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084 アズサ、帝都に戻るその1

 私たちは、早く里に戻りたいボワンナーレさんの指示に従って、最速でダンジョンを出た。三十六階層で試作品二号の報告を待ち望んでいる、メアリー王女への報告もせずに。二十一階層でゴブリン兵と睨みあっていた帝国軍には泉の水を持ち帰ったことを、白猫さんたちが伝えたので、帝国軍は二十一階層から撤退をした。


 問題というかなぜか、リーファさんが、四十九階層で私たちと別れることなく、ドルドの街についてきている。リーファさんは異国の顔立ちと服装なので、ドルドの街でかなり目立っている。そんなリーファさんに声をかける命知らずの男たちが何人もいて、私はハラハラしている。リーファさんの気分しだいでこの街がなくなるもの。


 白猫さんたちはギルドに報告に行った。白猫さんたちの顔色はとても悪かった。世界の終わりがくるという内容の報告だから当然だよ。


 ヒロシはダンジョンをでると、おいちゃんにえらい事になったと報告をしに行った。確かにえらい事になった。天界の神々が、帝国を攻めるのだから。


 私も帝国から逃げた方が良いのだろうか? 意味はないかもだけど。可能性があれば逃げようと思っている。

 逃げるのは冒険者にとって恥ではない。なんとか生き残ることこそ正義なのだから。


 ミーアは、すべてを悟ってしまって生きる気力がを失ったボワンナーレさんと一緒に里に戻っている。ソーヤさんにボワンナーレさんを預けたら、すぐに戻ってくるそうだ。神々の罰を受けるために……。律儀だ。




 私とルーとアリスとなぜかリーファさんも神殿のお風呂にきている。


「リーファさん、私たちこの後どうなるのでしょうか?」


「別にどうもならないと思うわよ」


「結界を破って泉の水を持って帰ってきたわけですから、ただで済むとは思えないのですが?」


「天界の神々の都合もあるし、天界の時間と地上では時差があるから、すぐにどうこうってことにはならないわよ」


「天界から地上に軍勢がくるのは一年後かもしれないし、十年後かもしれないし」


「天界から軍勢はくるのですか?」


「それは決まりだから。必ずきます」


「平和的に解決する方法はありませんか?」


「そうね、首謀者の首と手伝った者全員の首を差し出せば穏便に済むとは思うけど……」


「無理ですね。首謀者は皇帝ですし、私たち、全員が関係者ですから……」


 皇帝の首とボワンナーレさんの首で済むのなら、私はすぐに動いたかもしれない。




「白猫さん、五十階層まで潜ったんだって。さすがランカー。これで念願のランキングトップ確定だよね」


「治癒師のアズサさんも一緒にだったらしいよ」


「黒猫から白猫への華麗なるトラバーユか良いなあ……」


「黒猫さんはトップテン入りしてまた下がるみたいよ。お気の毒よね。アリスはアズサさんに弟子入りしたから、今は治癒師がいないのって笑えるよね」


 アリスはここにいるのだけれど、湯気で見えないのか。まあ、私もいるのだけれど。私、白猫に入った覚えはなし。まあ、噂だしね。アリスはまったく聞いていない。じっと私を見つめている。ちょっと怖いので勘弁してほしい。


「あのう、リーファさん、この後どうされるのですか?」


「そうね。久しぶりの地上だし、観光でもしようかなあ」


「私たちは泉の水を帝都に運ぶことになっているので」


「そうなんだ。じゃあ帝都観光からかな。一緒に行くね」


「ええ、どうぞ、どうぞ。私たちと一緒なら宮殿にも入れますから」


 黒龍の提案を却下する勇気は私にはない。


「リーファさん、そのですね。お宿をどこにしましょうか? 早めに予約を入れたいので、ドルドって小さな街なので、すぐに宿屋が満室になりますから」


「アズサたちと一緒で良いよ。私は気にしないから。ミーアのベッドが空いているでしょう」


 アリスの表情が固まった。黒龍と同室ってとても心臓に悪い。


「お師匠様、私はリーファ様にお部屋を、そのお譲りしますので、お師匠様のところで寝かしてください」


 アリスが涙目で言うので、私も断れない。


「アリスは、私と同室は嫌なの?」


「とんでもないです。ただお畏れ多いだけで……」


「アリス、気にしなくても大丈夫だから、リーファって呼んでも良いよ」


 アリスが詰んだ。



 女将さんがいつものように賄い料理を食べさせてくれた。女将さんが、なぜかリーファさんの手を夕ご飯を食べながら見つめている。


 リーファさんが「お箸」で夕ご飯を食べているので、興味を持ったみたい。


「リーファさんは異世界人ですか? とっても綺麗なお箸使いをしている」


「私は異世界の人間ではないけれど、しばらく向こうで暮らしていたから、そこで学んだのよ。この料理美味しいわただ……」


「あと、焼きのりと納豆があればパーフェクトなのに……」


「以前、納豆を一度だしたのですけどね。臭いとネバネバを嫌がって誰も食べてくれなくて、焼きのりも黒い紙だと言われて……」


「食文化はなかなか理解が得られないものだから、美味しいのにねえ」


 二人だけでわかり合う会話をしている。二人とも異世界に詳しい。私も異世界に行ってみたいな。天界の軍勢がくる前に。きてる時でも良いなぁ。


「リーファさんの服の素材はポリエステルですか?」


「ポリエステルとポリウレタンも入っているから伸縮するので気に入っているわ」


「こっちの世界は伸縮性のある素材がないのが、残念ですよね」


 私には何のことやらまったくわからない。私は二人の奇妙な会話を聞きながら夕ご飯を食べて、帝都に行く準備をした。アリスが涙目になっているけれど、私にできることは何もない。頑張れアリス。

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