第23話 ゴブリンの群れ
雑草をかき分け、光のもとに向かうと近づくにつれ、その光の正体が炎であると確信する。ただ、不思議なことにその炎は燃え広がるようなことはなくその場で燃え続けている。
そしてその炎の元にたどり着いた時、理由がわかった。そこは少しだけ空き地になっており炎は焚き火であった。その焚き火の横には男の子が男性を抱えて泣きじゃくっていた。
「大丈夫ですか!?」
アレアが駆け寄り二人に声をかけるが男は小さなうめき声をあげ、男の子は心配そうに男の方を見ている。
「ここでなんかあったんか?もう心配せんでええで。」
かぐやが男の子の横にしゃがみこみ、頭を撫でる。すると男の子はかぐやの方を見て必死に訴えかける。
「父さんを助けて!早くしないとまたあいつらが帰ってくる!」
「あいつら?」
俺が疑問を口にすると同時に聞いたこともない鳴き声が森に響く。
“ギィギィギィギィ”
一匹や二匹ではない。周りを囲むように何十もの重なった鳴き声が5人を覆う。
「ハルトさん…。おそらくゴブリンかと思われます。」
ゴブリンか…ファンタジーではお馴染みのモンスター。まさかこんなタイミングで遭遇するとは。俺の頭の中からゴブリンの知識を思い起こす。
ゴブリンはせいぜい身長が1m程度の小型のモンスターで戦闘能力自体も特別高くはない低級魔獣ではあるが厄介なのは常に群れで行動するという点だ。
「とりあえず逃げるぞ。アレアはこの二人を馬車まで運んでくれ。ゴブリンなら俺とかぐやでどうにか対処する。」
「わかりました!」
アレアが男の子に触れようとした瞬間、その手は身体をすり抜けた。
「え?」
アレアが思わず声を漏らす。
「兄ちゃん達はさっきから一体誰と話してるの!?早く逃げよう!」
まさか…この子にはアレアが見えてない?どういうことだ?
混乱する頭を落ち着かせようとするがゴブリンの声はだんだんと近づいてくる。
「ハルトさん!たぶんこの二人はこの国の人間じゃありません!だから私を認識できないんだと思います!」
俺の様子を察してアレアが叫んだ。その声で頭の整理がつく。そうだ、アレアを知覚し、干渉することができるのは自分の国の信者だけだ。ということはアレアの力は頼れない状況ということだ。
二人の様子を見てみると、近くに大きな荷物がいくつか散乱している。
「マズイな…。」
額に嫌な汗が流れる。すると後方の草むらから三匹のゴブリンが粗末な石のハンマーを振り上げながら親子に向かって飛び出してきた。
「うわああ!!」
男の子が悲鳴を上げ、そのハンマーが届きそうなその瞬間、ゴブリン達は強い衝撃を受け、草むらの向こうへと飛ばされる。
「こら!男の子がそんなに泣いたらあかんよ?お姉ちゃんが助けるからシャキッとし!」
かぐやは見事な回し蹴りでゴブリンを三匹まとめてはじき飛ばした。かぐやを召喚しっ放しにしていたのが功を奏した。そして草むらのさらに奥、馬車のある方角からゴブリンたちの断末魔が聞こえてきた。
「な、なんだ!?またなんか来るのか!?」
すると聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「おっ?いたいた!旦那!こいつら一体何なんですか?おーい!ヤー!トオ!こっちいたぞー!」
「エイ!助かっ…っておおお!!?」
草むらから姿を現したエイの身体は赤く染まり、手に持ったナイフからは血と思わしきものが滴っている。続いて現れた二人も同様であった。
もし、三人に初めて出会っ時にこの状態ならすぐに身ぐるみを置いて逃げていただろう。
「旦那…そんな驚かなくても。俺たちにしたことのほうがもっと酷かったですぜ?」
エイ達が呆れ顔で俺を見る。だが助かった。俺は振り返り、親子を守ってゴブリン相手に大立ち回りをしているかぐやに向かって叫んだ。
「かぐや!ここから逃げるぞ!エイとトオはあの親子を担いでくれ!ヤーとかぐやは二人を守れ!アレアは馬車に着いたらすぐに出発できるようにしてくれ!」
それぞれに指示を飛ばしカードを一枚手にする。
「道を作るぞ!【アクアカッター】」
魔法陣から水でできた刃が前方の木々や雑草をなぎ倒し馬車で一本道が出来上がった。一同は馬車めがけて駆け出した。




