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1-12 半外

 エクスの拠点潰しから三年。モンスは十歳になっていた。



 今、彼はビノウから三百キロほど離れたところに位置する港町にいた。ここまで来れば、この国の都心部、いわゆる王都は近い。ここは王都からほど近いこともあって、なかなか栄えている。

 しかし、栄えているということはそれだけ闇が深いということだ。彼の故郷のように何もないところならば、ただ暗い闇があるだけだが、こちらは発展した文明と経済という眩い光がある。光が眩しければ眩しいほど、それに比例して闇も暗くなる。



 モンスが、今、いるのはそういうところだ。彼が現在歩いているのは街のメインストリートと呼ばれている通り。人が十人は並べそうな程度に広い道幅を持ち、左右にはずらっとさまざまな店が並ぶ。現代的な店の他にも近未来的な店もあり、発表されたばかりの最新の商品のプロトタイプなどが売られている。

 背中につけると空力や揚力を利用して、空を飛ぶことができるバックパック型の機械などがかなり注目されているらしいが、モンスには興味がなかった。



 彼はただぶらついているだけだ。モンスの生まれ故郷は何もない田舎町。普通ならばこういう場所を見れば、彼くらいの歳なら大はしゃぎをするものなのだろうが、残念ながら彼は普通ではない。こんな場所に何の感慨もない。ぶらつく必要があるからぶらついているだけで、そうでないならわざわざ来ようとは思わない。



 誘蛾灯(ゆうがとう)の仕事に飽きたモンスはそのまま街から離れていく。彼の向かう先は街から少し離れたところに位置する洋館のようなところだった。門を開いて中に入ると子供たちが騒ぐ声が聞こえてくる。モンスはそれに穏やかな笑みを浮かべると、門の扉を閉めて建物の中ではなく、庭の方へと歩いていく。洋館の庭は広く、今日の天気が快晴ということもあってモンスは木でできた椅子にもたれかかって、日光浴を楽しむことにする。そんな彼に赤い髪を持つ一人の少女が駆け寄ってくる。


「キングさん」


「リナか。どうした?」


「うん。ちょっと、お話ししたいと思って」


「ああ、いいぞ。さぁ、何を話そうか?」


 ここではモンスはキングと呼ばれている。今、モンスは訳あってキング・アウトバンドの名を名乗っている。容姿も変えており、銀髪に右眼に赤い瞳、左眼に青い瞳というオッドアイを持った美少年といった風体だ。服も青いシャツに真紅のジャケット、ズボンもワインレッドとなかなか派手な格好をしている。



 なかなか目立つ風貌ではあるが、この方がワーナーやモンスとの関連を疑われないということでモンスはあえてこんな格好をしていた。今、彼がやっていることを思えばワーナーはもちろん、モンスも今回の件に関わっていると思われたくなかったからだ。それに伴い、身長や体重も大幅に変更しており、今の彼は二十歳前後に見えるくらいの見た目となっていた。これはスーザンの提案だ。見た目の年齢を変えるのも必要だと判断し、彼女の提案を受け入れた。



 他にもいろいろとやったことはあるのだが、それはまた後ほど。


「ねぇ、キングさん。聞いてる?」


「聞いている。お前もいろいろと友達付き合いで苦労しているんだろう?」


「そうなんだよ。私、もうどうすればいいのか分からなくって……」


 困り切った表情になっているこの少女はリナというのだが、八歳という年齢のわりにしっかりしている。それゆえにいろいろと苦労があるようだ。

 彼女よりも二つしか違わないモンスではあるがリナのために一肌脱ぐべく、いろいろと相談に乗っていた。



 ある程度話したら、スッキリしたのかリナはひまわりのような笑顔で礼を言って去っていく。モンスはそれに右手を振って答え、そして、背もたれに体重を預ける。



 この洋館は今は孤児院のようなものとなっており、モンスはその代表として活動している。そして、この孤児院にいるのはリナをはじめとして、かなり特殊な子供たちしかいない。



 彼らについて話す前に一つだけ話しておこう。単刀直入に言ってしまえば、モンスターには生殖器官がある。それにより、モンスター同士で新たなモンスターを生み出すことを可能としている。これ自体はモンスは問題だとは思っていない。問題なのはモンスターと人間の間でも新たな生命が誕生してしまうということだ。そうして、生まれた子供を世間では半外(はんがい)と呼んでおり、差別及び排斥の対象となる。



 どうして、この話を、今、したかと言えば彼らが次なる報復相手である依頼人と深く関わっているからだ。偶然とはいえ、モンスは半外たちの窮地を知ってしまった。境遇は違えど、ずっと人から忌避されてきたモンスにとっては放っておけない事態だった。



 だからこそ、こうやって外見年齢をいじり、わざわざ孤児院を別名義で作ってまで子供たちを保護したのだ。そして、そのきっかけとなる三年前のことをモンスは思い出していた。

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