082 アズサ、ボワンナーレさんの本気を見る
ボワンナーレさんは一言も言葉を発せずにひたすら、地面に何やら書きまくっている。全然理解できない。
「リーファさんがそれを見て、エルフ殿に悪いことを言ったなあ」って反省しているから、結界が解除できるかもしれない。でも、妖魔が多すぎる。
鼻と耳から入れないと分かると、色々なところから入ってこようとするので、妖魔のことが私は大嫌いになった。風魔法で吹っ飛ばそうかと思って、チラッとリーファさんを見たら指でバッテンをしていた。
シールドを張ってその中に入ってきた妖魔だけを吹き飛ばすことにした。厄介だ。
ゴブリン兵を倒していたエルリックさんが「しくじった。すまない。アズサさん、妖魔が体に入った」
「アズサさん、僕たちも……」
「皆んなありがとう、瓢箪を置いて全員撤退して。急いで。後は気力で妖魔を押し出して、エルクシエルはそのためならどんどん飲んでね」
「アズサさん、我々の分もその……、お願いしたい」
「ええ、どうぞ」
「お師匠様、申し訳ありません。不甲斐ない弟子で……」
「良いから」
「ママ、頑張ってね」
「ルー、お願いだからお姉ちゃんって言って」地味に堪えているの。
「皆んなありがとう!」
「あのう、リーファさんは?」
「私はアズサの見張りだから、撤退するわけにはいかないかな」
ボワンナーレさんに寄ってくる妖魔を私は瓢箪に入れている。やっていることは相変わらず地味だ。
「アズサさん、悪いけれどここに手を置いて魔力を流してほしい」
ボワンナーレさんが魔方陣を描きあげて私にいう。
「ここに手を置くだけで良いのですね」ボワンナーレさんが頷く。リーファさんはじっと魔方陣を見つめている。おいおい、この魔方陣はいったいどれだけ私の魔力を持って行くのか?
マーリン様特製の白露草のポーションを四本も飲んだ。これって私の魔力じゃないか。私の中でマーリンのクソジジイにマーリン様は降格した。
「アズサさん、もう少し頑張って。魔方陣が間もなく光りますから!」
魔方陣が光った。結界も光った。
「アズサさん、結界が破れました。ここから入ってくださいな」
「私はけっこうです。神々に喧嘩を売るつもりはないので」
「あなたの魔力で結界に裂け目ができたのですから。もう遅いですよ。アズサさんが入らないと私が入れません」
ボワンナーレさんにはめられた。最悪の展開だあ。リーファさんを見た。入るようにって言ってるみたい。
私は結界の裂け目から中に入った。ボワンナーレさんは私の後に続いた。リーファさんは普通に裂け目ではないところから入ってきた。結界内がリーファさんが入った途端光輝きだした。眩しい。黒龍恐るべし。
泉の上に何やら掲示されている。用量、用法の注意書きみたい。
泉の水取り扱い説明書
1、生涯で泉の水を汲むことができるのは一度だけ。
2、両方の泉の水を汲むことはできる。
3、泉の水を一回汲むと一万魔力が神に奉納される。
4、両方の泉の水を汲んだ場合、どちらか一方を飲んだ段階でもう一方の泉の水の効果はなくなる。
5、両方の泉の水を混ぜるとただの水になる。
飲む量が多かった時は死ぬので、適量を飲むこと。
尚、適量は個人差があるので注意すること。コップ一杯の水を飲むと間違いなく死ぬので注意すること。
「さすがは神様ですね。これでは汲めないし、飲めないです」
命の泉がどちらで、知恵の泉がどちらかもわからない。両方を飲むとただの水。飲む量を間違えると死ぬし、コップ一杯ってどの大きさのコップのことをいっているのかも不明だよね。
一万魔力ってどれだけの魔力量なのかもわからない。もし私の魔力量が一万魔力だとすると、水を一回汲んだだけで死ぬと思う。これって明らかに水を汲んだら死ぬぞっていっているのと同じだと思うのだけど。
「ボワンナーレさん、どうしますか?」
「私の半身が冥府にいるので、私には一万魔力もの魔力は私にはありません。私が、泉の水を汲むのは無理です。おそらく、アズサさんにも一万魔力もの魔力はないと思うので、泉の水を汲みのは無理だと思います」
「これが私たちの限界ってやつですね。本当に笑うしかない」
「あら、お困りですか? 私が泉の水を汲んであげましょうか? ここまできて手ぶらは悲しいですものね」
「リーファさん、良いのですか?」
「そこのエルフさんを馬鹿にしたお詫びとしてですね。泉の水を汲んであげても良いのですが……。エルフさんがお願いすればだけどね。お節介はしたくないのね……」
「リーファ様、このムーヤソーナ心よりお願い申し上げます。どうか泉の水を汲んでください。お願い申し上げます」
「あらあら、真名を私に教えて良いのかしら」
「リーファ様に服従致します。どうか泉の水を汲んでください。お願いいたします」
真名を相手に教える行為はエルフにとって服従の証になる。ボワンナーレさんの本気を見た気がする。




