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第2話 ようこそ異世界へ!

(何が起こったんだ…?)


木々のざわめき

どこまで青い空

そして目の前にはバカデカいイノシシ…


落ち着け…俺は確か…


俺が覚えているのはマギクロの大会で優勝したこととホテルでゆっくりと勝利の余韻に浸っていたこと、そして世界大会への招待カードにサインをしたことだけだ。

そして気付けばよくわからない状態になっている。


ああ…俺、疲れてるんだわ。

試合で頭使ったからなぁ。

こういうのなんて言うんだっけか?

脳疲労?いや、多分…そうだ!寝ちゃったんだ。それで…ああ、これが明晰夢ってやつか。夢の中で夢だって認識できるやつだこれ。


「それにしても夢の中とはいえこんなデカいイノシシなんて出てくるなよな。」


俺はゆっくりと近づき触れる。…触れる?

夢ってこんなにリアルなものなのか?

すごいワサワサしてるわぁ。毛も硬いし。俺の夢すごいな。まるで現実みたいだ。


「イノシシにしては牙は四本生えてるし、オデコから角は生えてるし。目も赤いなぁ。」


イノシシに触れながら夢であるはずなのに何故か背中に冷たいものが流れる。まるで生き物の本能が身体中から危険信号を発してるように感じた。


「夢…だよな?だって…な?」


物言わず、こちらをじっと見つめるイノシシに向かって問いかけるが、答えはもちろん返ってこない。ただ、無言の圧力がより一層俺の体の生存本能を敏感にさせる。俺は耐えきれず、その赤い目を見つめながら一歩また一歩と後退りする。


「とりあえず一回、目を覚まそう。」


心で眠りから覚めるように念じるが一向に起きる気配はない。それどころか風の感触や土の匂いがこれが現実であると突きつけるようだった。


「小僧。お前はここで何をしている?」


唐突な質問。周りをみるが人らしき影はない。いるのは殺意マシマシの見た目をしたイノシシだけである。


「だ、誰だ!?」


焦りながら声の主を探すが姿を見つけることはできない。


「お前の目の前だ。小僧。」


ドスの効いた低い声が再び、俺の耳に届いた。目の前と言えば居るのはやはりあの…


「そうだ。俺だ。小僧。」


間違いなかった。喋っているのはこいつだ。喋るイノシシ。ますます現実離れしていく。


「えっと。もしかしてイノシシさん?あなたですか?」


「イノシシ?俺はこの一帯の森を仕切るホーンボアのボス、グアネだ。なんだそのイノシシというのは。」


ホーンボア?森?

おいおい…俺は東京のシーサイドアリーナホテルにいたはずだぜ?

夢の設定にしては俺の頭は細かくし過ぎだろう?仕方がない、付き合ってやろう。


「グアネさん。俺は、その、ホテルで…」


「ああ…なるほど。お前、召喚された代表選手ということか。」


代表選手…こいつ、今、代表選手って言ったか?それに召喚?…いやいや…まさか。

俺は否定して欲しい気持ちを言葉に乗せてグアネに問いかけた。


「すいません。代表選手ってまさかフィリオス世界大会のことじゃあないですよね?それに…召喚ってねぇ?」


するとグアネは表情は変わらないが驚いたような様子で答えた。


「お前?自分の置かれている状況が分かっていないのか?お前を選んだ神から説明を受けたはずだろう?」


神?…ああ、最近異世界物のアニメばっかり見てたからそんな設定の夢を見ているのかな?…そうだよな?でも全然目が覚めてくれない。

俺が焦っているとグアネの口角が上がった。


「ハハハッ…お前っ。そうかそうか。この国の神はそうだった。あの底辺の神だったな!なら…」


グアネはゆっくりと身体を曲げる。まるで力を溜め込むように。そして前脚の片方で地面を何度も蹴る。それはイノシシが突進を仕掛ける前触れとしてはあまりにも分かりやすい仕草であると同時に、命の危険が迫っていることを示すのに十分であった。


「転移者よ。俺の糧となってもらおうか。」


その言葉が耳に届くより早く、俺の身体は宙に待っていたのだった。

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