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1-9 擬人化

 動物の擬人化という力をいつの間にか得ていたモンスはこの力がどういうものなのかが気になった。



 当初は突然のことに思考停止していたが、気を取り直して彼らに質問していくことにする。


「とりあえず、お前らは何ができる?」


「…………他の皆は分からないけど、私は匂いを嗅いで探し回ったりはできる。でも、戦ったりとかは今はできない」


 その言葉にモンスは納得する。力が減った痕跡がない以上、彼らは以前の状態のまま擬人化したことになる。モンスが彼らに呪力を注ぎ込みでもしていない限りは、彼らが突然強くなるなどということはないだろう。



 とりあえず、モンスは気になったことを質問していく。


「今はってことは、戦う力を手に入れることはできるって事か?」


「うん。修行を重ねればたびたび見てた特人やモンスターたちと同じような力を手に入れることはできると思う」


「なるほど……。つまり、現状は戦闘力はゼロってことか」


「ごめんね。役に立てなくて……」


「いや、構わねえよ」


 モンスは苦笑しながらも、右手を軽く振る。それに犬猫たちはホッとした表情を浮かべる。


「にしても、よく俺がワーナーだって分かったな。結構容姿を変えたつもりだったんだが」


 今の彼の容姿は金髪碧眼のかなり目立つ容姿だ。髪色が変わっている上に髪も大幅に伸び、それを後ろで一つに束ねるという髪型の変更までしている。もはや、元の容姿の原型がまるでない。容姿の変更自体はスーザンにやらせたものだが指定はモンスがしたものだ。


「その程度で私たちがワーナーと他の人間を間違えることはない」


 その言葉にモンスは一瞬面食らう。だが、すぐに心底おかしそうに腹を抱えて笑い出す。


「そりゃ、頼もしいね。それと俺のことはモンスと呼んでくれ。ワーナーの名はもう捨てた」


「分かった」


「……じゃあ、俺はもう行く。行かなきゃいけないところがあるんでな」


「分かった。気を付けてね」


「おう。お前もリーダーとしてきちんとしろよ。ナーナ」


「分かってる」


 犬猫たちのリーダー格――ナーナは小さく笑いながら答える。モンスはそれに右手を振って答える。



 本当は彼らに敵の根城を探させる手助けをさせてもよかったのだが、エクスの拠点があるとされているビノウはここから歩きで最低でも一日以上かかる。そんな長い間彼らを歩かせるわけにはいかない。それに彼らには彼らの縄張りというものがある。



 モンスは軽く伸びをしてビノウへと向かう道を見る。いくら休憩いらずの体とはいえ、一日歩くのはなかなかしんどそうだ。


「さて、それじゃあ、ここから一日頑張るか」


『いや、そんなに頑張らなくても一度空間に入って、ビノウまでワープすればいいじゃない。それくらい、できるわよ』


「そうか。なら、そうさせてもらおうかな」


 モンスは小さく呟いて異空間へと入る。そこで少しばかりのレクチャーを受けた後、モンスはビノウまで大した足労もなく移動した。

 モンスは街並みを見て、少しの間だけ足を止める。ビノウは彼の故郷やその周辺と違って、かなり近代的な街だ。高層ビルやタワーマンションをはじめ、ゲーセン、カラオケなどの娯楽施設。飲食店に風俗などさまざまな店や建物が建ち並んでいる。彼が先ほど壊滅させたなんちゃって繁華街とはわけが違う。



 けれど、それらが彼の足を止めたのはほんのわずかな時間だった。モンスは街に入ってすぐにエクスの拠点の調査を行う。といっても、直接人々に聞くなんて馬鹿な真似はしない。前回同様ネルの力を使って、強制的に拠点の場所を調べ上げるのだ。


『どうだ?』


『見つけた……。多分、ここが連中の根城』


『案内してくれ』


 モンスはネルの誘導に従って走り出す。慣れない舗装路に多少戸惑ったが、すぐに順応し、エクスの拠点へと走っていく。

 拠点には五分ほど走れば着いた。モンスは拠点の数百メートルほど離れた場所で足を止める。


「あれが連中のアジトか……」


 エクスの拠点は一面がガラス張りとなった二十階建ての高層ビルだった。モンスの故郷では珍しいがここでは何ら珍しくない。その周辺にもさまざまな高層ビルが建ち並んでおり、完全に溶け込んでいる。これを普通の調査で見つけ出すのは至難の業だ。


『この力、滅茶苦茶(つえ)ぇな。尋問や拷問はおろか聞き込みすらいらねえって便利すぎる』


『お褒めに(あずか)って光栄』


『おまけに、あのビルの内部の見取り図をはじめとしたさまざまな資料を把握できるとはな……。これである程度あの中を把握することができる。けど、こればっかに頼りきりもよくねえな。せっかくだし、少しは楽しまねえとな』


『楽しむって?』


 モンスの言葉にサエナが尋ねてくる。


『まぁ、それは後だ。今はそれよりもやるべきことがある』


『やるべきこと?』


 モンスはそこで小さく笑って、話を続ける。


『作戦だよ』


『作戦? そんなのいらないんじゃない?』


『まぁ、そうだけどな。けど、一応簡単に立てておこうと思ってな。これから、お前ら全員を顕現させる。そして、お前らは正面から陽動で突っ込んでもらう。その隙に俺は裏口から突入して、奴らが混乱してる隙に幹部どもを始末する』


『何それ? そんなの作戦とは言わないんじゃないの?』


 カミュラは呆れつつも作戦をやることについて文句を言わない。彼女もモンスに忠誠を誓った人間だ。モンスの意向には可能な限り沿うよう努力する。

 モンスはそれを承知の上でカミュラを窘めるべく、口を開く。


『まぁ、段取りを軽くつけておくだけでもだいぶ違う。そして、もう一つ……』


『何よ。まだ、何かあるの?』


『これから、俺は叫ぶ』


『は? 何で、そんなこと……』


『ちょっとした鼓舞だよ。どうせ、奇襲が通じるとは思えねえし、それに意味もねえ。それなら、せっかくだし験担(げんかつ)ぎをしとこうと思ってな』


『まぁ、あんたがそう言うならやるけど……』


 カミュラは少々戸惑った声で了承の意を返す。他の四人も異論はないようだ。それを確認したモンスは大きく息を吐くと、腹から声を出す。


「やるぞ!! てめえらぁぁぁっ!!」


 モンスのかけ声にネルを除く四人の精霊が叫び返した。同時に五人の精霊は顕現し、モンスの命令通り、正面口から奇襲を仕掛けた。

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