第28話 轟音の来訪者
この村での宴も終わった。
昨日と違ったのはアレアが俺のことを気遣って早めに切り上げてくれたので今は一人、充てがわれた部屋でゆっくりと就寝前の時間を過ごしていることくらいか。
それでもこの国の人からの期待の大きさを改めて認識したせいか眠気はあるのにベッドに横になろうと思えなかった。
「とりあえず…あれだけつくるか。」
ステータス画面からデッキ編成を選びそして新たなデッキを編成する。
カードの効果が置き換わっているのを再確認し必要なカードを入れていった。
「このカードは…まぁ使えるか。となると、万が一に備えてこっちも…」
今、編成しているのは旅用のデッキである。今使っているものは初期デッキにその時、その時必要なカードを入れ使用するというカードゲーマーがデッキと呼ぶにはお粗末なものだ。だからカードを使用して効果を把握してから編成をやろうと思っていたのだが、件のシステム編成のおかげでその計画を前倒しにすることができた。
ただ…やはり苦戦する。今回作っているのは旅に必要なカードで構成しなければならない。今日使った【魔法のカボチャの馬車】は戦闘よりも旅に必要なカードでわかりやすいが、【魔女の秘薬】はどちらでも使う場面があるカードだ。そんなグレーゾーンのカードをピックアップしていると40枚なんてあっという間に超える。
「これ…は?うーん。ああ!!もう今日は疲れた!」
あれこれ考えていると頭がショートしそうになる。よくよくだが、使っているのはマギクロのカードではあるものの効果は違うし、用途だって本来とは異なる。それに1ターンごとに相手と攻守を入れ替えるというカードゲームのルールですらない。
(たまたま運が良かっただけかも。)
椅子にもたれかかり天井を見つめ、そして目を閉じる。半分勢いに任せてこんなところまで来たものの、自分はただの高校生。国の期待を背負うには心許ない肩書である。村人達は激励の言葉を思い出してしまい、それが自分の置かれている立場を明確にさせる。
フィクションの世界だと思っていたことが現実に起こり、そしてなまじ強力な力を手に入れ、そして勇者と持ち上げられて嫌な気分はしなかったしむしろ舞い上がっていた。
でも…この国の人達からすると俺は希望の象徴だということ。もし負けてしまったら、失う者が無い俺と違ってアレアはまた悲しむだろうし国中は失望する。それを想像すると不安と恐怖が襲ってくる。
唯一の救いは自分一人にその重責がのしかかってこないことか…。
「そういえば…他の転移者のこと聞くの忘れてたな。明日にでも聞くか…。」
他の転移者のことを知れば少しは不安も落ち着くかもしれない。それに乗りかかった船だ。まだ少なくとも心は折れてはいない。
…さしづめ勇者ブルーってやつかもしれない。
それは気を取り直してまたカードとにらめっこをして始めようとした時だった。
“ドン!!”
大きな音と共に部屋全体が揺れるほどの衝撃が外から伝わった。
地震かと思ったがそれにしては揺れが短い。
窓から外の様子を見ると松明に照らされた道の上、衝撃によって凹んだと思われるその中心に一人の男がそこに立っていた。
短い金髪、肌は浅黒く長身で細身ながら前が開いた毛皮でできたようなベストから見える肉体は鍛え上げられているのがここからでもわかる。そして特徴的なのが薙刀…いや、昔やった三国志のゲームで見たな…たしか【えんげつとう】っていう名前だったかな?
俺が観察していると辺りを伺っていたその男は急にこちらに視線を向けた。
思わず屈んで身を隠すと先ほどと同じくらい大きな声が村中に響いた。
「おおおい!!隠れてんじゃねぇよ!!お前だろ!?三人目ってよお!!」




