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【三章後日談連載中】「嫌なら嫌と言いなさい」~公爵令嬢に転生した三十路素人童貞、紳士の心得で百合ハーレム築いたら優越的地位の濫用で訴えられる~  作者: 無屁吉
【第三章】TS純愛追放令嬢VS百合ハーレム辺境伯令嬢(えちちはどこへ?)

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第三章最終話「嫌なら、ちゃんと言うわ」

 ■


「ここでいいの?」


 ――深夜。


 ヴィオラに連れられて礼拝堂へ踏み入ったエルザが、手燭の灯火にぼんやりと照らされながら、小声で尋ねる。


「はい。神様にも聞いていただきたくて」

「そう。あたしも、その方がいいわ」


 冷えた夜の空気に、燻されたような乳香の残り香が混じる。

 ヴィオラは何も言葉を発せなかった。話したいことはある。けれども上手くまとまらない。

 それはエルザも同じように見えた。

 互いに沈黙を抱えたまま、手元の蝋燭がゆっくりと小さくなっていく。

 やがて、ヴィオラはその場に跪くと、両手を組み合わせ、瞑目した。


「私の罪を、告白します。どうか聞いていただけますか、シスター・エルザ」


 そう、声になるままに言葉を紡いだ。

 エルザは一度だけ目を瞑り、穏やかな微笑みを浮かべ、


「はい。貴女の懺悔を神とともに聞き届けましょう。お話なさい、ヴィオラ・エーデルシュタイン」


 一人の修道女として、ヴィオラと向き合った。


「私は、かつて数多くの令嬢たちに関係を迫りました――」


 その言葉から始まる、長い罪をヴィオラはエルザに告げた。

 

 自分が公爵令嬢であること、数多の令嬢たちに愛を囁いたこと、合意だと思っていたそれが、公爵家の権威に恐怖し、ただヴィオラの誘いを拒めなかっただけであったこと。


「公爵令嬢の私の誘いを、もし断ったとしたらどうなってしまうのか? そう考えるのは、当然のことです。

 私に何をするつもりがなかったとしても、()()()()()()()()()()()()()()()


 側付きだったリネットの「()()()()()()()()()()()()()()()()()()は、それを許しはしない」という言葉が聞こえ、次いで、婚約発表の場でヴィオラを告発したシーナの青白い顔が浮かんで、消えた。


「修道院行きを命じられたとき、私は罪を贖う機会を与えられたと思いました。ですが、こうも考えたのです。

『今度は上手くやろう』、と」


 修道院ならば自分の身分は関係なく、一人の修道女として生きていかねばならない。

 貴族令嬢には本来罰となるべき処遇であるが、ヴィオラにとっては身分に関わらず愛を探せる場所という面もあった。


「そして私は新しい愛を見つけました。

 ――同じ過ちを繰り返していることにも気が付かず」

 

 そして、ヴィオラは目を開く。エルザは、ただ、黙して聞いていた。


「申し訳ありませんでした、エルザ先輩。貴女は私の求めを拒めなかったというのに」


 優越的地位の濫用――かつて、ハラスメント研修で聞いた言葉が浮かび、ヴィオラの鼻の奥に、刺すような痛みを走らせた。

 だが、こらえた。

 そのまま、エルザの声を待つ。


「――あたしのときは、あんたは知らなかったじゃない」


 エルザは、仕方ないというように笑っていた。


「知らなかったことまで、神様はお責めにならないわ。ああ、ここに来る前のは別よ。それは、紛れもなくあんたの罪。立場が立場なんだから、知らないじゃ済まされない」


 だから、と、


「あたしにしたことまで、負い目に思うことはないのよ。

 それは、ヴィオラ――あんたを知ろうとしなかった、あたしのせいだもの」


 ごめんなさい、ヴィオラ。


 そう、エルザが言った。


「あたしの罪は、ヴィオラという個人を見なかったこと。あんたをきちんと見ていれば不要だとわかる指導――ううん、暴力を貴女に振るったこと。

 そして、公爵家からの圧力を受けて、自分の気持ちを偽り、ヴィオラの告白を受け入れたこと。それを……今日まで言えなかったこと」


 エルザが、ヴィオラの手を取り、指先をなぞる。


「あんたの手、来たばかりのときはこんなに荒れてなかった」

「それは、毎日お勤めをしていれば、誰だって……」

「そう、真面目にやってる人の手は、こうなるのよ。それを、あたしは見ていなかったの」


 ヴィオラの手がエルザに包まれる。二人の温もりが肌を通して混ざり合う。


「でも、今は見ていてくださるのでしょう?」

「ええ、これだけ一緒に過ごしていたら、嫌でも目に入るわ」


 くすくすと、どちらともなく吹き出し、笑う。

 ヴィオラはエルザの指先に、自分のそれを絡め、握った。


「ねえ、エルザ先輩」

「なに?」

「やり直し、させてくださいまし」


 ヴィオラはエルザを抱き寄せ、まつ毛が触れ合いそうな距離まで顔を近づける。

 石鹸の香りがした。ヴィオラの好きな、エルザの匂い。

 エルザの潤んだ瞳に映ったヴィオラの顔は、赤みを帯びていた。エルザの頬もまた、朱に染まっている。


「エルザ先輩、愛しています」

「……その言葉、嫌じゃない。でも、あたしのこの気持ちが愛かどうかは、まだわからない」

「いいのです、今はそれで。これから、愛に育てていきましょう」


 ヴィオラは唇を近づけ、吐息交じりに尋ねる。


「嫌なら嫌と言ってくださいね」


 その問いにエルザは自ら腕を回し、唇を重ねた。

 触れ合う程度の、優しい口付け。

 離れたエルザは、悪戯っぽく笑うと、


「嫌なら、ちゃんと言うわ」


 そう告げて、再びヴィオラの唇を奪う。今度は、長く離れなかった。

 やがて二人の影は、夜の礼拝堂で重なって――。


 了



最後までお読みいただきありがとうございます。

第三章はこれまでと雰囲気がガラリと変わってしまいましたが、いかがだったでしょうか。

ひとことコメントみたいなのでもいいので、感想いただけると嬉しいです。


それでは、外伝や後日談、新章でお会いできれば嬉しいです。



面白いと思っていただけたら、ブックマークや★ポチをください。寂しいので励みになります(´・ω・`)


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― 新着の感想 ―
読了。面白かった! シスター・アリサがいいキャラをしていて良かったです。
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