第22話 カボチャの馬車
アリストを出て次の目的地であるバーレイリンという村までだいたい歩いて5時間ほどである。昨日は色々あったせいか寝ても疲れが抜けきっていないかと思いきや案外体は軽かった。これも異世界転生者の特権というやつか?アレアも涼しい顔をしているし、かぐやは鼻歌交じりに俺たちを先導している。村までは一本道ということもあり、迷うこともないだろう。
問題はエイ達であった。
「気持ち悪いよ〜アニキぃ」
「俺も身体が重いよ。」
「二人ともしっかりしねぇか!…うっぷ。」
これが普通の反応なのだろう。休んでから行ってやりたかったが道の途中には森があって魔獣が夜になると大量に出没するという。
アレアがいるとは言え、かぐやの力が未知数な上、まだ完全に自分の力を把握しきれていない現状、エイ達まで守れる確信は無い。できれば日中に抜けてしまいたいところだった。
「ハルトさん。3人ともかなり辛そうですよ。」
「ああ、このペースじゃあ森の中で夜を迎えちまうな。…仕方ない。試してみるか。」
ステータス画面を開き、使用デッキのうちカードを1枚、昨日手に入れたカードと入れ替え、すぐに使用する。
「【カボチャの馬車】!」
■魔法のカボチャの馬車
アンコモン
スペルカード 消費MP15
『攻撃力3以下のサモンカードをデッキから選んで手札に加える。』
そしていつもの効果の変化が起きる。
『魔法のカボチャの馬車を1時間、使用することができる。』
地面に魔法陣が現れ、光、その中から絵本でよく見るような白い2頭の馬が引くかぼちゃの馬車が現れた。
「よかった。予想通りの効果みたいだな。」
「なんやなんや!?おお!変わった馬車やなあ!」
かぐやが目を輝かせて飛び乗る。
それに続いてエイ達を乗せ、アレアと俺が乗り込んだ。
「思ったより広いんですね!」
「そうだな。さすが魔法の馬車。」
アレアも嬉しそうに馬車の乗り心地を確かめる。一方エイ達は三人で身を寄せ合っている。このあとの揺れとか大丈夫だろうかと心配するが手持ちの乗り物が出そうなのがこれしかないから仕方がない。
エイ達三人の向かいに俺とアレア、かぐやが座り、いよいよ出発……しなかった。
「なんや…走り出せへんやん。どうしたん?」
かぐやの言葉で嫌な予感がする。
まさか…御者がいるのか!?魔法のカボチャの馬車なのに!?
いや…そういえばシンデレラでもネズミが魔法で御者になって…
「しまった!!」
「どないしたん?大きな声出して?」
かぐやが驚いてこっちを見る。
「御者…馬を操れる人間がいるんだよ。」
「それならわたしできますよ?」
「え?」
俺とかぐやの間にいたアレアが手を上げこちらを見ている。こうなったらアレアに頼むしかなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それいけー!!」
アレアの声と共に周りの景色が飛んで行くように移り変わる。
さすが魔法の馬車だ。想像していた速度よりも何倍も速く、そして全く揺れない。
エイ達も出発する前は体調が悪いのと揺れの不安で青い顔をしていたが、今は穏やかに眠っている。
かぐやも窓にしがみついて子供のようにはしゃいでいた。
そしてあっという間に森に入り、駆け抜けていく。このままなら馬車の使用可能時間内に森を抜けれそうだ。
ふと窓から森のほうを眺めると遠くのほうで一瞬、光るものが見えた気がした。
気のせいかと思い、目を凝らしてみるとやっぱり森の奥、道から外れたところで赤い光が見えた。
「アレア!止まってくれ!」
「は、はい!」
アレアが手綱を握ると急ブレーキがかかり、馬車は止まった。しかし慣性がかかった気配もなく馬車内は穏やかであった。
「ん?あれって火ちゃうか?」
かぐやもこちら側の窓に移動し光を確認する。彼女の言うとおり火だとしたら放っておけば森が火事になるかもしれない。それと同じ心配をしたのがアレアだった。
「すいません!ちょっと確認してきます!」
言葉を発すると同時に手綱から手を離し、森の中ということもあって翼を広げることができないため馬から降り駆け出した。それを追うように俺とかぐやも馬車から降り、後を追った。




