表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【三章後日談連載中】「嫌なら嫌と言いなさい」~公爵令嬢に転生した三十路素人童貞、紳士の心得で百合ハーレム築いたら優越的地位の濫用で訴えられる~  作者: 無屁吉
【第三章】TS純愛追放令嬢VS百合ハーレム辺境伯令嬢(えちちはどこへ?)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/37

第1話「貴女に教育係を命じます」

「貴女だって、同じことをして修道院ここに送られたのではなくて?」


 裁縫部屋で、周囲の修道女たちの視線を集める中。

 銀細工のような長い髪をかき上げ、修道服を着崩した女――シャーロット・オーウェン辺境伯令嬢は、傍らに控える褐色の肌の少女を撫でながら、金糸の髪を持つ修道女――ヴィオラ・エーデルシュタイン公爵令嬢へそう問いを投げかけた。

 ヴィオラはわずかに目を伏せ、顔を上げた。ちらりと不安げなエルザの顔を見る。


 ――申し訳ありません。エルザ先輩。私は貴女に話していないことがありました。


 今は言葉にはせず、心の中だけで詫びる。そして、シャーロットをしっかりと見据えた。


「……そのとおりですわ。私はヴィオラ・エーデルシュタイン。

 公爵家に連なる者にして、かつて数多の令嬢をその権力をもってして毒牙にかけ、『令嬢殺し(レディキラー)』などと呼ばれている者。

 ですが、私はその過ちを贖い、繰り返さないためにここへ来たのです」


 発した言葉は凛とし、ただ事実を認めた。

 ヴィオラの名乗りに、周囲はにわかにざわつき出す。

 だが、シャーロットだけはそれを鼻で笑う。


「過ちを繰り返さない? だとしたら、貴女の後ろにいるその女は何だと言うの? この修道院で、その手にかけたのではなくて?」

「エルザ先輩は、私が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、思いに応えてくださいました。貴女にそれを伝えるため、先輩にはこの場に赴いて頂いたのです」

「ふうん、知らないまま、か。

 ……ねえ、シスター・エルザ。貴女は本当に、ヴィオラお姉様が公爵家に連なるお方だと、ご存知なかったの?」


 シャーロットがヴィオラの肩越しに、エルザへと視線を送る。ヴィオラもそれにつられ、背後を振り向いた。

 そして、


「――え?」


 気まずげにうつむくエルザの姿が、ヴィオラに言葉を失わせる。

 エルザの手が、小刻みに震えながらスカートの裾を握りしめているのが、やけにはっきり見えた。


 ■

 ■


 TS純愛追放令嬢VS百合ハーレム辺境伯令嬢(えちちはどこへ?)


