第21話 慌ただしい朝
「じゃあマスター。そろそろ寝かせてもらうわ。」
そう言ってかぐやはベッドに横たわった。
「え?寝るのか?」
「当たり前やん。さっきも言ったやろ?【体力が無くなったら】消えるって。それともマスターはうちに戻ってほしいんか?」
「て言う事はつまりご飯も食べないといけないのか?」
「それはそうや。食べやんかったら生き物って死んでしまうんやで?」
確かに言われてみればそうか。何となく召喚されたキャラクターは魔力で出来た身体で…とか都合よく落とし込んでいたが、実際はちゃんと意志を持った生物として召喚されているようだ。
「ちなみに…体力が無くなるとどうなるんだ?そのまま消えちまうとか?」
「それなら大丈夫や。でもカードによって復活するまで時間はかかるよ?わたしの場合はまぁ…10日くらいやな。」
これは結構大事な情報だ。まだまだ俺自身の力で知らないことが多すぎる。王都に着くまでにやることがまた一つ増えたようだ。
「なぁ?そろそろ寝てもええか?それともマスターも一緒に寝たいんか?」
その一言で俺の思考は止まり、さっきまでとは違う思春期の男子高校生としての思考がフル回転し始めた。
「冗談や。冗談。マスターも初心なんやな。でもまだあかんよ?ちゃんと好きな人の為にとっとき。じゃあマスターは他に空いてる部屋探して早く寝なあよ。ほら、アレアちゃんはこっちに。じゃあマスター。おやすみ。」
反論する間もなく俺は自分の部屋を追い出された。仕方がないのでトボトボと一階の食堂へと戻ると飲み比べをしていたグループも店主もその場で眠りこんでいる。なんだかやるせない気持ちを抱えながら俺は空いていたベンチに横になり目を閉じた。
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「ハ…だん……だ…な」
誰かの声が聞こえる。
「ハルトの旦那!起きてくださいよ!」
まだ意識がはっきりしない中、視界に入ったのは髭面の男のドアップであった。
「う、うわあああ!!…ってエイか。」
「エイか。じゃないですよ!誰ですかあの人は!?」
エイが指さす方向を見ると木のジョッキを片手にもう片方にはアレアの肩に手を回す美女が目に映った。その周りには人だかりもできている。
「お?マスター、おはよう。しっかり寝れた?」
状況がつかめないので今一度記憶をたどり、その美女が昨日、自分が召喚したかぐやであると思い出した。
「俺たちも起きたらあの姉さんがアレアさんと一緒にあそこでで呑んでて、何者だって聞いてもマスターに聞いてくれの一点張りで。まぁアレアさんも味方だからとは言ってたんですけど…本当ですかい?」
「まぁ、そうだな。うん。間違っちゃいない。」
一旦、頭を抱えたあと立ち上がりかぐやの元へ向かう。
「これは…どういうことかな?かぐやさん?」
「朝起きて、アレアちゃんと朝ごはんでも食べようかな思て、下に降りてきたらえらいみんや楽しんでたんやなあって感じやったから残ってたお酒飲んでマスターが起きるん待ってたんよ。」
「ハルトさん…なんかすいません。勢いがすごくて。」
「アレアは悪くないよ。うん。」
実際、迷惑をかけているわけでもないし、なんだったら街の人とも女神や勇者である俺達よりも打ち解けている。これまでカードは戦闘で使うことを考えていたが、それ以外の場面でも活躍するかもしれない。
「じゃあマスターも起きたし片付けよか!みんな!手分けしてやるで!!」
「おう!」
かぐやの奴、昨日は召喚されただけなんて言ってたけどなにかの能力でも使ってるんじゃないかと疑うほど仲良くなっている。…いや仲良くなっているというか慕われているんじゃないかと思うほど、街人たちは手際よく店内の片付けをし、ものの30分ほどですぐに開店できるほどに綺麗にしてしまった。
「じゃあ俺たちも仕事があるんで!また遊びに来てくださいね!かぐやさん!それにアレテイア様たちも!」
寝ていた間に彼らのなかでの俺の序列が勇者から落ちたものだ。
「また一緒に呑もうなー!じゃあみんな行こうか。」
かぐやに先導されながら俺たちはアリストの街を出発するのだった。




