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第22話 準決勝第1試合

『ながらく! おまたせ! いたしましたあああああ――! いよいよ比翼連理杯も、準決勝に突入でありまあああああ――っす! みなさまの推しペアは、勝ちのこっていらっしゃいますでしょうかああああ――! では魔導ビジョンで、これまでの激闘を振りかえって……』


 アナウンサーのバンシーが、きょうも元気に叫びまくっている。俺たちがいるのは、いつもの入場ゲート裏。


「ニュート、体調は……」


「心配するな、問題ない。シャルは、作戦に集中してくれ。勇者のカンだが、あいてのトレント……メアーディは、まだ奥の手を残してる。短期決戦で終わらせないと、キケンだ」


「勇者のカン、たま~に当たる(フラグる)のが、タチが悪いのよね……」


「どーいう意味だよ、それ」


 ほかの4強とのいざこざから、数日後。俺のカラダは……マジで、いい感じに回復していた。悔しいことに、一時的なヴァンパイア化が、自己治癒力を高めてくれたっぽい。


「よし、じゃあ……吸うわよ」


 心配そうに俺を見ていたシャルの表情が、ちょっとノリノリなそれに変わる。ちっ、ゲンキンなやつめ。


「ああ、思いっきりやってくれ。試合中の……その……アレを見守ってくれるほど、やさしい相手じゃないからな」


 鎧をはだけさせ、首をさし出す。彼女が顔をよせてきて……かぷり。


「へんほーふほ、ふはいふほばはにひへさ……じゅる……ほんほ、ふはふふはね。じゅる……へっはい、はふはよ……!(セントールと、スライムもバカにしてさ……! ホント、ムカつくわね。ぜったい、勝つわよ……!)」


「ぐあ、ううっ……! だまって飲め、だまって……!」


『選手! 入場です!! まずは、東ゲート!』(――すうっ)


 バンシーが、おおきく息を吸いこんだ。いやな予感がする。


『愛は最強――!!! 接吻をかさねるほどに強くなる、異色ペア!! 大陸全土のモンスター愛好家の、まさに希望の星!! ハーピーがリードしてるムードなのも、その手の方々にはたまらないポイントとのこと!! あっ! ムダですよシャル選手!! 実況席は、魔導バリアでガッツリ守られております!! 皆さまも安心して、あたたかい声援をお送りくださあああああ――い!!!』


 口上が終わるのを待たずに、顔真っ赤のシャルがコロッセオ中央に、飛んでいって……


「ハーピー真空波――!」と叫びながら、ウィンドカッターを実況席にブチ当てた。なかよく中指を立てあう、彼女とアナウンサーのバンシー。茶番が過ぎるぞ、おい。


 いつものごとくよたよたと、追いかける俺。貴賓席には、マレーネ女王のすがた。その、うしろには……


 “男性移住歓迎 補助金充実 ハーピーの里”と書かれたクソデカ横断幕を、ハーピーの長老たちとライオネル・サジが掲げている。何やっとるんだ、あいつら。


 とことこ走りながら、むかし母親……聖女エリスに、「ねーねー、なんでモンスターは女の人しかいないのに、子どもができるのー?」と聞いて困らせたことを思いだす。


 彼女は、「パパに聞いてみなさい」と言い……オヤジは、「サムライか魔術師なら、知ってるんじゃないか?」と流し……けっきょく、勇者パーティ全員のたらい回しにあったというわけだ。閑話休題。


『西ゲートを、ご覧ください!! 昔からひそかに語られてきた、“うごく樹ってじつはメチャクチャ強くね?”という疑惑! それが、現実のものとなりつつあります!! パワー! デバフ! 飛び道具!! スピード以外のすべてを兼ねそなえた、オールラウンダーにして戦場の支配者!! 邪魔するヤツは緑に染めるだけ!! トレントチームに、大きな拍手をお願いしまあああああ――っす!!』


『うおおおおお――っ!!』(パチパチ)


 木目肌の女性が突きでた樹と、その梢にぶら下がったニンジャがゆったりと入場。開始位置に、俺たちとトレントが、向かいあって並び……


「棄権しなかったのを後悔させてやるよ、トリ女ぁ……」


「え? なんか言った? もっと、腹から声だしなさいよね。ざ~こ♡ 枝すかすか♡」


『時間いっぱい、試合、開始いいいいぃ――っ!!!』



 ◇◆◇◆◇



「出し惜しみはしねえぞ、くたばりやがれ――!!」


 煽りあいとは裏腹に、開始とどうじにバックステップで距離をとる全員。トレントが気合い一喝、樹木ドームを発動させた。


 ずももももと伸びあがっていく大木たちが、てっぺんで梢をつなぎ合わせ……またたく間に2回戦のときと同様の、緑の結界ができあがる。


『いきなりユグドラシル・フィールドだああああぁ――っ!! メアーディ選手、かなり怒っております!! 頭上からの爆撃と手裏剣のコンビネーションに、ハーピーペアはどう立ち向かっていくのでしょうかあああああ――!!』


 計算どおりだ。まずは……


「シャル、作戦を忘れるなよ」


「分かってるわよ!」


 ふた手に分かれ、防御態勢! しゅるるる! ずぼぼん! 地面からつぎつぎとはい出る、ツル草に木槍が俺を狙う!


