第24話 二人の親子
「アレア!出せ!!」
「はい!!」
6人が転がるように馬車へと乗り込むと同時にアレアは手綱を叩き、二頭の馬はいななき、走り始める。
「はぁ、はぁ…なんとかなったな。」
「旦那…そろそろどいてやくれませんか?」
エイに謝りながら起き上がり、外を確かめる。ゴブリン達が次から次へと道へ出てこちらに向かって何かを叫んでいるが、あっという間に見えなくなる。
「マスター。安心してる場合とちゃうよ?」
かぐやの声にハッとして中の方を見ると傷付いた男が苦しそうにうめき声を上げている。
「父ちゃん!しっかりして!父ちゃん!」
男の子が必死に声をかけ、それに答えるように男の子の手を強く握る。
「待ってろ!…えっと。これだ!」
カード一覧から一枚をデッキに入れ、ステータス画面を閉じる。
「【魔女の秘薬】!」
手のひらに魔法陣が現れ、小さな赤い液体の入った小瓶が現れる。
「効いてくれよ。…さぁ、これを飲んでくれ。」
瓶を口元に持っていき、ゆっくりと流し込む。すると男の体が一瞬光り、傷が癒えていく。
「う…うう…ん?あれ?痛みが?」
男は驚いきながら起き上がり、体を確かめる。そこへ男の子が抱きつき、大声を上げて泣きはじめた。
「よかった…よかったよおおお。」
「すまないな。ホロ。そして、皆さんありがとうございます。本当にありがとうございます。」
俺とかぐや、それにエイ達もホッと胸を撫で下ろし座席へと腰を下ろした。アレアも安堵の声をかけているようだが、風の音でかき消されていた。
「私の名前はスレー。そしてこの子はホロといいます。本当にご迷惑をおかけしました。なんと感謝すれば良いか…。」
少し落ち着き、二人から話を聞くことにした。
「スレーさん。あんなところで一体何を?」
「お恥ずかしい話ですが、私はビフレストの商人でして。ちょうど国に帰るためにこの森を抜けてたんですが、珍しい薬草を見つけまして。それでどんどん奥へと入ってしまいそこでゴブリンに襲われまして…。」
ビフレストって言えばこの国の東にある国か。そういえばあの時周りに散らばっていたのは商売道具というわけか。
「ええんか?荷物全部置いて来てしもうたけど。」
かぐやが少し心配そうに声をかける。するとスレーは慌てて顔を振り返答する。
「いえいえ!命が助かっただけ充分です!それにあれは売れ残った商品なので国に戻ればまた手に入りますし、売上金はちゃんとここに。」
スレーはそう言って腰にぶら下げた皮の袋を見せた。外から見てもかなり入っているのが分かるほど膨らんでいる。…これは少しは期待してもいいのだろうか?
「まぁ、その通りだな。あの辺のゴブリンに襲われて生きてるだけでも儲けもんだ。でもよくそれくらいで済んだな。」
エイが不思議そうに二人を眺めている。
「それはこれのおかげですね。」
スレーは胸元から所々が焦げた御札のようなものを出す。
「襲われた時にこれを使ったんです。これは私の国の勇者様が旅で危険に晒された時に使いなさいと渡してくれたものでして。これを使ったらよくわかりませんがゴブリンたちが逃げ出しましてね。その間に誰かに見つけてもらえるように残った体力で焚き火を使ったんですけど…今考えるとゴブリン達も引き寄せかねない危険な行為でしたね。」
これは…俺が知っていい話なのか?勇者ってことは俺と戦うかもしれない奴ってことだろ?
「構いませんよ。勇者様にも他の勇者の前で使っても問題ないって言ってましたから。」
俺が難しい顔をしているのを察してスレーが補足を入れる。
まぁ、他国で使うこと前提ならそうか…。
ん?他の勇者の前で?
「スレーさん。俺が勇者ってことをどうして?」
「そりゃあわかりますよ。返事はできませんでしたが、助けてくれた時から意識ははっきりしてましたので。その時見た魔法はこの世界では見たこともないものだったので多分と…。」
迂闊だった…。でも緊急事態だったわけだし。しかも俺の見せたのはガッツリ、カードを魔法として使ったところだったし…
「心配しないでください。このことは言いません。命の恩人なんですから。それに見てましたけど何をしてるかまではよくわかりませんでしたし。」
まさか助けた側のこちら側が感謝することになろうとは。俺もまだまだである。




