↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/19

第11話 異世界剣客浪漫譚

「居合いだァ、避けろおおおおおお――っ!!」


 ヴァンパイア――シャルが目を見ひらき、すぐさま左下にバレルロール……ばしゅん! 一瞬前まで彼女がいた場所を、光波が走った。


 その勢いのまま、ごろごろと地面を、転がり……俺の、約3メートル前で停止。駆けよると……


「嘘だろ、火が……!」


 斬撃の光波が、羽にかすった部分。そこから、ぶすぶすと煙があがっている。ばんばんと叩いて、消火――


「ほほう! 居合い斬りを知っとるとは、さすがじゃの――!」


 こっちに振りかえったサムライが、カタナをふたたび、鞘におさめて余裕の表情。そして鞘の入口“コイクチ”からしたたるのは……青き、スライムのしずく!


『なんだいまの攻撃はあああああああ――っ!! サジ選手が、カタナを抜きはなつやいなや! ほとばしる剣風!! 闇を切り裂く、東方の神秘でありまあああああ――っす!!』


 分析。どうやら、肩の上にいたスライムは、そのカラダ……群体の一部にすぎない。


 鞘の内がわにスライムを、流し……摩擦力を、自在に操作! サムライ自身の火魔術をのせた、渾身の抜刀術をとばす戦闘スタイルのようだ。っていうか、また、天敵の火属性……!


 オヤジの元パーティメンバーにサムライがいて、「サムライがカタナをおさめたら、用心せいよ」というのを、たまたま聞いていなければ……シャルは、真っ二つだったかもしれない。


「う、うぐう……っ!」


「大丈夫か、シャル! あっ、クソ……!」


 また、名前で呼んでしまった。彼女の手を、つかんでひき起こし……


 ぬるり。その手が、油で覆われているかのようにすべった。


「……は?」


 おトイレにいったあと、手を洗っていなかったのだろうか。それとも、ものすごい、手汗……!? いやいや、俺はそこまで、バカではない。分裂・融合・変形自在の、スライムの特性を、考慮……


 導き出される答えは、ひとつ。


「おい、ヤツ……スライムの秘密が、多分わかったぞ。自分をキリ状にして、周囲の空気中に、うすく広がって……空間のすべてを認識する、防御特化のスキルだ」


 彼女の耳もとに顔をよせて、ささやく。


「はぁ、はぁ……えっ、ウソ……そんなの、反則じゃない……! いや、それなら、“ある”わね……対策が!」


「ああ、そうだ……炎を飛ばしてくる以上、短期決戦しか、ない……! 合わせろよ!!」


 単なる負け以上にダメージが大きい、羽根を燃やされての吸血鬼バレ……何としても、それは避けなければ。猛然と、サムライのほうに、突進――!


「ええい、いくわよ、ゲイル……っ、ハーピー大旋風――!!」


 ――もう一度言うが、この世界の一般モンスターは、魔術は使えない。彼女なりの、ゴマカシだ――


 うしろから、風属性術……暴風(ゲイル)の、援護! さらにサムライの周囲にまき起こる、砂塵とつむじ風!


 渾身の風属性上位術――大竜巻(サイクロン)が、スライム・ミストを吹き散らし……敵の、視界をうばう!


『こんどはシャル選手による、風攻撃! その翼のどこに、これほどのパワーが秘められているのでしょうかああ――!! ハーピーの長老たちも、おったまげという顔でありまあああ――っす!!』


「むほぉ……っ! これは、いかんわい……っ!」


 焦るサムライ。ざまぁ!


「もらったああああああ――!!」


 叫ぶやいなや、砂嵐のてまえで方向転換! 向かって左側、あいての死角から砂嵐に突入! これは、かわせまい……は?


 俺の目に、サムライの履物……ワラジの、足裏が大うつしになった。


「ぶべろげろばっ……」


 顔面にケンカキックを食らい、ド派手に吹っとぶ。な、なんで……!



 ◇◆◇◆◇



 私の、前方約15メートル。パートナーの勇者もどき――ニュートが、大の字になってのびている。どうやら彼の推理は、的はずれだったようだ。


 風魔術……大竜巻(サイクロン)が、おさまっていく。その中心から現れたのは……ノーダメのサムライ。ゆっくりと、彼に近づき……


「あああああ、やめなさいよぉ――!!」


 憎むべきニンゲンとはいえ、曲がりなりにもこないだ、自分をかばってくれた相手……それを見殺しにするのは、魔族の誇りが許さない。翼を羽ばたかせ、飛びあがった私を――


 ぴしゅんっ! サムライの、居合……燃える斬撃の光波が、とらえた。


「きゃあっ……!」


 あえなく墜落。羽で受けることは、できない。胸当てが両断され、肌があらわになる。へそ上から胸骨にかけて、甚大なダメージ。熱のせいで、止血もままならず。


『シャル選手! 撃墜!! これで、決まってしまうのかあああああ――!?』


 ふたたび、彼がカタナを、ニュートに向けて振りかぶり……


「ま……まだ終わってない……がっ……がぼっ! こっちに、来なさいよ、かかってこい、コシヌケ……!」


 必死に挑発。やれやれ、という顔のサムライが、堂々と近づいてくる。よし、射程距離に入ったところを……カラダから伸ばした、血槍で仕留めてやる。相討ちでも、構わない……え?


「……!!」


 サムライの、背中がわ。体をガクガクと痙攣させながら、ニュートが立ちあがり走りだす。そしてあの忌々しい螺旋剣で……


 ざしゅっ。サムライの背中を、ぶった斬って……立ったまま、ふたたび動きをとめた。


『な、何が起こっているので、ありましょうか! サジ選手の! 絶対防衛圏が!! あえなく破られてしまいましたああああああ――!! しかし、ニュート選手のダメージも、大きいぞおお!! いったいこれから、どうなってしまうんだあああ――!?』


「む、むぅおおおっ、おのれ、こわっぱ……!」


 顔を引きつらせたサムライが、一時離脱。カタナの鞘からスライムが出て、彼の傷口に向かう。粘液で、止血をするつもりだろう。


 なぜ、攻撃がいまになって通じたのか……分からない。だが、まずは……


「ぐっ、ううぅ……っ!」


 這って、ニュートのほうに向かう。たどり着いて、彼のカラダをよじ登って……白目をむいた、マヌケな顔。鼻からは、大量の出血……んんっ?


 なにか、違和感。目……網膜の血流を増やし、視力を強化。私の目が、とらえたのは……

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

ブクマや感想・評価など頂けたら、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。