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【三章後日談連載中】「嫌なら嫌と言いなさい」~公爵令嬢に転生した三十路素人童貞、紳士の心得で百合ハーレム築いたら優越的地位の濫用で訴えられる~  作者: 無屁吉
【第三章】TS純愛追放令嬢VS百合ハーレム辺境伯令嬢(えちちはどこへ?)

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第11話「これはあの娘自身の因果です」

 ■


「まずは、お礼を。貴女のおかげでシャーロットは命を拾うことができました。

 ありがとうございます、ヴィオラ・エーデルシュタイン公爵令嬢」


 明くる日の院長室――カミユは机の前に出て、ヴィオラに深々と頭を垂れた。

 ヴィオラはそれを制し、カミユへ頭を下げ返す。


「おやめくださいまし、オーウェン院長。そもそも、私の指導が足りなかったばかりに、シャーロットさん……オーウェン辺境伯令嬢をこのような目にあわせてしまいました。お詫び申し上げます」

「……いいえ、これはあの娘自身の因果です。正直なところ、このような結末を迎える可能性はあると考えていました」


 嘆息し、カミユは眉間を押さえる。

 甘ったるい香が、普段よりも強く焚かれている気がした。


「ここだけの話にしておいてください。実はあの娘の父――私の兄も、この修道院で刺されたことがあります」

「え? あの、それは私が聞いても良いお話なのですか?」


 シャーロットの父ということは、つまり――。


「ええ、よくないでしょう。ですが、私だって愚痴の一つや二つ言いたくなるときもあります。

 端的に言うと、兄はここで修行する私の様子を見に来ることを口実に、修道女たちに次々手を出したのです。

 その結果、女同士の壮絶な修羅場を生み、間に入った兄は刺されました。それはもう、ざっくりと」


 カミユは再びため息をつく。


「あの時も薬草婆と私で手当てをしました。それ以来、兄は自分の素行を見直しておとなしくなったので、まあ、怪我の功名でしょう」

「それは、なんとも……」


 としか、ヴィオラも言葉が出てこなかった。

 カミユは疲れ切った笑みを浮かべる。


「シャーロットもこれで自分を省みることができればいいのですが……」

「あの、恐れ多いのですが、お尋ねします。もしかして、オーウェン院長は……辺境伯は、()()()()()()()()()()()


 尋ねたヴィオラに、「さて」とカミユは首を傾げる。


「シスター・ヴィオラがシャーロットの性根を叩き直してくれれば最良。そうでなくても何かしら痛い目を見れば思うところもできるのではないか、そう考えていたことは確かです。

 ……まあ、兄と同じように刺されるとまでは考えていませんでしたが。あの親子はどこまでも私の手を煩わせる」


 そう、カミユは苦々しく笑う。そして、表情を引き締めると、ヴィオラへ向き直る。


「……さて、シスター・ナンシーの処遇についてですが」

「そのことですが。シスター・ナンシーがここまで思い詰めてしまったのは、私がシャーロットさんの指導を仕切れていなかったことが原因です。どうか、責は私に」


 ヴィオラは膝を床につき、カミユに伏せた。


「おやめなさい! 何をするのです!」


 カミユの焦った声が頭上から降る。しかし、ヴィオラは頭を上げなかった。


「いいえ、やめません。私が勢いに任せ、あの場でシャーロットさんと問答をしたことも一因です。心身ともに追い詰められていたシスター・ナンシーの前ですることではありませんでした。

 今にも溢れそうな杯に、最後の一滴を注いだのは私なのです」


 ヴィオラの肩に、カミユの手が置かれる。

 甘い、カミユの匂いがした。


「顔を上げて、シスター・ヴィオラ。貴女に指導を任せたのは院長たる私で、辺境伯家です。貴女に原因があるとするならば、その責任は私たちが負わなければならないものです」


 その言葉で、ヴィオラはようやくカミユの目を見る。「お立ちなさい」と促され、ヴィオラはゆっくりと立ち上がった。


「とはいえ、今回の沙汰はあまりに人目につきすぎました。シスター・ナンシーに何もお咎めなし、とは参りません」

「……はい」

「なので、前例に倣うこととしました。シスター・ナンシーは、この修道院から放逐、還俗という方向で本家と話を進めようと考えています。ある程度落ち着いてから、ではありますが」


 ヴィオラは目を丸くし、思わず問い返した。


「……還俗。それだけ、ですか? 死罪ではなく?」


 カミユは一つ笑って「ええ」と頷く。


「兄の時もそうでした。死罪という話が出たとき、激昂した母が寝込んだままの兄を折檻しながら『馬鹿息子に弄ばれた女子おなごを殺すのですか!』と、それはものすごい剣幕で。

 当時まだ健在だった父も強くは言えず、そのような処分となりました」


 懐かしむような顔をして、楽しそうに、しかしどこか暗い影を落として笑う。かと思えば、眉をつり上げ、


「それを通しておきながら、今回のシャーロットの件は違うなどと私が言わせません。

 そもそもが、娘の躾を失敗した兄が悪い。子がしたことの責任くらいは負えばいいのです。

 ああ、もう。あの親子は昔から私に後始末を押し付ける!」


 苦々しく顔をゆがめる。ヴィオラはその圧に、自分の頬が引きつるのを感じた。


「とはいえ」


 とカミユが一拍置く。


「命を取らないからといって、還俗は優しい処分ではありません。

 貴女もそうですが、修道女には少なからず実家に居ることが出来ない者がいます。

 そのような事情を抱え、家に帰ることもできず、誰に頼ることもできず生きていくのは、貴女の想像以上に辛い罰でしょう」

「それでも、生きているのです。生きていれば、きっと、何かできるはずですわ。

 オーウェン院長、及び、辺境伯家のご寛大な措置に、感謝申し上げます」


 ヴィオラは深く頭を下げ、礼を述べた。

 カミユは何度目になるかわからない嘆息をしながら、苦笑いをする。


「それにしても、地面に伏せてまで頼み込むのはズルいと思います。

 公爵令嬢にそれをされるというのは、もはや暴力にも等しい。

 そうまでして自分の意を通そうとしたのですか?」


 言って、ヴィオラの行いに釘を刺してくるが、ヴィオラは笑って、


「あら、シャーロットさんの指導に、公爵家の名前を使っていいとおっしゃったのは、オーウェン院長でしたわよ。

 後輩の尻拭いは指導役の勤めですわ」


 修道服の裾をつまみ上げ、優雅にカーテシーを決めてみせるのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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