 ■

 ■


 オーウェン辺境伯領にある女子修道院。

 その院長室へと呼出されたヴィオラに、年嵩の修道女――カミユ・オーウェン修道院長は、どこか苦々しい顔つきでこう告げた。


「シスター・ヴィオラ。貴女に教育係を命じます」


 しばらくの間、ヴィオラの耳元で、カミユの言葉が宙に浮いていた。


「え?」


 と、我に返りきらぬまま、淑女らしからぬ返事をする。

 院長室に立ち込めた甘ったるい香も気付けにはならず、しばし小さく口を開けていた。


「貴女に教育係を命ずると言いました」


 カミユは眉間を指で押さえながらも、厳格な声でヴィオラへ言う。


「お、お待ちくださいませ。私はまだ修道院へ来て一年と経っておりません。まだまだ学ぶことが数多くあります。そのような身で、教育係などと恐れ多く……」

「周りの修道女からは、貴女に教えることはもう無いと聞いています。類を見ないほど、勤勉で優秀であるとも」


 ヴィオラは、自身の教育係でありエルザの名が出なかったことに、若干の違和感を覚える。しかし、


「最近ではエルザから教わることもないのでしょう?」


 先んじて言われた言葉に、ヴィオラは何も返せなかった。


「……はい。専門性のあるお勤めも増えてきましたので」

「薬草婆も褒めていたわ。筋が良いと。貴女がここに骨を埋めるのであれば、全ての技術を教え込みたいとまで。珍しいのですよ、あの偏屈がここまで手放しで称賛するなど」


 カミユは机上のティーカップを持ち上げ、湯気も消えた紅茶を口に含む。


「シスター・ヴィオラ。教わったことを誰かに教えるということも、学びを深める経験なのです」

「それは……確かにそのとおりですわ」


 ヴィオラは居住まいを正し、カミユの話を受けようと声を発しかけ、留まる。

 そして恐る恐る、口を開いた。


「ところで――このお話を受けたら、部屋割りは変わりますの?」

「もちろん、変わります。公私ともに後輩を導くのが指導役の務めです」


 カミユの淡々とした台詞に、ヴィオラは自分の眉が、情けなく下がっていくのを自覚した。

 自身の指導役であるエルザは、ヴィオラの恋人でもある。その甘い同室生活が終わりを告げようと――、


「……そう、言いたいところだったのですが、今回は同室とはいたしません」

「まあ!」


 ヴィオラは思わず手を合わせたが、カミユの冷めた目線を受け、しずしずと下ろした。

 カミユは咳払いを一つし、続ける。


「相手の強い希望です。一人部屋のほうが都合が良いと」

「……ご都合、ですか」


 カミユが再び紅茶に口をつけた。下ろしたカップが皿に当たり、静かに鳴る。


「シスター・ヴィオラ。貴女が指導するのは、シャーロット・オーウェン。私の姪であり、オーウェン辺境伯の娘です」


 そう、告げた。


「わ、私が辺境伯令嬢の指導役に、ですか?」

「ええ、神の御下では身分の差などない。そうは言っていますが、それを実践するということは案外難しいものです」


 カミユが意味ありげにヴィオラへ視線を送る。ヴィオラは深くうなずくと、


「ごもっともですわ。特にオーウェン辺境伯令嬢ともなれば、この修道院でもご存知の方は少なくないでしょう」

「……ええ、家格の釣り合いという意味でも、貴女がふさわしいと判断しました。指導方法は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。本家の許可も得ています」


 わずかな沈黙の後、カミユはそう言って嘆息した。そして、こめかみに手を当て、揉む。


 ――お疲れかしら。そうよね、辺境伯令嬢が修道院で修行するなんて、気苦労が絶えないのでしょう。


 せめて自分はオーウェン院長の負担にならないようにしよう。

 そう心に決めて、


「かしこまりました。指導役のお話、お受けいたします」

「そう言っていただけると助かります」

「ところで、差し支えがなければ、オーウェン辺境伯令嬢がどのような方で、どのような経緯で修行をすることになったのか、教えていただくことはできますか?」


 カミユはヴィオラのその問いに、一瞬身をすくませた。


「……必要ですか?」

「できれば。相手の事前情報があるとないとでは、最初期の指導の組み立てに差が出ますので」

「そうね、事前情報。確かに、それは重要だわ、ええ」


 まるで過去の苦い経験を思い出すかのように、わずかに歯ぎしりをしたカミユを見て、ヴィオラは「苦労してきたんだな」などと思う。

 しばらくの間、部屋に沈黙が下りる。窓の外から作業をしている修道女たちの声が、かすかに聞こえた。

 そして、カミユは重い口を開く。


「シスター・ヴィオラ。シャーロットは、貴女と同じことをしました」


 カミユの言葉に、ヴィオラの心臓が跳ねる。


「シャーロット・オーウェンは、数多の令嬢たちと不適切な関係を持ち、性根を叩き直すためにこの修道院へ送られるのです」


 それは、ヴィオラの罪でもあった。

新章開始しました。


今回はこれまでとテイストが少し違いますが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


面白いと思っていただけたら、ブックマークや★ポチ、感想をください。寂しいので励みになります(´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