第30話 召喚の日
「もうお分かりかと思うんですが…」
アレアが気不味そうにうつむき気味に話し出す。
「彼はガルムンド・エバリエスさんというハルトさんと同じ代表選手でチームメイト。つまり異世界の英雄なのですが…」
「なんや。その言い方やと一筋縄ではいかんようやな?」
「ええ。彼はたしかに強いのは強いのですが、少々暴れん坊と言いますかなんと言いますか…。」
アレアによるとあの男はアレアが【ブレスト】という世界で選定した【最強の戦士】とのこと。ただこの世界に来てから積極的に経験値を積みレベルを上げるとただでさえ歯が立たなかったこの国の兵士では満足ができないほど強くなり、やがて好き勝手するようになったという。
「でもアレアの言う事というかなんか慕ってたような感じがしたけど?」
「落ち着かせる度に天罰で消し飛ばしていたらそのうちあんな感じになってしまって。」
俺の質問にアレアは苦笑いを浮かべる。なるほど、話からするに強い奴はちゃんと認めるっていうタイプか…。
アレアには悪いが俺が一番嫌いなタイプだ。
ただ、またいくつか疑問が生まれる。
「なぁ、レベル上げたって言ってもさ。俺が来たのは数日前だ。アレアの話では全員が転移者の中で一番ステータスが低いやつに合わされて、そこからレベル1から始めるって言ってたよな?」
「はい。間違いありません。」
「だよな。ならアイツは俺より早く来たことになる。その話はこの2、3日の話じゃないはずだ。」
「実は…。ハルトさんは少し特殊なのです。」
「特殊?」
アレアは少し考えている様子を見せた後、整理がついたのか改めて口を開いた。
「王都に着き落ち着いてから話そうと思っていたのですが、ハルトさんの召喚は少し問題があったのです。」
「へぇ。マスターなんかやらかしたんか?」
「かぐや?今はちゃんと聞こうな?」
かぐやが怒られた子供のように拗ねたような顔を見せるが今はそれどころではない。
「ご存知の通り、六国世界大戦は各国3人の異世界人がそれぞれの代表選手として戦うのですが、その召喚の儀式は大会が行われる年の新年初日、各国の神殿で神が世界を選定し召喚されるのです。そして召喚された際にこの世界の知識が付与され大会の説明を行います。なのでその時点で18人がこの世界に出揃い一番ステータスの低い転移者に全員が合わされた上でレベルシステムが始まります。」
「でも大会への参加に同意しないと来れないんじゃなかったか?」
「同意しない。または一定期間返事の無い方がいた場合は次の世界を選んで探します。そして18人決まったら召喚ということになります。ああ、時間の概念とかはこっちで調整できるので外から見てたら儀式開始からほんの数秒で終わるんですけど、実際は何日もかかってるんですよ。」
あまりにも威厳が無いから忘れがちだがやはり神。やることのスケールがデカ過ぎる。でもちょっと待て…新年って確かもう二カ月も前じゃねえか!
「おいおい、じゃあ他のやつはもう二ヶ月も前に準備始めてるってことだよな!?」
「そうなんですよお!!すいません。早く言わなきゃとは思ってたんですけど…。」
そしてアレアは涙目になりながら召喚の儀式の日についても話し始めた。
「あの日、3つの世界からそれぞれの候補者を選んだ後に召喚されたのが二人だけだったんです。慌てて探したんですけど見つからなくて。私の力を使ってもこの世界にいる私が選んだ異世界人は二人しか検知できなくて。そしたらあの日、急に三人目、ハルトさんの存在を感知して迎えに行ったのです。」
「システムの不具合とか?」
「私もそう思ったんですけど、今までそんなことはありませんでしたし。私の一存で大会を止めることも出来ずでして。」
圧倒的に不利だ。だが今さらそれを申し出ても他の国がそれを考慮してくれる可能性は低い。できるならなんらかの手をアレアが打っているはずだ。
「ハルトさん。大事なことを言い出せなくてすいません。本当に。」
アレアの目から涙がこぼれ落ちそうになっている。俺は立ち上がり、アレアのそばに寄った。
「ああ…まったくだ。ただでさえこの国の人達から期待かけられてプレッシャー感じてんのによ。でもな…、まぁアレアも大変だったんだな。結果はどうなるか分からないけどちゃんと出るから安心しろ。」
「ホントですか!!」
「ああ!でもその前に、ガルムンドに一発かましてやりてえな。」




