第9話 実験!実験!実験!
頭のなかに数値とゲージが現れる。
初めてマギクロを本物の魔法として使った時とは違い、大体のやり方はあの頭痛のおかげで理解できていた。
俺は数値とゲージの他、横に並んだカード数枚のうち、一枚が目に留まった。
■スパーク
コモン
スペルカード、使用MP5
使用した際に『相手のサモンカード全てに1点のダメージを与える。』
名前の下にある【コモン】というのレア度であり、コモン、アンコモン、レア、レジェンド、ユニークの六段階。つまりこのカードは最も手に入りやすいカードということだ。
「スパークのカードか、低レアなんだけど結構使いやすいカードなんだよなあ。」
スパークのカードを手に取るとカード効果説明文の『』の中の文言が変化する。
■スパーク
コモン
スペルカード 消費MP5
使用した際に『目に映る範囲の敵(最大数5)に低威力の電撃を与える。』
「とりあえず、使ってみるか。【スパーク】!」
手をかざすと眼前の小さな魔法陣が現れ、そこからホーンボア5匹に向かって細い電流が襲いかかる。その瞬間、俺のMPゲージが少し消費され、残り135となった。
魔法の発動はいたってシンプルだ。使用したいカードの名前を言う。そうするとスペルカードの場合は即座に自分のMPがそのカードに書かれている分、消費され、そのカードの効果が発生する。そしてもし、その数値分が無ければ使用することはできない。ちなみにカードの説明が入れ替わったのは本来のカードの効果がこの世界で魔法として利用できるように置き換わったということだ。
手をかざしたのは…なんとなくの雰囲気である!
電撃を浴びたホーンボア達は怯み苦痛の鳴き声を上げる。ライフポイントが見えないこちらの世界では相手にどれだけのダメージが入ったか分からないが、足止めできるほどの威力はあるようだ。
それでも視界に入っていなかった両脇からそれぞれ数匹ずつホーンボアがこちらに突撃をかけてきた。
「よし…なら次はこれだ!」
■落とし穴
コモン
スペルカード 消費MP10
相手の攻撃宣言時に『相手のサモンカードの攻撃を無効にし2ターンの間、攻撃も守備もできなくする。』
手に取り、もう一度確認する。
『攻撃してきた相手を10分間落とし穴に落として動けなくする。なお、飛行できる相手に対しても有効。』
これだ!俺はすぐに【落とし穴】のカードを3枚を手に取り発動させる。
マギクロではスペルカードは3枚までデッキに同じカードを入れることができる。この世界でも同じスペルカードは一度に3枚まで使用することができる。
呪文を唱え、手を掲げるとホーンボアの進行方向の先に落とし穴が現れ、数匹が落ちる。それを見た後方のホーンボア達は穴の手前でブレーキをかけて穴を避け、再びこちらに突進をしかけるようである。
「残りMPは105か。」
MPの回復は時間経過かアイテムを使用しなければならないが、今はそんなアイテムはない。時間回復にしても活動中なら10分で1、睡眠中なら1時間で30は回復する。
「じゃあ次はサモンカードを試すか。」
意識を集中し、カードを選ぶ。
■群れる狼
コモン
サモンカード 消費MP5/分
攻撃力2 体力4
フレーバーテキスト
その森で遠吠えを聞いたら引き返し給え。もう手遅れかもしれないが。
サモンカードはゲームでは場に出して相手プレイヤーや相手のサモンカードに攻撃したり、逆に相手からの攻撃を防いだりしてくれるカードだ。
中には特殊な効果を持ったサモンカードもあるがこのカードは効果なし。いわゆるバニラと言われるカードだ。特殊な効果がない分基本ステータスが高めに設定されている。
ちなみにサモンカードはデッキに同じカードは入れらないというルールがあるが、こちらでも同じようで一枚しか選択できなかった。
「サモン!群れる狼!」
「ワオオオオン!」
かざした手から6頭の狼が勢いよく飛び出しホーンボアめがけて駆け出す。大きさは本来の狼よりもふた周りほど大きいか。
狼は2頭一組で次から次へと猪を狩っていき、そしてその度、光の粉が俺の身体へと吸い込まれていく。
「6頭でも1枚のカードだから消費MPもそのままなのはありがたいな。」
1分毎に減っていくMPゲージを確認しながらホーンボアの減り具合を見る。
サモンカードは発動している間、指定されたMPを消費し続けるという仕様らしい。
今回使った【群れる狼】は1分間に5ずつ消費されていく。
「もどれ!」
狼たちを戻すとそこに残ったのはあの一際大きいホーンボアの長、グアネだけであった。
仲間がやられ、意気消沈しているかと思ったが、そんなことはなさそうだ。無理もない俺にやられても復活できるのだから。
「ふん。小僧。なぜ狼を戻した?MP切れか?それともあの狩人を使うのか?」
「いや。どっちも違うな。これは実験だよ。どのカードがどの程度の効果があるのかってな。」
「小僧…この俺を馬鹿にするのも大概にするんだな。」
静かではあるがグアネの声には深い怒りが込められている。
残りMPは45。最後のカードは決まっていた。
「これが最後のカードだ。サモン!フローズンドラゴン!」
名前を叫ぶと今度は手からではなく空に魔法陣が現れ、その中から全身が白銀に輝くドラゴンが姿を現したのだった。




