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王を譲ったので、正体を隠して国を旅します!  作者:


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6/7

森を守るために

「若き戦士って何だ?」


ティヒカイトが不思議そうに尋ねる。


「昔、この森で迷ってしまってなぁ」


「ほう」


「その時、エルフに助けてもらったのじゃ」


「面識があるってことか?」


「まあ、そういうことじゃ」


イデアールは懐かしそうに森の奥を眺める。


「かなり昔の話じゃがな」


その時だった。


ガサッ……ガサッ……


木々の間から、一人のエルフが姿を現した。


「お主か……」


エルフはイデアールの顔をじっと見る。


「随分と老けたな」


「数十年前の話じゃからな」


イデアールは笑う。


「お主は、変わらんのう」


「エルフだからな」


エルフはティヒカイトとシュングへ視線を向ける。


「この者たちは?」


「旅の仲間じゃ」


「何しに来た?」


「村の者と揉めていると聞いてなぁ」


エルフの表情が険しくなる。


「……森が弱っているのだ」


「ふむ」


「人間共は木を切る。森を壊している」


イデアールはしばらく黙って森を見渡した。


「原因は、木を大切にしすぎておるからじゃ」


「な!?」


エルフが声を荒らげる。


「そんな馬鹿な!」


「わしが嘘をつく理由があるか?」


「……」


「何の徳もないじゃろ」


エルフは黙り込む。

イデアールは地面に落ちている小さな苗木を指差した。


「見てみい」


「……」


「大木が多すぎて、日が地面まで届いておらぬ」


「若木が育たない」


シュングが呟く。


「そうじゃ」


イデアールは頷く。


「森は古い木だけで出来ているのではない。古い木が倒れ、新しい木が育つ。それを繰り返して森は生き続ける」


「だが……木を切れば森が減るではないか」


「必要以上に切ればな」


イデアールは一本の大木を見上げる。


「しかし、育ちすぎた木を適度に間引けば、残った木にも光が届く。地面にも光が入り、若木が育つ」


「……」


「森を守るというのは、一本も木を切らないことではない」


イデアールは静かに続ける。


「森を次の世代へ残すことじゃ」


エルフは黙って森を見渡した。


「では……どうすればいい?」


「間引いた木を村人へ売ればよい」


「売る?」


「そうじゃ」


「人間に木を渡すのか?」


「ただ渡すのではない。森の再生に必要な分だけ伐り、その木を薪や建材として村へ売る」


イデアールは指を立てる。


「村には木材が手に入る」


もう一本、指を立てる。


「エルフには収入が入る」


さらに森を指差す。


「そして森には光が入り、若木が育つ」


「……」


「誰も損をせぬ」


ティヒカイトが感心したように呟く。


「なるほどな」


シュングも頷く。


「森を守りながら、人間とも共存できるんですね」


エルフはしばらく考えていた。


「……本当に、それで森は元気になるのか?」


「すぐには変わらん」


イデアールは笑う。


「森というものは、人間より気が長いからのう。数年、十数年と様子を見る必要がある。だが、今のままでは確実に弱っていく」


エルフは静かに目を閉じた。


「……分かった」


そしてイデアールを見る。


「お前の話を、長に伝えよう」


「そうしてくれ」


「しかし……」


エルフは少しだけ笑った。


「昔から変わらんな、お前は」


「何がじゃ?」


「森で迷った時も、私たちに色々と質問してきた」


「そうだったかのう?」


「覚えていないのか?」


「昔のことじゃからなぁ」


「こちらはよく覚えている」


エルフは森の奥へ歩き始めた。


「長に話してくる」


「うむ」


その背中を見送りながら、ティヒカイトが尋ねる。


「本当に昔からあんな感じだったんですか?」


「わしは昔から好奇心旺盛だったんじゃ」


「それで森で迷ったんですか?」


「……まあ、そういうことじゃ」


シュングが笑う。


「建国王になる前から、変わってないんですね」


「何のことやら」


イデアールは誤魔化すように歩き出す。


「さて、村へ戻るぞ」


「森の話を伝えないとな」


三人は来た道を戻っていった。

その背後では、エルフたちが森を見上げていた。


そして、長い年月をかけて守られてきた森に、新しい変化が始まろうとしていた。

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