第23話 インペイルメント
チクショウ、どー見ても本体だったアレは、おとりの樹液爆弾……! そんなん出来るなら、前の試合からしとけよ、ボケ……! 作戦の立てようが、ないだろうが……!
「ギャーッハッハッハ!! 引っかかったねぇ、クソ鳥チーム! サカナ女にやられて、よーく分かったのさ! アタシにも攻撃が届きうるヤツらが、この世界には、いるってねェ――!!」
トレントの高笑いがひびく。
「あああああっ、かゆい、痒い――! それに、ネバネバして……!」
全身をかきむしり、苦しむシャル。しかしすぐに立ちあがり、走りだす……走りだす!? 見ると、羽根と胴がべったりくっ付いて、翼が使えないようだ。粘着性の、毒樹液……!
「うおおおおお――っ!」
一刻の猶予も、ない。ニンジャが投げてきた手裏剣をかわし、梢のうえから飛びおりる! 大木の幹に螺旋剣メイルストロムを突きたて、ブレーキがわりにして急降下! がりがりがり! だが――
「ざまァないねえ、食らえ、トリ女――!!」
どすっ。シャルの足もとから伸びてきた黒い枝が、彼女の左脚をつらぬいた。そのまま太腿のなかで急成長し、カラダを持ちあげ、あ、あれは……!!
『リグナムバイタ・インペイルメントだ――!!! メ、メアーディ選手の残虐ファイトが炸裂ううう――!! シャル選手の太ももから、何本も木の枝が、突きでて……わたくし、見ていられませ――ん!!』
「あああああ、痛い、いたい、この、この――!!」
約2メートルの空中に固定されたシャルが、爪でがんがんと木の幹を叩きつけるが……びくともしない! ここで最硬の木、リグナムバイタのカードを切ってきたのか。なんて、悪趣味な……!
「待ってろ、いま、そっちに……! どりゃあああ――!」
地上約10メートルから、身をおどらせ……勇者体術奥義、5点着地法! 1、2、3、4、5! 全身のはげしい痛みと引きかえに、ランディングに成功! しかし――
「行かせないよォ――!!」
ずもももも! 俺とシャルのあいだを阻むように出現する、何本もの大木! そのうえ、まわりの木の表面に……おいおい、マジかよ……!!
『どれがホンモノか、分かるかねぇ、ク、ク、ク……』
『こ、これはあああ――!!! 5……10……20! 何十体もの、ダミー・メアーディが現れたあああああ――!?』
「つ、強すぎる……!」
◇◆◇◆◇
一方的な戦いがつづく。地上約2メートルに固定され、ニュートの戦いを見守ることしかできない私。刺さった枝にはかえしが付いており、抜くことは不可能。
頭上から襲いかかるバクダンに手裏剣、次々と地面から生えてくる木槍……みるみるうちに、傷ついていく彼。だが、諦めない。ときおり私のほうを見ながら、敵の攻撃をさばき続けている。
幸か不幸か、トレントは一気に私の命をうばう気はなさそうだ。苦しむトリ女の目のまえで、パートナーが息絶える様子を見せつけるつもりだろう。
貫かれた左脚から、ぼたぼたと血が流れおちていく。木の幹をつたって……そうか。
まだ、逆転のチャンスは、ある。問題は、彼にそれが伝わるかどうかだ。
お願い、気づいて、ニュート……!!
◇◆◇◆◇
どっかああああん! 俺の頭上で、スナバコノキ爆弾が炸裂! 地面に倒れ伏し、すぐさま転がって回避……ざくざく! さっきまでいた場所に、何本もの手裏剣が突きささった。
もはや、満身創痍。こいつはさすがに、ギブアップかと思いシャルを見た、のだが……
「……」
彼女のひとみに宿る、決意の炎! その闘志、いまだ消えず!
「な、なんで……!」
彼女の足から、したたる血。ん? なんかちょっと、量が多いような……ヴァンパイアの能力で、止血しないのか? ……そ、そうか、分かったぞ。ありがとう、シャル……!
勇者アイで、まわりの状況をチェック。攻撃をかわしながら、敵の急所の、目ぼしをつけて……
「そろそろ、串刺しになれやァ――!!」
どがん! 木槍の一撃をメイルストロムで受けて、わざと吹きとぶ! その先に、あるのは――!
「そこだあああああ――!!!」
ずぶり! 螺旋剣を、いっけん何の変哲もない木の、幹に突きたてる! 中から、現れたのは……
「ごっ、ごぼっ……! そ、そんな、バカな……っ!!」
木目肌の女性の、左むね。人間でいえば心臓の位置に、柄まで剣を撃ちこまれた……木人メアーディ、その本体! 間違いなく、致命傷だ……!
――からくりは、こう。
あれだけ大量の木をあやつる都合上、メアーディは、多くの水分を必要とするはず。そしてすべての木は、彼女の本体を中心としてつながっている。
木にヴァンパイアの魔血を染みこませることで、水や養分の通り道――維管束という――が集中している場所を、赤くマーキング。色のいちばん濃い場所を狙って、一撃をブチこんだというわけだ。
『と、とんでもないことが、起こってしまいましたああああ――!! 圧倒的不利かとおもわれたニュート選手の、聖剣一閃!! それも、本体の位置を見やぶってです!! 勇者もまた、魔眼のホルダーなのかあああああ――!?』
アナウンサーが絶叫。よし、ちょっと後味はわるいが、これで試合終りょ……ん?
「ヒッ、ひぃっ……! ダメでござる! それは拙者には、できないでゴザル――!!」
息もたえだえのメアーディが、ぎろりと天をにらみつけると……梢の上から聞こえる、ニンジャの悲痛な叫び。いったい、どうしたというのか。
……彼女が動く。おいおいおい、まだ、余力があるのかよ……!
「バカ……みんな……森……勝ち……炎……」
メアーディが、うわごとのように口走る。すると緑ドーム――ユグドラシル・フィールドにある木のすべての枝が、動きだし……互いにガンガンと、打ちつけられ……
ぜんぶの木が、瞬時にして燃えあがった。
「嘘……だろ……?」




