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【三章後日談連載中】「嫌なら嫌と言いなさい」~公爵令嬢に転生した三十路素人童貞、紳士の心得で百合ハーレム築いたら優越的地位の濫用で訴えられる~  作者: 無屁吉
【外伝】巨乳糸目修道女の覗き見日記(えちちが見たいです!)

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第3話「――すっごいものを見た!」

 ■

 ■


 修道女に不人気な勤めの一つに、夜の巡回がある。

 手に持つ蝋燭の明かりだけを頼りに、暗い修道院を歩かなければならず、神の御下とはいえ不気味さゆえに嫌われていた。

 だが、アリサはたまにしか回ってこないこの役目が大好きだった。


「狙い目なのはやっぱりセレンとナンシーの部屋かしら……。でもそれだと新鮮味に欠けるわねえ……」


 揺れる手燭の灯で足元を照らしながら、アリサはブツブツと呟き、廊下を歩く。

 歩を進めるたび軋んで鳴く床板も、アリサは意に介さない。


「ハラも新しいネタは持ってなかったし……。うーん、確率が高そうなところに行くか、冒険をするか。悩ましいわねえ」


 考え事をしながらも、見回り自体はきちんとこなす。

 地下貯蔵庫、異常無し。布物保管室、異常無し。礼拝堂、異常無し。祭具保管室、異常無し。薬草小屋、異常無し。農具倉庫、異常無し。


「誰も隠れてないわねえ……」


 今のところどこにも異常がないことを確認し、思わず「ちぇ」と舌打ちが出る。

 残りは居室棟。

 アリサは長い廊下の端に立ち、諦めてセレンとナンシーの部屋を探ろうかなんて思った。

 その時だった。


「お?」


 微かな声が、アリサの耳に届いたのは。

 息を殺し、出処を探った。自分の鼓動でさえ雑音に感じる。


 ――こっちかしら?


 つま先から床に落とし、踵を沈める。それをゆっくり繰り返しながら、アリサは声へと近づいていく。

 押し殺したようなくぐもったそれは、しかし確かに熱を帯びていて、アリサの期待を膨らませる。

 そして、


「うっそお……」


 思わず漏れたつぶやき。

 アリサが立っているのは、ヴィオラとエルザの居室の前に他ならなかった。


 耳をそばだて、神経を集中する。木の扉を隔て聞こえる、くぐもった悲鳴のような声。


 ――シスター・エルザ?


 ドアノブに手をかけ、恐る恐る回す。カチャリと、小さいはずの音が酷く大きく聞こえた。

 油の切れかかった蝶番が軋む。


 ――開いた。


 咄嗟に手燭の明かりを消し、ドアの隙間から部屋を覗き見た。

 狭い二人用の居室からは、アリサも使っているポプリの香りと、それでも上書きしきれない淫蕩な臭いが漂ってきた。


 ぼんやりとした燭台の火に照らされ、エルザの顔が浮かぶ。それが紅く見えたのは、決して蝋燭のせいだけではないだろう。


「ひっ、ひぅ……!」


 吃逆しゃっくりのような声には艶が乗り、エルザはシュミーズに包まれた肩を跳ねさせる。

 しかし、見えたのはそこだけ。


 ――ああ、もうっ、角度が悪いっ!


 アリサはわずかに逡巡し、神に「どうか気づかれませんように」と祈りながら、ドアをもう少しだけ開けた。


 楽園があった。


 まくり上げられたシュミーズ。むき出しになったエルザの腹部に、金糸の髪を持つ乙女が口づけを落とす。


「エルザ先輩、エルザ先輩……」


 ヴィオラはエルザの名を繰り返し呼び、彼女の肌着に潜り込んだ手を動かした。

 麻布の下着が手の形に盛り上がる。それが頂と思われる場所を通過する度、エルザはアリサが聴いたとおりの嬌声を上げた。


「ちょ、ちょっと、だめ、待って、声ぇ……声、出ちゃう……」


 エルザがヴィオラに救いを求める。ヴィオラは手を止め、顔を上げた。

 まるで聖女のような慈愛に満ちた笑みをエルザに向ける。その様は、隠れ見ているアリサをして、一枚の宗教画のようにも見えた。


「じゃあ、塞いじゃいますわね」

「えっ、ちょ……」


 甘茶色の髪に金糸が混じる。

 甘い水音。


 ――見てはいけないものを見ている。


 アリサは知らず指先を唇に当てていた。形をなぞり、舌をつける。部屋の中でしている音が、アリサの口からもした。

 ヴィオラの指がエルザと絡まる。しがみつくように握られた手。

 かすかに震えるそれが、アリサにはどこか、怯えているようにも見えて――、

 ギシと、ひときわ高く、ドアが軋んだ。


 ――やばっ。


 背中に冷たい汗が噴き出る。隙間越しに、エルザの熱に浮かされた瞳と目が合った気がした。

 アリサは開いたドアもそのままに、それでも物音は立てないようにだけして、その場から退散するのだった。


 ■


「――すっごいものを見た!」


 滑らせたペンは筆跡も荒々しく、跳ねたインクがページに染みを作る。

 だが、手は止まらない。


「あのヴィオラさんが! あのシスター・エルザが!」


 見たままを、感じたままを日記に記していく。

 身体の奥底に熱がこもっている。下腹部が切なく疼いている。

 だが、今はその欲情ですら紙へと叩きつけなければ収まりがつかない。

 耳の奥で甘い水音がこだまする。エルザの嬌声が、強気なヴィオラの声が、リフレインして止まらない。


「――ふう……」


 ようやく納得がいく日記が書けたとき、床にはいくつもの書き仕損じたページが、無造作に破り捨てられていた。

 ()()()()()を終えた時にも似た心地よい疲労。しかし、それ特有の虚しさはなく、むしろ充実さえ感じていた。


「あ、そうだわ」


 冷えた頭で手紙を思い出す。アリサは文机の引き出しから便箋を取り出し、広げた。


「少し早いけど、気分が良いからやっちゃましょう」


 父なら手紙が来れば来ただけ喜んでくれるだろう。それに、ヴィオラの話も伝えてあげたい。なにせ、


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だなんて、ヴィオラさんは良いご家族に恵まれたのね」


 そう、父から頼まれているのだから。


「とはいえ、今回のことはそのまま書けないし……」


 アリサは頭をひねりつつ、定型文じみた書き出しを記す。そして、


「お友達のヴィオラさんは、いつかのような指導を受けることもなく、今日も先輩のシスターと()()()()()()()()――」


 そう、ペンを走らせた。


 了

お読みいただきありがとうございます。

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新章を始めるときもここに追加していきますので、もし気になる方がいらっしゃいましたら、ブックマークお願いいたします。

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