083 アズサ、リーファさんのサポートで課題を達成する。
「アズサ、白露草のポーションが入っていたポーションの瓶を私に渡してちょうだい」
私は清潔な布で、私がポーションの瓶に口をつけたところを拭って、リーファさんにポーションの空瓶を渡した。リーファさんはそれぞれの泉から、水を二回ずつ汲みポーションに入れて、二本をボワンナーレさんに渡し、二本を私に渡してくれた。
ボワンナーレさんは真剣にポーションを見ている。「わからない。どちらが知恵の泉の水なのか? 先に皇帝に飲ませてから、飲むのが安全だろうか? いや待て、あの皇帝が水の分量を間違えて即死した場合、どちらの水かがわからない。そもそもただの人が飲んでも大丈夫なのかもわからない……」
ボワンナーレさんが不穏な発言を連発している。皇帝が飲んで即死した場合、その水を飲ませた私はどうなるのか? どう考えても皇帝毒殺の暗殺者になる。だからといってこの水を皇帝以外の誰かが飲むわけにもいかない。その人が飲んだ途端、片方のポーションの中に入っている泉の水がただの水になってしまうのだから。
これって詰んでいるのではないだろうか?
「リーファ様、あのう、どの瓶にどちらの泉の水を入れたのか? 教えてほしいのですが」
「覚えてないわ。忘れた。二人にはそれぞれの泉の水を渡したので、命の泉の水と知恵の泉の水を持っているのは確かだから安心して良いわよ」
ボワンナーレさんががっくりしてから「確率二分の一かあ」と叫んだ。
皇帝が飲んでから、ボワンナーレさんが飲む選択肢が消えた。手前の泉の水を入れたのがどのポーションの瓶なのかがわからない。私にはリーファさんが故意にシャッフルしたようにも見えた気がした。
おそらくボワンナーレさんもそう思ったから、今の質問をしたに違いない。
ボワンナーレさんが覚悟を決めたようだ。右手に握ったポーションの瓶を飲み干した。分量は大丈夫なのだろうか? 飲みすぎると死ぬ。
ボワンナーレさんはポーションの瓶の水を一気飲みするとすぐに苦しみ出して、床の上を転げ回っている。小一時間、床を転げ回ると、ボワンナーレさんは静かになった。死んだかもしれない。近寄ると寝息をしている。生きている。良かった。
三十分ほどしてムクリとボワンナーレさんが起き上がった。「私は愚かだ。私はもはや巨木と一体化するしかない」
「ボワンナーレさん、どうしたのですか? 急に」
「私は知恵の泉の水を飲んだ。そして私の中のすべての神秘、謎が解き明かされた。私にはもはや好奇心がなくなった。私の生きている意味がなくなったのですよ。ワクワクすることもなくなりました。私は早く巨木と一体化してこの虚しい気持ちから逃れたいのですよ」
「生きることは謎で満ちていてこそ、意味があったのです。私はミーアとともに里に戻ります」
「ボワンナーレさん、天界とですね。戦いがあるのですが?」
「謎のない世界など滅びれば良いのです」
「そんなあ……、無責任な……」
「アズサ、好奇心を失ったエルフに何をいっても仕方ないのだ」
「あのですね。質問です。リーファさん、リーファさんが結界に入る際、私たちが入った時には起こらなかったことが起こりましたよ。しっかり私は見ました。どういうことですか?」
「アズサ、私は龍神だから結界に普通に入れるの。神が入った時は、ああなるわけです。天界にも私がここに入ったことは知れている。あそこから私たちを天界の神々が見ているはずです」リーファさんがそっちに向かって、笑顔で手を振った。
つまり、私たちがここにきたのがバレているわけですか。初めからそのつもりでリーファさんは私たちについてきたわけですよね。
私たちは、皆んなが待つ洞窟の入口に戻った。
「アズサさん、首尾は?」
「泉の水は汲みましたが、いろいろ制約があって……」
「一番の問題はどちらが命の泉の水かどうかがわからないのです」
「それと飲む量を間違えると即死します」
「飲む量というのはどのくらいですか?」
「わかりません」
「最悪だ!」
「ボワンナーレさん、わかりますか?」
「わかりますよ。でも、別に話す必要はありませんね。飲み過ぎれば死ぬし、死ななくても病気は治りませんし。こんな世界なんて早く滅びれば良いのですよ」
最後はそこへ持っていくのか。ボワンナーレさんに頼るのは諦めた。
「ミーア、私は里に帰ることにした。一緒に帰ろう」
「叔父様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。私は一刻も早く巨木と一体化したいのだよ」
「叔父様……」




