第8話 最初の村
俺がベッドの上でうなだれていると急にドアの外が騒がしくなっていた。
「なぁ、アレアなんか外が…うわ!」
扉が勢いよく開いたかと思うと小太りの中年男性を筆頭として数人の村人と思わしき人間が転がるように入室してきたのだった。
「おお!勇者様!目覚められましたか!それにアテレイア様もゆっくりと過ごされましたかな?」
見るからに人の良さそうな小太りの男は起き上がりながら問いかけてきた。おそらく村長といったところか。
「本当にありがとうございました!あんな夜中だったのにこんなによくしてもらって。」
「いえいえ。アテレイア様であれば…いえ、困っている方がいるのなら助けるのが我らドープの民でありますよ。」
二人が談笑しているなか、後ろの村人達は何やら用件があるようだ。ちなみに俺が勇者と呼ばれているのは一般的には俺たち代表選手は【神が選んだ勇者】という認識らしい。
「あのう。泊めてくれてありがとうございます。ところで、何か用件があったんじゃ?」
すると村長は穏やかな笑顔から苦笑いへと表情を変え、言いにくそうにアレアの方を見た。
「それがですね。困ったことにホーンボアの群れが村の周りに出没したようで…このままでは畑が荒されそうなのです。」
ホーンボア…ああ、俺が倒したアイツか。
「ホーンボアがこんなところまで出てくるなんて珍しいのになあ。」
扉付近で村の男たちの話し声が聞こえてくる。これは十中八九、俺たちのせいだろう。ホーンボアは執念深い魔獣だ。きっと俺達を追って来たに違いない。…それにしても知識があるのはかなり便利だ。いちいち質問しなくていいのは助かる。
「こんなことをアテレイア様にお願いするのも心苦しいのですが…ホーンボアをどうにかしていただけませんでしょうか?」
村長は申し訳なさそうに頭を下げる。宿を貸した代償に助けて欲しいという形になったのがその理由だろう。
「ええ!もちろんかまいませんよ!大事な信徒のお願いですからね!」
アレアが胸を張って引き受ける。それならちょうど良い。俺も試したいことがある。
「アレア…様。俺も連れて行ってもらってもよ…よろしいですか?」
「ハルトさん気持ち悪いですよ?」
村人の手前、コイツを立ててやろうと思った俺がバカだった。ベッドから立ち上がり、身支度を黙々と終えるとアレアに続いて部屋を出て行く。
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「うわあ…あれって何匹くらいいるんだろう…ていうかアレアはあいつらに干渉できないんじゃないのか?」
ホーンボアに見つからないように家の影から村の外を確認するとホーンボアが村を囲むように徘徊している。
「ええ、通常はできませんが、宿を借りたのでそれをお供えという形で私が受け取り、それに報いる為に信徒からのお願いを叶えるということになるので今回は大丈夫です。」
「なんかややこしいな。」
「ええ。本当は信徒には無条件で助けてあげたいんですけど。」
「それはそれで別の問題が起きそうだな。」
「でもそれができるようになるのが最高神の位なんですよね。」
「なるほどね。」
ホーンボアの様子を観察しながら雑談していると一匹のホーンボアが奥から村に近寄って来る。あれは…やっぱりな。
「あっ!あの時のホーンボア!」
そう。忘れるわけがない。一際大きいあのホーンボアは俺に現実だと突きつけた張本人。いや、張本猪のグアネだ。
「ここにいるんだろう!?出てこい!!」
村中に響くようにグアネが叫ぶ。村人たちは家の窓から怯えつつその様子を見ている。
出てこいというのは俺たちのことだろう。
「さてと…。なぁ、アレア。俺が合図したら助けてくれないか?」
「あ、はい!助けるっていうのはホーンボア達を片付ければいいってことですよね?」
「そのとおりだ!」
俺は意を決して家の影から飛び出し村の外に出る。グアネは俺を凝視し、嬉しそうに鼻を鳴らした。
「勇者よ。よくぞ我が前に現れてくれたな。これでこの村を更地にしなくて済んだ。」
「お前こそわざわざここまでまたやられにきたのか?」
軽く挑発してみたが、効果はてきめんのようだ。
「見くびるな小僧!この前は油断しただけだ!お前が死なないというのなら何十もの死を経験させてやろう!」
その一言で周りに控えていたホーンボタ達が臨戦態勢に入る。
「さて…俺も実験させてもらいますか。」
俺は意識を集中させた。




