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1-14 『アウト・オーダー』

 とまあ、こういう経緯でモンスは動いていた。そして、モンスはキング・アウトバンドと名乗り、保護した子供たちを組織に入れることで彼らに自然に人外を受け入れさせるように動いてきた。



 こうして書くと、客観的に見れば連中と同じに見えるかもしれないが実際は違う。子供たちを無理矢理縛り上げた組織は『アウト・オーダー』というのだが、秩序を無視すると堂々と組織名で宣言しているだけあって、彼らは相当強引な手段を使っている。一方でモンスは異能を使っているとはいえ、子供たちを懐柔して引き入れているのだ。彼らと同じにしてほしくはない。

 モンスの異能が半外にも通じるのは予想外だった。どうやら、彼の異能は人外の血が少しでも混じっていれば作用してくれるようだ。その点はありがたかった。



 さて、一通りここまでの経緯を説明したところで、次は現状を説明しよう。



 除霊師と名乗る特人が『アウト・オーダー』にいる。この男がそもそもの始まりだ。彼はとある目的のために今から結界を用いて半外たちをこの土地に縛りつけたのだ。その結果、子供たちはこの街から外に出ることができなくなってしまった。出ようとすれば、強烈な不快感に襲われ、出たくても出れない。無理矢理出そうとして、その子供が死亡した事例もあり、解決策はロクに見つけられていない状態だ。

 この三年間で仲間集めと並行して、あちこち結界の破壊あるいは子供たちの解放ができるモンスターを探してみたのだが、どうやら、半外に相当特殊な人物がいるらしくこの洋館にいる子供たちを見て皆が匙を投げてしまったのだ。

 分かっていたことだが、モンスターは基本的にこういうものには向いていない。かといって、特人に頼む気にもなれない。彼らの関係は複雑だ。どこに今回の一件に関与している者がいるか分かったものではない。ネルの力で片っ端から調べようにも、さすがに国全ての特人を把握できるほどネルの許容量は広くない。というより、そんなことをしている暇があるなら現状を打破できるモンスターを探した方がマシだ。



 実は彼女たち五人以外にも精霊は実在し、その中に結界に強い精霊がいるらしいのだが、まだ見つけられていない。ネルの力で調べられればありがたかったのだが、彼女の力は人の記憶からある程度の情報を引き出すことしかできないらしい。普段ならそれで充分なのだが、精霊の居場所を知る人間などどこにもいはしない。よって、ネルの力で精霊の居場所を調べることもできない。



 同じ精霊の居場所を調べられる精霊もいるらしいが、未だに見つかっていない。なかなかに難儀している。


「ギリギリまで足掻いてみたが、ここまでか。もはや、時を待つより他にないな」


 今日は八月十一日。もうあと数日でその時が来てしまう。さすがにこの期に及んで他のことに気を回している余裕はない。


「二日後。その時にそいつを殺さなければ、あの子たちは死ぬ……か」


 モンスは誰にも聞こえないような小さな声で呟く。ここは外だ。誰に聞かれているのか分からない。本当ならば口にすることすら遠慮するべきなのだ。



 しかし、口にしたくなるのもまた道理。何せ、この結界は今は無害で誰にも影響を及ぼさないが明後日、八月十三日にこの結界は三年半という長きに渡る時を経てその獰猛な力を解放させる。そして、その力が解放されればこの結界に選ばれた子供たちは全員死ぬ。そして、それは子供たちがこの街の中のどこにいても関係なく発動する。モンスが子供たちを保護しても向こうが何もしてこないのはそれが理由だ。

 まぁ、当初はいろいろと絡んできたのだが適当に殺していくうちに何もしてこなくなったというのが正確なのだが。どうせ、どちらでも関係ないのなら無駄に手足を失う必要がないというのが向こうの判断なのだろう。



 いずれにしても、今回のキモは結界だ。この街には相当な実力者でなければ視認できないほどの強力な結界が張られている。この結界を張っている特人が『アウト・オーダー』の幹部、『サイナウス・アベステ』だ。アベステは二十代前半とかなり若い男で特人の中では新米だが、名門の血を継いでいることで相当な力をその身に宿しているという話だ。彼が張っている結界こそが最大の難関なのだ。



 先にも述べたとおり、この結界は半外の子供たちの力を強制的に使って維持されており、その強度はかなり高い。おまけにやたらと複雑で繊細であり、半外の子供たちとリンクしていることもあって、下手に破壊すると子供たちの命に関わってしまう。

 結局打つ手がないまま今に至っているのはひとえにモンスの力不足だ。


「世の中ままならねえなぁ……」


 できるだけ早く解放してやりたかったがそれは無理のようだ。仮に、今、解除できたとしても結局時を待つのと大差がない。



 まぁ、しょうがない。人間諦めも大事だ。それにこの三年間でいろいろとやることができた。全く無駄だったわけではない。割り切ってしまえば楽なものだ。


「あ。キングさんが来てる!」


「ほんとだ!」


 そこで彼に気付いたらしい子供たちが一斉に近付いてくる。モンスは普段仲間捜しや仕込みなどで洋館にいる時間はあまり多くない。そのためか、彼が戻ってきたのを見つけると子供たちは一斉に群がってくるのだ。後ろからスーザンとサエナが慌てて追いかけてきているが、モンスは彼女たちに手を振りつつ、飛び込んでくる子供たちを抱きとめる。

 中にはモンスよりも年上の子たちもいるのだが、モンスを自分たちを保護してくれた大人(・・)として慕ってくれるところを見て、なぜか笑えてしまう。笑うのは性格が悪い証拠だというのは重々承知しているが、そもそもモンスは人として終わっている。あまり、関係のない話だ。


「みんな、いい子にしてたか?」


「もちろん! 今回は早かったんだね。まだ二日しか経ってないよ」


「まあな。たまには早く帰ってきた方がいいだろ?」


「うん!」


 モンスの言葉に元気よく答える子供たち。モンスは笑いながら彼らの頭を撫でてやる。



 こうして見ると何となく自分の救いようのなさが浮き彫りになっていく気がする。こんなに無邪気に笑う子供たちを騙すことに罪悪感を全く感じないかといえば嘘ではない。とはいえ、それを考えることに何の意味もない。



 モンスはその内心を隠しながら、ひたすら彼らを構い続けていた。そして、そうこうしている内にあっという間に日が暮れ、翌日となった。



 時が流れるのは本当に早い。もう前日の夜。とうとうこの時が来てしまったのだ。モンスが小さくため息をついているとリナが話しかけてくる。


「あの……キングさん? ん……」


 言い終えると同時にリナは突然糸が切れた人形のように倒れ込む。モンスはそんな彼女の体を優しく抱きとめる。他も見てみると、精霊や擬人化したモンスター及び動物たちに抱えられ、眠っている子供たちがいる。


「すまないな。ソーナ」


「いいわよ。これが私の役目なんだから」


 モンスは新たな精霊、ソーナの力を使い、子供たち全員を強制的に眠らせたのだ。放っておいても寝ていた可能性はあるが、彼らはモンスの様子がおかしいことに気付いていた。あのままではモンスのことが気になって眠れなかっただろう。

 それに仮に眠っていたとしても明日の朝には起きてしまう。それではダメなのだ。何しろ、事が起きるのは明日の正午。それまでは眠っていてもらわなくては困る。


「お前たちは寝ていろ。後は俺たちが全て終わらせてやる」


 モンスはそう呟いて近くにいる擬人化したモンスターにリナを預け、洋館を出た。

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