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2-10 表面化していく対立

 入学してから半月ほど過ぎ、ある程度学校に慣れはじめた頃。モンスは二週間ぶりに『ヒューマン・イーター』の構成員たちに招集をかけていた。

 構成員たちは柱にもたれかかっていたり、あぐらをかいていたり、床に寝っ転がっていたりと決して態度はよくなかったが全員がモンスの方を向いていた。モンスは全員が揃ったことを確認し、口を開く。


「さて、入学して二週間。だいぶ学校生活にも慣れてきたとは思う。そこでだ。単刀直入に言うが、そろそろ王都にも本格的に仕掛けようと思う」


 モンスの言葉に構成員たちからざわつく声が聞こえてくる。その声の大半は疑問と喜びの声だった。

 当然だ。これまではこの国の重要な場所を狙うことはあっても、王都に直接仕掛けたことはなかった。じれったいと思う者も少なからずいたが、モンスに逆らおうと思う者はいなかったので不満がありつつも王都には手を出していない状態だった。それがついに解禁されるのだ。喜ぶのは当然だし、なぜ急にと疑問に思うのも何ら不自然ではない。


「今まではのんびり行くという指針もあって、あえて中心に直接責めることはしなかったが、俺が特校に入学した以上、もはや遠慮はいらねえ。要は楽しめりゃいいんだ。最初は陰で動く感じになっていくと思うが、状況に応じて徐々に大々的に攻撃するということもやってこうと思ってる。ちなみに俺たち以外にもいろいろとネズミが潜り込んじゃいるが、気にすることはない」


 モンスはそこで一度切って、そして、最後に一言。


「さぁ、行くぞ。人外諸君。人間共に正義の鉄槌を浴びせてやろうではないか!」


 響き渡るような声で叫んだモンスが右手を上げると構成員たちは一斉に声を上げる。モンスはそれを見て、満足げに笑った。






 ○○○○○


 昼休み。サユたちと廊下を歩いていると前を歩いていた男子生徒が逆から歩いてきた男子生徒と肩を接触させる。二人は立ち止まると、互いに相手の左胸を確認し、睨み合う。


「おい、てめえ! ぶつかっといて、何、シカトこいてんだよ!」


「あぁ!? てめえの方からぶつかってきたんだろうが!!」


 いきなり、取っ組み合いの喧嘩になる。関わり合いたくなかったモンスたちは彼らの横を器用に通り抜け、目的地である屋上に向かう。屋上に着くと適当なところに座り、各自持参した弁当を広げる。


「すごいねー。ただ肩をぶつけただけなのに、いきなり喧嘩になっちゃうんだ」


 サユは弁当箱の蓋を取りながら言う。モンスはトマトとレタスを挟んだサンドイッチを頬張りながら、それに答える。


「まぁ、左胸の紋章を見れば相手がどっちの出身か分かっちまうからな。違う奴が相手だと、どうしても喧嘩腰になっちまう奴は多い」


「有紀の前で言うことじゃないけど西(こっち)側にも東側なんて壊滅させた方がいいって思ってる人、結構多いからねぇ」


「こちらも似たようなものですよ」


 サエナの言葉に有紀はうんざりした表情で同調する。この国ではさまざまな対立がある。千年前の一件で無理矢理一つの国にまとめた弊害が様々なところに出ている。というより、これは人の(さが)だ。人は自分と少しでも違う相手を攻撃したがる。実際、王都田舎、東側西側の対立など代表的な対立にすぎず、実際のところ数えきれないほどの勢力が対立し、分裂している。



 モンスの予想通り、二週間も経つと学校生活に慣れはじめたのかさまざまな対立が目立つようになってきた。ただこれは分かりきっていたことであり、モンスにとっては至極どうでもいいことでもあった。


「まぁ、東と西とか宗教とかそういうのは仕方がないとしても王都と田舎の扱いの違いは本当にどうにかしてほしいよね。どこで生まれ育っても優秀な奴はいるっていうのにさ」


 内心の不満を吐露するかのように喋るサユにサエナはパック牛乳を右手に持ちながら苦笑する。


「レノくんもカザイルくんに初日にひどい目に遭わされたしね」


「本当。ボロボロにされて負けたからって逆上して襲いかかるなんて、どんだけ子供(ガキ)なのよ」


 これも5組ではさりげに語り草となってる話だ。模擬戦では一悶着あったが、結局ヤタルがしでかしたことはお咎めなしになった。アーテングは少しだけ不満げな表情になったが、自分の身分ではヤタルに立ち向かってもどうにもできないと思ったのか、表向きは動くことはなかった。


「ま、俺らは俺らで雑草根性でも見せつけてやるべきなんじゃねえの? お綺麗な名門貴族連中にさ」


 モンスはそう言ってペットボトルの蓋を開けて、スポーツドリンクを飲む。


「それもそうね。アタシたちも他の連中にそう簡単に負けるほど弱いとは思えない。もっと力をつけて、上の連中をあっと言わせてやらないとね!」


 左手を強く握りしめているサユの言葉を聞き流しつつも、モンスは思考に耽る。モンスの頭にあったのは表面化した対立のことだった。対立の種が多すぎて、こんがらがりそうになるが、王都の名門連中が優遇されることだけは昔から変わらない事実だった。


(ただ今年はいつもとは少し違う。ヒューマン・イーターの連中には王都への攻撃を条件付きで許可した。そして、連中もそろそろ動きはじめるはずだ)


 モンスはそう遠くないうちに起きるであろう祭りにこっそりと思いを馳せた。

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