「……甘いぜ! 甘すぎるぜ!!」


 ばしゅん! ずばん! 俺の右手に光るのは、魔力を通して氷の魔法剣と化したメイルストロム! ツタを切りはらい、幹を凍らせて粉砕!


 ひゅるるるる! ホバリングするシャルに、上空から爆弾――スナバコノキの、果実が迫る!


「ハーピー・風アタック!」


 ばひゅん! ものすごくテキトーな技名とともに、彼女が暴風(ゲイル)の魔術を発動! 軌道をそらされた爆弾が、メアーディ本体へ殺到――


「舐めんなぁ――!!」


 ずももも……どかん! 本体てまえの地面から生えた、何本もの大木に阻まれる!


「――!! ……っつう! あぶないわね!」


 シャルが、わき腹をおさえる。赤く光る、傷あと。地面に突きささるは……手裏剣だ! それを見た彼女が急降下して、突きあげた俺の左手をキャッチ!


「よし、ニンジャは……あっちだな! さっさとブッ殺して、パートナー死亡で俺たちの勝利だ! いくぞ、シャル!」


「りょーかい!」


 手裏剣の、飛んできた方角……上空の梢の一角にむかって、2人で高速飛翔! とうぜん――


「ふ、ふざけんな、お前らあああああ――っ! 誇りがどうとか言っといて、人間ねらいかよおおおおお――っ! 正々堂々と、戦えやあああ――!!」


「ふん! 後ろからシュリケン投げてくるヤツらが、何をほざくのよ! 相棒がしかばねになるのを、そこで指くわえて見てるがいいわ、バ――カ!!」


 絶叫するトレントに、あおり返すシャル。これは正直、彼女がただしい。


『おーっと! ハーピーチーム、ニンジャに攻撃を集中させる作戦のようです! ニシキ選手は愛のツープラトンから、逃げ切れるのかあああああ――!?』


 たたん! 上空にはしる、太い枝に着地!


「シャル、ニンジャの場所は――」


「うーん……くうっ、分からない……! セイレーンのようには、できないわ。ゴメン……!」


 ……これは、しょうがない。本来エコーロケーションは、洞窟内などの均一な場所で真価を発揮するもの。


 解放された空間で、しかも葉っぱのような軟らかい物体がわさわさ茂っていたら、超音波での索敵は難しいだろう。あのセイレーンが、異常なだけなのだ……だが、これも想定内!


「――モクモクいくぞ、夢幻霧中陣(ミスティック・フォグ)!」


 ぶぼぼぼ……もわっ! 大気中の水蒸気を凝集させ、キリが発生! ほんらいは、味方の回避率をあげる水魔術。しかし俺はそれを、トレント本体からの目くらましに使った! そして――


(すうっ)「ニンニンニ~ン! 助けてくれでゴザルぅ~!!」


「んなっ!? ヒドいでござる……!」「似てるわね、ニュート!」


 ニンジャのお株をうばう、渾身の声マネが炸裂!


「アッサリ見つかってんじゃないよ、マヌケ――!!」


 にょきにょき、ずもも! 焦ったトレントが、パートナーを援護すべく大量の枝を伸ばしはじめる! よし、今だぁ――!


「行け、シャル!」


「はああああぁ――っ!!」


 ヴァンパイア、トレント本体へ爆速飛翔! こっちに集中してる彼女は、自らを守る枝を伸ばせないハズ! これで、決めてくれ……!


「しまった、トリ女……!」


「食らえ、ハーピー・デスクロー・スラッシュ――!!」


 変形させた右腕で、それっぽい技名を叫びながらトレント本体を袈裟斬り! ずしゃあ! よし、決まっ……え?


「きゃあああああ――っ!?」


 どばぁ! 割られたトレント本体……木目肌の女性の内部から、ほとばしる樹液! マトモに浴びたシャルが、地面に転がり苦しみだす!


「う、嘘だろ……ダミーの……本体!? や、やられた……!!」

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