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2-8 風間の強さ

 号令がかかると同時に風間が仕掛けてくる。凄まじい速さで両手に武器を出現させたかと思えば、一瞬にも満たない時間でモンスに接近し、振り上げた右手を一気に振り下ろす。


「うおっと!」


 モンスは直前まで気付かず、ギリギリでかわしたかのような演技をする。その際に尻もちをついたので風間が今度は左手に持った得物で追撃してくる。モンスはそれを蹴り上げて、その場から離れる。ある程度の間合いを取ったモンスは風間が右手に日本刀、左手に短槍という変則的な二刀流になっていることを確認しつつ、冷や汗を浮かべて驚いているフリをする。


「おいおい、いきなりかよ」


「当然。モンスターはこっちの準備ができるのを待っててはくれないからね」


「……確かにな」


 モンスは会話しながら、右手に刀を発現する。どこにでもあるありふれた日本刀。実際、一部を除いてこの場にいる大半が平凡な刀だと認識したはずだ。

 だが、風間の表情に油断はない。これまでの十二戦からモンスもかなりの実力者であると考えているのかも知れない。


「それが君の武器か」


「まあな。お前のその二振りほどご大層なものじゃねえが、俺の大事な相棒だ」


 半分本当で半分嘘だ。この刀は精霊空間から持ってきたものであり、かなりの業物(わざもの)だ。とはいえ、普段は術で隠蔽しているのでぱっと見名刀には見えない。


「今度はこっちから行くぜ」


「来い!」


 モンスは胸の前で刀を水平に構えるとそのまま突きを放つ。構えからしてバレバレなので風間にはあっさりとかわされるが本命は次だ。モンスはかわされると同時に攻撃を止めて風間の足を払い、倒れた風間に刀を振り下ろす。風間はそれを仰向けになりながらも短槍で受け止め、体をひねるように起き上がると刀を短槍で受け止めた状態で右の刀をモンスの首に突き出してくる。モンスはそれをかわすと刀を戻し、再度斬撃を放つと見せかけて蹴りを風間の腹に放つ。風間は間一髪で左腕で受け止め、距離を取る。


「思った通り、今年はレベルが高い。俺がこのクラスに配属されるわけだ」


「ぬかせ。お前、まだまだアップの段階だろ? へたくそな世辞はやめろよ」


 憎まれ口を叩きつつもモンスは内心ため息をつく。本当はここまで力を見せるつもりはなかったのだが、このクラスは思っていた以上にレベルが高い。下手に弱いフリをしていると、かえって目立つと判断し、それなりの強さを見せることにした。そういう意味では模擬戦で後半に選抜されたのは都合がよかったといえる。もっとも、元々そこまであからさまな弱者を演じるつもりはなかったけれど。それはよほど特殊な事情がない限り悪手でしかない。



 とはいえ、ここまでだ。これ以上は意味がない。後は風間の力の片鱗だけ見たら、それで充分。どうやら、先ほどのモンスの挑発に感化されたのか、都合よく風間も力を見せるようだ。


「そうだな。なら、こちらも少し真面目に戦ってみるとしよう」


 須臾(しゅゆ)、風間から呪力が放出される。風間の全身を緑色の稲妻のようなものが纏われる。そして、先刻までとは比べものにならないほどの速さでモンスに接近し、短槍を振るってくる。

 モンスにはその動きがスローモーションのように見えていたが、あえてギリギリで初撃を受け止める。だが、そのまま押し切られ、倒されてしまう。風間は馬乗りになって、短槍に押し込められて身動きが取れないモンスの首筋に刀を添える。


「そこまで! 勝者、風間東吾!」


 その言葉で体育館が湧く。先ほどまでの静けさが嘘のようにやかましくなり、モンスは思わず顔をしかめる。風間は苦笑しながらもモンスの上から退く。


「強かったよ、スピリアくん」


 そう言って風間はモンスに右手を差し出す。モンスはそれに盛大なため息をつく。


「はぁ……。だから、そういう下手な世辞はやめろって」


 うんざりしたような表情をしつつも風間の手を取る。そして、立ち上がると風間は穏やかな笑みを浮かべながらも言う。


「お世辞なんかじゃないさ。君は本当に強かった」


「ふん。お前がちょっと本領晒しただけで手も足も出なかったのにか? お前は本心で褒めてるつもりかもしれねえが、それは時に人を傷つけるぜ」


 吐き捨てるように言うと、モンスは二階席へと戻っていく。風間は右手で頭を掻きながら苦笑する。モンスが無視をして客席に戻ると、クラスメイトたちからの視線を一身に浴びる。


「すごいじゃん! あの風間くんにあそこまでやるなんて!」


 そう言ってサユはモンスの肩を叩いてくる。モンスは小さく息を吐いて、疲れきった表情を作って答える。


「いや。あれは向こうが俺に合わせて加減してくれてたからで、俺はそんな大したもんじゃないよ」


「そんなことないと思います。少なくとも、私はあの風間くんの二刀流にあそこまで戦えません」


 まぁ、確かに刀と短槍しか使っていない状態でも風間は充分に強かった。彼は間違いなくこのクラスよりも上のクラスに入れるだけの力を持った実力者だ。実際、コユトマもモンスを見て少し驚いた表情を浮かべていた。となれば、風間はこのクラスの底上げのために入れられたと考えるべきだろう。その男と戦えたのはある意味幸運だったかもしれない。



 興奮冷めやらぬまま行われた次の一戦もモンスと風間の戦いほどではないが、それなりに名勝負ではあった。そして……。


「それでは、次が最終戦です。ヤタル・カザイル、アーテング・レノ。両者、前へ!」


 最終戦の組み合わせは図らずも入学式当日にかつあげの加害者と被害者の組み合わせとなる。モンスは階段を下りていく二人を見て、口元を歪めた。

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