第16話 宴のあとに
「あっ。起こしちゃいましたか?」
目を開けるとそこには金髪の美少女、もとい女神がこちらに微笑みを向ける。ただ、やはり神だからだろうか。こんな美少女に膝枕されているのにも関わらず下心のようなものは湧き上がってこない。これが神性というものなのか。
「いや。…ていうかひどい有様だな。」
起き上がり周りを見渡すと人と人が折り重なり眠り、食堂は散らかり放題である。
「まぁお祭りの主役が来たらこうなりますよ。本番なんてもっと盛り上がりますよ。」
俺の世界で言うオリンピックとかワープドカップみたいなもんかと納得する。
起きているのは俺とアレア、そして奥の方で飲み比べをしている酒豪たちとキッチンで夜食を食べている店主くらいか。
「この世界は本当に平和なんだな。」
「そうですね。平和といえば平和ですね。」
「含みのある言い方だな。」
アレアの方を見ると少し複雑そうな顔をしている。
「他の世界のように戦争もありませんし、脅威になるような魔王のような存在もいません。ですが、あの三人のように貧困で困ってる人達も存在します。」
それは仕方ないと言いかけたがとっさにその言葉を飲む。
それは俺がそちら側の人間ではないからだ。
向こうの世界でもこっちの世界でも人並みの苦労はしたかもしれないが、自分ではどうしょうもないという境遇で生きているわけではない。
どちらかというと何不自由なく暮らしてはいる。だからこそその言葉は言っていけないと思った。
「アレアは優しいんだな。」
「神ですからね。それに人だけでなく、私の国にいる全ての生命が幸せにしたいと思ってますよ。」
「強欲だな。でも…それも神らしいよ。」
思わず二人とも笑みが溢れる。
俺は一番近いテーブルにあったカップを二つ取りそこに水を入れ、一つをアレアに渡した。
「まぁ、やれるだけのことはやるよ。これだけ応援されてるんだからな。」
「頼みましたよ。ハルトさん。」
二人はカップを軽く当てて飲み干した。そして一つの質問をぶつけた。
「なぁ、変な事聞くけど答えたくなかったら答えなくていいからな。」
「あっ。はい!でもなんです?」
軽く息を呑み、聞く。
「グアネがアレアのことを底辺の神って言ってたけど。どういうことだ?」
アレアは一瞬困ったような顔をして苦笑いを浮かべながら答えた。
「まぁ、多分ずっと負け続けてるからじゃないですか?」
「まぁ、10回も連続で負けてたらそう言われるか。」
アレアの様子を見るに多分他にも理由はありそうだが自分から言い出さないのだからこれ以上の詮索はやめるとしよう。俺にも聞かれても言いづらいことはあるのだから。
話題を変えるためにステータス画面をアレアにも見える表示する。
「エイ達のおかげでとりあえずレベル5まで上がったな。MPの上限も200まで上がってるぜ。」
「3人には悪いことをした気がしますけど、人が一番レベル上げには有効ですからね。」
今、思い起こすとよくこの三人はメンタルが持ったなと感心する。王都に着いたらできるだけ良い仕事に着けるように頼んでみるかと三人の寝顔を見ながら誓った。
「あとは持ってるカードがもう少し種類が増えればなぁ……あっ!」
「どうしたんてすか?」
ここまで色々ありすぎて忘れていたが、ステータス画面のあるコマンドを見て大事なことを思い出した。
「パック開封…これできるよな?」
エイ達からもらった袋を取り出してみる。ちなみにこれは誰かから盗ったものかと確認したらこれは三人で故郷の村を出たときに持ってきたものだと言っていた。
「金貨と銀貨…合わせて1万エーギルですね。」
「一回500だから20パックは引ける!早速引いてみるか!」
俺がパック開封を押そうとするとその手をアレアは止めた。
「ハルトさん!ここじゃ誰に見られてるか分かりませんからとりあえず部屋で開けましょう。」
「ああ、そうだな。わかった。」
二人は立ち上がり、夜食を食べ終わってコーヒーを飲んでいた店主から鍵を貰い、部屋へと移動した。
代表選手の使う力が他にバレれば対策されてしまう。せめて大会が始まるまでは隠し通さなければならない。
部屋に入るとこの街一番というだけあり、広い部屋に大きなベッドと机、そしてソファが置かれていた。そこへ腰をおろし改めてステータス画面を出し、例のコマンドを実行することにした。




