第6話 経験あるのみ!
「ただ…本当に死なないのか?正直まだ、そのあたりは信じ切れないというか…。」
「まぁ、普通はそうですよね。じゃあこうしましょう!」
アレアは勢いよく立ち上がりこちらに手をかざした。その顔は依然として笑っている。
そして二人を包む空気が冷気を帯び始め、嫌な予感が脳裏を走る。
「アレア?お前一体…何をする気だ?」
「そりゃあもちろん。ハルトさんの不安をなくすんですよ!いきますよー。【天雷】!」
制止する間もなく俺の体は轟音と光と今まで体験したことがない衝撃に飲み込まれ、そこで記憶は途切れた。
俺が意識を取り戻すと、あたりはすっかり暗くなり月が空に浮かんでいた。
「気が付きましたか?どうです?お体の調子は?」
まだ朦朧とする頭を押さえながら体を起こすと周囲の異変に気付く。さっきまで森の開けたところにいたはずなのに自分を中心とした小規模のクレーターが広がり、その外側の木々は薙ぎ倒され、月明かりに照らされた部分は焦げている。この状況を見て、自分に起きたことを推測するのは容易い。
「あっ!私、女神なんで信徒が何か悪いことしたら天罰を下せるんですけど、ハルトさんにもそれを撃っちゃいました!」
「いや!その説明はやる前に言ってくれよ!」
ただ、確認すると身体どころか着ている服にもキズどころか一つも汚れが無い。どうやら死なないというのは本当のようだ。
一安心して胸を撫で下ろすとすぐさま緊張が走る。森の奥の方から獣の遠吠えのようなものがあちらこちらから聞こえてはじめた。
「ハルトさん!何とかしないとまた死にますよ?まぁまた復活はするんですけど…たぶん一生思い出したくない記憶が頭に刻まれるとは思いますが…」
この女神はなんと恐ろしいことをサラッというのか…。必死にこの場を切り抜ける方法を考える。魔法を使えばどうにかなるかもしれないが、あまりにも分からないことが多すぎて次も上手くいく保証はない。かといって…
ふと目の前のアレアではなく、その翼に目が留まる。
「なぁ…この世界に干渉はできなくても俺自体にはできるんだよな?」
「え、ええ。そうですよ?」
「なら俺を担いで近くの村へ飛んでいくとかできないのか?」
アレアは一瞬、驚いたような何とも言えない表情を浮かべ、手を叩いた。
「確かに!できますよ!」
アレアは後ろから抱きかかえるようにすると一気に飛び上がった。
二人がいたところには狼のような生き物たちが森から何匹も飛び出した後、地面を嗅いだり、周りを見渡していた。恐らく獲物が急にいなくなって困惑しているのだろう。
それにしても…
イノシシに突き上げられた時はそんな余裕は無かったが、改めて空を飛んでいるというのは夢のようだ。理想と違うのは女の子細い腕だけで抱きかかえらているので不安が付き纏っているくらいか。
「なぁ、そういえばレベルアップって言ってたけど…あれってなんなんだ?」
空に浮かぶ月をぼんやりと眺めながら質問する。
「言葉のとおりですよ。レベルアップ…つまり強くなったってことです。選ばれた選手はこの世界のシステムに合った能力に置き換わるって話はしましたよね?」
「俺がマギクロのカードを魔法として使えるようになったってやつだよな。」
「はい。それと同じで公平を期するため各代表選手は最も低い選手に合わせられます。その状態がレベル1でこちらで経験値を積めばレベルが上がり強くなるって仕組みですね。」
「その為の準備期間ってわけか。」
「そういうことです。ただ、その方が愛用する装備に関してはその限りではなく、特殊な力を持ったものの場合はそのままの力を秘めてますね。」
こりゃあまだまだ聞くことがありそうだと、俺は夜風に顔を撫でられながら空の散歩を楽しむことにした。




