第4話 世界最強の魔導師
「とりあえず聞きたいことがある。」
「はい!なんでしょう?」
「マスター…俺はどうすればいい?」
「とりあえずそこに控えててくれ。」
「了解。最近、腰がしんどくてな。」
高校生と女神と老狩人というこの先、一生見ることがない面々は森の開けたところに腰を降ろす。
とにかく聞かなくてはいけないことが多いのだが、何から話していいか分からないのと、少しずつではあるが身体が重たくなっている。
「あのお?まずはその呼び出した人を返さないと魔力切れになって動けなくなりますよ?もしそれで襲われたら私助けられませんし。」
「そういうことはもっと早く言ってくれ!どうすればいい?」
「そんなこと知りませんよー。私、あなたの世界の魔法のことなんて知らないんですから。」
天罰があるというのならこの女神に喰らわせてはくれないだろうか?もしくは悪魔がいるなら今ならすぐに契約してこいつを堕天させてくれと願うのに。
「マスター。それなら心のなかで【戻れ】と願えばいいぞ。」
愛銃の銃口を撫でながら語るその背中に惚れそうになりながら言われたとおりにすると老狩人は光に包まれ消えた。
「さて、何からお話しましょうか?」
女神は改めてこちらを見て問いかける。一旦、怒りは置いておいて冷静にならなければと言い聞かせて頭の中を整理する。
「まず…ここはどこだ?」
「ここはアルハルドを支配するうちの一国、インニティウムですよ。あっ、私はそこの守護神のアレテイアです!」
「そうか。それでアレテイア…」
「アレアでいいですよ。」
「ならアレア、俺はどうしてここにいるんだ?」
「だって、あなたはあの世界。確か地球っていいましたっけ?そこの最強の魔導師ですよね?だから呼んだのですよ?」
アレアはキョトンとした目でこちらをみている。がキョトンしたいのはこちらのほうだ。最強の魔導師?いったい何を言っているんだ。と言いかけた時に一つだけ思い当たる節があった。
マギクロにはストーリーがある。内容としては魔導士が世界を放浪して様々な人や動物やモンスターと出会い。その中で魔法を習得し、世界一の魔導師を目指すというものである。よってマギクロはそれに関連するものがカード化されており、カードの下の方にストーリーを補完するフレーバーテキストが書かれているのだが…そう、マギクロのプレイヤーは設定上、世界一を目指す魔導士ということになっている。
「いやいや、俺はただのカードプレイヤーだ!それに世界一にすらなったことはないんだぞ!?」
女神の目が益々、黒目が多くなっていく。彼女は俺の言っていることを全く理解していないようだ。しばらく黙っていたかと思うと急に取り乱し、俺の身体にすがってきた。
「すいません!!本当にすいません!!改めて確認したらあああ!私の勘違いであなたがあの世界の魔導師だと思ってえええ!」
俺の服は彼女の涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていく。
「落ち着けって。まぁ、誰にでも間違いはあるからな。それに俺も特に何か怪我とかあったわけじゃないから。な?だからもう帰してくれないか。」
すると泣きじゃくる女神がさらに涙を流しながら信じたくない言葉を放つ。
「すみません…。本当に。あなたは代表選手として登録されたので世界大会が終わるまで帰れません。」
「はぁ!?」
俺はアレアの肩を掴み、聞き返す。
「あなたは世界大会の出場選手としてここに来ることに同意されました。だからあなたは登録されたので変えることができないんですうう!本当にすいません!!」
「いや…帰れないって。」
俺は頭が真っ白になり、へたり込む。しばらく俯き、再び考えをまとめる。…そういえばさっき、あの世界で最強って言っていたような。
「なぁ、アレア。俺が地球で最強の魔導士って言ったか?」
泣きじゃくっていたアレアがヒンヒン言いながらこちらを向く。
「は、はい。私たちは自分の代表選手を選ぶ時にまず、何万という世界の中から3つを選びます。そしてそれぞれの世界で一人の選手を選ぶんですけどその時に例えば『この世界で最強の戦士』と検索をかけます。そして選ばれた人に招待状を送るんです。そして地球で最強の魔導士と検索して選ばれたのが…あなただったのです。」
「それって正確なのか?」
「はい…。間違いありません。全ての世界を創造した神が作り出した検索システムを使用しているので…。」
「そ、そうなのか。」
つまり、俺は図らずもあの時点ではマギクロの最強プレイヤーが自分だということが分かってしまった。それも創造神のお墨付きで。それなら…。
「もう泣くな。…とりあえずこの世界のこととその世界大会のことを教えてくれないか?」
アレアは顔を真っ赤にしてはいるが泣くのを辞め、笑顔でこちらを見つめるのだった。




