第27話 俺達の女神様
「おお!これは便利だ!!情けは人の為ならず!人助けはするもんだな!」
「なんや?そんな喜んで?」
「ハルトさん?なにか良いことでも?」
「旦那、急に大きな声出さねぇでくださいよ。また変なのが出たのかと思いましたぜ?」
前を歩いていた面々が振り返る。そりゃあ大きな声も出してしまうというものだ。なんたってこれでわざわざ使わなくても効果がわかるし、前もって分かると言うことはデッキを組むのも便利になる。それにしてもシステム更新なんて、本当にゲームみたいだな。
「ああ、ごめんごめん。なあ、村まであとどれくらいかかりそうなんだ?」
「もうすぐそこですよ。ほら、見えてきました!」
アレアの指さす方向に薄っすらと家屋が見えてきた。村ということもあり、アリストと違って壁というより木の柵で周りを囲んでいるようだ。
そして村につくとアリストと同じく村人と村長にアレアの神性をこれでもかと見せつけ、歓迎を受けることとなった。
「ようこそおいでくださいました。まさかアレテイア様と勇者の御一行様がこの村を訪れてきてくれるとは。村を代表して挨拶させてもらいますぞ。」
「いえいえ、こちらこそ事前に連絡も入れずに来たのにここまでしていただけるなんて嬉しいです。」
「何をおっしゃいますか!?あなたはこの国の代表なのですから!これくらいはさせてください。」
どの村でも街でもこの待遇…。段々とプレッシャーを感じてきたのだが、本当に期待に応えられるのか心配になってきた。
でも、思えばずっと負けっぱなしだというのにどうしてこうも期待してくれるのだろう?普通なら今回も駄目かもしれないと諦めている人間がいても不思議ではないのに。
「ハルトさん?どうされました?」
「いや…。そうだな…。ってあれ?かぐやは?それにエイ達も…。」
「みなさんならほら!あそこに!」
その言葉に促された先を見るとすでに四人は酒に手を伸ばし、用意されたご馳走を口に運んでいる。遠慮というのはないのだろうか。
俺が呆れていると村人達に手を引かれ俺も宴会の席についた。
しばらく飲み食いし、村人と世間話をした後に先程の疑問を口にした。
「俺がこんなこと聞いちゃ駄目なのかもしれないけど。どうしてみんなは俺に期待してくれるんだ?ずっと負けっぱなしなんだろ?」
するとすぐ横で飲んでいた髭面の男が笑いながら答える。
「そりゃあアレテイア様が選んだ勇者だからな!俺達は応援するしかねぇだろ!なぁ!?」
「おう!」と男の問いにその周りの村人も肯定の声を上げる。
「ん?納得してないって顔だな。仕方ないか。まぁ…なんというか、俺達の女神様は本当に優しい方なんだ。」
「それは…なんとなくだけどわかるよ。」
「アレテイア様は週に一度は必ずこの国にある街や村を回って困ったことはないかと聞いてくださる。そして問題があったら一生懸命考えて解決に動いてくれるんだよ。」
「でもそれって神様ならすぐに解決するんじゃ?」
「アレテイア様は不器用なんだ。だから迷うし、俺達に意見も聞いてくる。そして最善の手を考えてくれるんだ。その答えに今まで一度も間違いはなかった。」
そして男は手に持った木のジョッキに入った酒を一気に飲み込む。
「どこまでも不器用で、優しくて一生懸命な女神様なんだ。確かに負けっぱなしだし、大会の直後なんて他の国の人間からバカにされることもあるさ!だがなぁ!俺達はアレテイア様こそ至高の神だと信じるんだ!だから…勇者様!今回こそアレテイア様に勝利の美酒ってやつを呑ませてやってくれ!」
そして男は俺の肩を抱え込み、ジョッキに酒を入れ、飲み干す。他の村人たちも大きな拍手を送り、そこから様々な激励の言葉をかけられた。
今更だが…これは大きな仕事を引き受けてしまったようだ。




