら、皇帝は二分の一の確率で飲むだけのこと。その前にマーリンのクソジジイの鑑定をするとは思う。
私としては両親の仇なんだから、皇帝が分量を間違えて死んでも別に構わない。死ぬ前に両親に謝ってほしいけれど。期待しても無駄だと思う。
皇帝が水を飲んで死んだ場合、シールドでルーとアリスを守って、宮殿に特大サンダーボルトを一発落として、宮殿を脱出し、女将さんたちを連れてダンジョンに逃げ込む。
天界の軍勢が帝国とやり合って、帝国が滅んだらダンジョンから地上に戻るというのが私の計画だったりする。リーファさんは自由行動。龍神として天界の軍勢の先頭に立って暴れるのも良し、我関せずで世界観光に行くのも良しってことで。私にはどうすることもできないから。
「お師匠様、どうかされました?」
「皇帝陛下が、死んだらどうしようかと思案を巡らせていたの。アリスとルーは絶対に私から離れないこと。三人で宮殿を脱出します」
「あら、アズサ冷たいわね。私も一緒に脱出するから、宮殿の中でドラゴンの姿になってあげるから。なんなら私の背中に乗せてあげるわよ」
「リーファさん、ありがとうございます。その節はよろしくお願いします」
「そうね。そのままグリムのところにでも遊びに行きましょうか? ドルドの街を守らないといけないのでしょう?」
「そこまでしてもらえるのですか?」
「これはグリムが立てた計画だから、お礼はグリムに言ってちょうだいね。それとドルドの街は魔王直轄地にするから、そこは納得してね。もしかしたら帝国が久しぶりに、異世界から勇者を召喚するかもよ。面白いことになるかもね」
「リーファさん、すみません。お話についていけないのですが……」
「ええっとどこからついて、これなくなったのかしら?」
「はい、勇者を召喚するところからです。なぜ、帝国は勇者を召喚するのでしょうか?」
「天界から軍勢がいつくるのかわからないのに、ドルドに軍隊は送れないよね。第一魔王領に軍隊を送ったら、天界と魔界両方と戦争よ。だったら使い捨ての勇者を召喚する方が安上がりでしょう」
「勇者って使い捨てなんだ……」
「あなたの魔力量もご先祖様が勇者だったお陰だと思うわよ。ドラゴン並みにあるもの」
ええっと私ってドラゴン並みの魔力量があるのって褒められているのだろうか?かなりディスられたような気分になってしまったのだけど。私のご先祖様って使い捨て勇者だったのか。帝国ってロクなことをしないね。
宮殿に戻ると、そのままマーリンのクソジジイの研究室に連行された。
「命の泉の水を出しなさい。鑑定するから」
「下手に鑑定なんかしたら効果がゼロになるわよ、魔術師さん」
リーファさんがマーリンのクソジジイに喧嘩を売った。これは楽しみだ。
「ドラゴン臭いと思ったら、アズサ、ドラゴン同伴で戻ってくるとはどういうつもりだ……。言わなくて良い、お前は人外だった」
ジジイ、人を人外認定ですべてを納得するなよっと心の中で叫んだ。
「臭いますか? やだあ。ちゃんとお風呂に入ったのに、ねえ、アズサ、あなた、私の体ちゃんと、私専用の石鹸で洗ったわよね!」
「リーファさん、心を込めて洗わせてもらいました」
「ドラゴンの波長は消せないだろう。臭いというのはものの喩えだ」
「へえ、あなたにドラゴンの波長がわかるの」
「私の魔術の師匠はファグニールというドラゴンだ」
「ファグニール? 気難しやで、面倒くさい奴がよく人種の弟子なんかをとったよね。信じられないわ」
「事実だ」
「そう、引きこもりドラゴンの見舞いにいった時に尋ねてみるわ」
「師匠は極めて繊細なんだ。ドラゴン基準で判断しないでもらいたい」
ドラゴン基準ってなんだろう。人の基準も私にはわからないけれどね。
「鑑定はダメか?」
「しない方が良いとだけいっておくわ」
「アズサ、二本ポーションがあるが、ギルドを通じて依頼した冒険者たちが言うように、どちらが命の泉の水かはわからないのだな」
「私にはわかりません……」
「ドラゴンにはわかるのか」
マーリンのクソジジイはリーファさんを見つめた。
「明日、朝、アズサは、皇帝陛下がこの水を飲むかどうかの会議の後、呼びだされるかもしてないので、自室で待機するように。侍女とドラゴン殿は好きにすると良い」




