第25話 張られた策略
森を抜けてからしばらくすると馬車が段々と透明になり始めた。時計がないのではっきりとは分からないが恐らく馬車の魔法が切れる頃なのだろう。。
「みんな、悪いけどそろそろ時間みたいだ。アレア止まってくれ。」
アレアが手綱を引くと馬車はゆっくりと止まり、間もなく馬車は跡形もなく消え去った。
「これも、魔法なのですか?異世界には本当に不思議な魔法があるのですね。」
スレーは不思議そうな顔で馬車のあったあたりを眺めている。俺のは少し事情が異なるのだが…。
ただ、他に転移者がいるということも実感できた。知識としては知ってはいるものの、こうやって他の異世界人の痕跡を見せられると否が応でも存在を感じるというものだ。
「ハルトさん。ここからどうしましょうか?」
「そうだな。まあ、歩いていくしかねえだろ。」
俺とアレアが今後の方針を話し合っているとホロが父親と同じように不思議そうな顔でアレアを見ている。正確には俺の目線の先を見ていた。
「お兄ちゃん。誰とお話しているの?お化け?」
そうか。この国の人間じゃないということはアレアの事が見えてないのか。
どうしたものかと考えているとアレアが微笑みを返す。
「ハルトさん。説明してもかまいませんよ。代表選手だってバレてますし、それに神の仕組みはみんな知ってることなので。」
俺は頷き、屈んでホロの方を見る。
「そこにいるのはアレテイアっていうこの国の女神様がいるんだ。最初に二人を助けに行ったのもこの人?…神様なんだよ。」
「まぁ、わたしは何もできませんでしたけどね。」
アレアが自虐気味に苦笑いする。
「女神様!僕たちを助けに来てくれてありがとうございます!」
アレアの声も姿も見えていないのだろう。視線は微妙にズレていたが、ホロの声はまっすぐアレアの心に届いたようで満面の笑みを見せている。
「かまいませんよ!だって私は神様なんですからたとえ国が違えど人を助けるのは当たり前です!」
「ねぇ。女神様はなんて?」
「どういたしましてって言ってるよ。」
それを聞いてホロも笑顔になる。
人助けも悪くはないな。と清々しい気持ちになった。
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「まさか。本当に他の国の勇者と出会うとは…。それも能力まで見せてくれるとはな。」
とある城の一室。白を基調とした調度品に囲まれた部屋の中央に置かれた一対のテーブルと椅子。そこに同じく白い神官のような服装を身に纏った壮年の男が目をゆっくりと開く。
部屋には陽が差し、開けた窓からは穏やかな風が入る。
男はテーブルの上のカップを手に取り口に運んだ。
「やはり、打てる手は全て打つのが定石だな。」
静かにカップを置き、思考を巡らせる。
あの、手に持った札はなんなのか?
あれが魔法の媒介なのか?
水源の無いところで水の刃を放っていたがどういう仕組みなのか?
そしてあの馬車もあの転移者の魔法のようだ…。
ふぅ…と息を吐く。そして立ち上がり窓際へと移動し外の空気を吸う。
「悪く思わないでくれよ。異世界の魔法使いよ。」
彼はビフレストの代表選手。とある世界ではたった100人で祖国を一万の敵国の軍勢の侵攻から守った救国の英雄にして魔道士にして軍略家。
彼は通常秘匿しておくべき自分の魔法を他国へ行く可能性の高い職業の人間に守りの魔法をかけた護符を持たせた。そしてその護符が発動すると自動的にその護符を持つ人間の目を通して視覚情報を得るという魔法もつけていたのだった。
常に視覚情報を得る魔法を発動させていれば自分の魔法が露見する可能性がある。そのため発動の条件をつけた上で、発動時間は30分間のみとしていた。
そこまでしても情報を得られる可能性は低いと思っていたが、これは彼の勝利ということで良いのではないだろうか。
「大会までまだ時間はある。ゆっくりとあの魔法についての推測を立てておくとしようか。」
救国の英雄。レブン・ヴァーミリオンは痛む腰を押さえながらまた椅子に座るのだった。




