第32話 戦いの朝
「マスター?マスター!!」
ノックの音とかぐやの声が部屋に響く。まどろみの中、まぶたを開けると窓からは日が差し込み朝が来たことを告げている。
眠気眼をこすりながらドアを開けるとかぐやとアレアが立っていた。
「おはよう。二人ともどうした?」
「ハルトさんすいません。でもガルムンドさんが呼んでまして。」
アレアの申し訳なさそうな顔を見て昨日の出来事を思い出す。そうだ、俺は勇者と戦わなければならないこと。そしてその為の作戦を組んだことを。
「ああ、すぐに準備するよ。でもその前にかぐや…少し話さないか?」
俺の提案にかぐやは少し驚いた表情を見せたがすぐに承諾しアレアを残してドアを閉めた。そして数分してからかぐやを部屋から出してから準備を終えて部屋を出た。
宿屋を出ると別で泊まっていたエイ達とも合流しガルムンドが待つという村の外へと歩き出した。
「なぁ、アレア?」
「はい?なんでしょう?」
「ガルムンドのレベルって分かるか?」
「昨日見たところ34でしたよ?」
「ありがとう。」
俺とは29も違うのか…。
前にアレアから聞いた話しによるとレベルはMAX100でそこまでいくと全盛期と同じ力を発揮できると言う。そして最初は一番ステータスの低い人間に合わせられるという特性上、合わせられた転移者はレベルを上げれば上げただけ本来よりも強くなる。その辺でバランスを取っているのだろう。また全盛期の能力が高ければ高いほどレベルアップに必要な経験値も大きくなる。というのだから益々RPGゲームのようなシステムだ。
「全盛期の34%の英雄にただの高校生が果たして勝てるのかな?」
一抹の不安を抱えながら一行は決戦の場にたどり着くのだった。
村から少し離れた草原の一角に一人の男が仁王立ちしている。
「遅かったじゃねえか。逃げ出したと思ったぜ」
ニヤッと笑いこちらを挑発してくるがそれは自分が負けるはずがないという強者の驕りからくるものだろうし。実際そうだ。俺だって普通に考えれば勝てる相手じゃないことは明白だと思うだろう。でも…
「まぁ、そんな焦んなよ。観客だって集まってないんだからゆっくりしようぜ。」
昨日感じた通り、威圧感こそあれ、怖気づくほどではない。死なないというのも心に余裕を持たせてる要因なのかもしれないがともかく戦うこと自体は問題なそうだ。
「観客?村人達なら来ねえぞ。危ねえからってアレテイアさんが来るのを禁止したからな。」
「そうか。じゃあエイ、お前たちも離れててくれないか?巻き込まれてもいいっていうのなら構わないけど。」
三人は何かを思い出したかのように顔が一瞬青ざめたかと思うとこちらに声援を送りながら村へと戻った。これで戦いの場は整ったというところか。
「で…勝負ってどうなったら勝ちなんだ?」
足を伸ばし準備運動を始めるガルムンドに問いかけると当然といった雰囲気で返答する。
「そりゃあ相手を殺すまでだろ?だって死なねぇんだから。俺たちは。」
まぁそうなるか。できれば穏便に済ませたい部分もあったが…戦いが近づくにつれ自分自身も力を試したいという気持ちを抑えられなくなってきているのも事実だ。それなら悔いなく今できる全力で挑むとしよう。
「アレア、掛け声を頼む。」
「わかりました!」
アレアが離れ、ちょうど俺とガルムンドの間へと移動する。
「なぁ、お前の横にいるその女がお前の力なのか?」
「かぐやっていう名前ちゃんとあるんや!覚えとき!」
「悪かったよ。で…そういえばお前の名前も聞いてなかったな。倒す前に名前を聞いておこうか。」
「本宮ハルトだ。戦いが始まればすぐに俺の力が分かるから心配すんなよ。」
「なるほど…そりゃ残念だ。」
(残念?どういうことだ?)
ガルムンドが構えながら呟いたその言葉に疑問が浮かんだがその答えはすぐにわかった。
「では…はじめ!!」
アレアの掛け声が終わるかどうかというタイミングでガルムンドは一足飛びで距離を詰め、目の前でその刃を振り上げた。




