第4話(1) 蜂須賀徹と蛇喰凛子
「❤️彼女の妹 彼女の親友 Ⅰ」(R-15版)
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の続編。
《《ジェンダー問題》》
スタジオの控室で、真理子が優雅に紅茶を飲んでいると、ドアが勢いよく開いた。
「真理子!大変だぁ~!」アルファの佐藤が、汗だくで飛び込んできた。スマホを握りしめ、顔が青ざめている。
「何よ、佐藤クン。そんなに慌てて」
「フェミニズム・ジェンダー平等運動に賛同するLGBTQ+のメディア『女性情報なんだらステーション』から、駒場祭と新宿コンサートの動画に対して非難声明が出されたぞ!『女性の身体を性的対象化し、男性の視線を誘う差別的パフォーマンスである』『特に未成年の影響を考慮すべき』『ゴスロリという衣装自体が女性の幼児化を助長している』……と、かなりキツイ内容だ!」
真理子は紅茶のカップを静かに置いた。表情は変わらないが、目がわずかに細くなる。
「ふふ……面白いわね。では、私が出演を承諾しましょう。向こうの論者と、直接やり合いましょうか」
「待て待て!相手はLGBT教育推進委員の蜂須賀徹と、フェミニスト活動家の蛇喰凛子だぞ!両方とも、言葉のプロだ!」佐藤が慌てて言った。
「言葉のプロ……?私も、言葉は嫌いじゃないわ」
《《YouTubeライブ配信》》
翌日の夕方、ライブ配信が、虎ノ門のスタジオで行われた。佐藤は、自社の動画に関わる問題だから、真理子についてきたが、真理子は佐藤が討論に加わるのを断った。「佐藤クンは議論に弱そうですからね」と皮肉っぽく言った。佐藤が苦笑した。
画面に映るのは、穏やかな微笑みを浮かべた蜂須賀徹と、鋭い眼光の蛇喰凛子。そして、深紅のゴスロリを纏った真中真理子。
蜂須賀徹は、35歳、船橋市のKM高校に市の教育委員会から派遣されているLGBT教育推進委員、蛇喰凛子は、32歳、蜂須賀と同じ立場だ。
蜂須賀は、中性的なファッションで、旧来の家庭環境や性別概念は破壊されるべきというイデオロギーの持ち主だ。蛇喰は、フェミニスト活動家で、、現代社会を男性社会に迎合した歪んだ姿と決めつけている。二人は、大学時代の先輩・後輩の間柄だった。
司会者が緊張した声で進行を始めた。
「本日は、話題のゴスロリライブ動画について、議論をしていただきます。まずは、蜂須賀さんからお願いします」
「ありがとうございます。私はこの問題を構造的に捉えたいと思います。あの動画は、明らかに女性の身体を性的対象化しています。特に、ゴスロリという衣装は、女性を幼児化し、男性の視線にさらすことで、構造的な差別を再生産していると言わざるを得ません」
蛇喰凛子が即座に続けた。声は鋭く、眼光は冷たい。
「同意します。女性の身体を『可愛い』『セクシー』という男性中心の視線で消費することは、構造的暴力です。あのライブは、女性の主体性を奪い、男性の欲望に奉仕するだけの存在に貶めています。私たちは、こうした『可愛さ』という規範を、徹底的に解体しなければなりません」
真理子は静かに微笑んだ。「へえ……面白いお話ですわね。では、質問させてください。女性が自分の身体をどう表現するかは、女性自身が決めることではありませんの?それとも、あなた方が『正しい女性の在り方』を決めて、強制するのですか?」
蜂須賀が穏やかに、しかし確信を持って答えた。「それは、誤解です。私たちは、抑圧された女性の声を代弁しているだけです。
個人の『自由』という言葉で、構造的な差別を正当化するのは、典型的なリベラル幻想です」
真理子が小さく笑った。「構造的差別……便利な言葉ですわね。では、聞きますわ。私のライブで、誰が『被害者』になったと?
観客は皆、喜んで拍手をしてくれました。お金も払って、笑顔で帰っていきました。それが、どうして『女性全体への暴力』になるのですか?」
「無自覚な加害です!あなたのような『可愛い』パフォーマンスが、若い女性に『女性とはこうあるべき』という歪んだ規範を植え付けているのです!特に、未成年の影響は深刻です!」と蛇喰凛子が声を荒げた。
真理子が声のトーンを少し変えて切り返した。
「未成年……。では、聞きますわ。私のライブを見た未成年が、『自分もあんな風に表現したい』と思ったとして、それがなぜ悪いのですか?女性が自分の身体を自由に使って表現することを、あなた方は『歪んだ規範』と決めつける。それは、結局、あなた方が女性の身体を管理したいだけではありませんの?」
「真中さん、あなたはまだ『個人の自由』という古い枠組みに囚われています。現代のジェンダー理論では、個人の選択も、社会構造の中で規定されているのです」と蜂須賀が穏やかな笑顔を崩さずに言った。
「じゃあ、聞きますわ。あなた方は、女性が『可愛い』『セクシー』であることを否定する。では、女性が『可愛くありたい』『自分の身体で人を魅了したい』と思う気持ちは、全部『男性中心の洗脳』なのですか?女性の欲望まで、あなた方が管理するつもりですか?」
「それは、内部化された抑圧です!」蛇喰凛子が声を尖らせた。
「内部化された抑圧……。では、私が『可愛くありたい』と思う気持ちも、全部『抑圧』ですか?それとも、あなた方が『正しい女性像』を押し付ける方が、よほど抑圧的だと思いませんこと?」
論戦は激しく続いた。
蜂須賀と蛇喰は専門用語を駆使して真理子を追い詰めようとするが、真理子は冷静に、時には辛辣に切り返す。特に、蛇喰が「女性の身体は男性の視線から解放されるべき」と主張したとき、真理子が静かに言った言葉が決め手になった。
「解放……ですか。では、聞きますわ。女性が自分の身体を『見せたい』と思う気持ちまで、男性の視線から解放しなければならないのですか?それとも、あなた方が『見せるな』と命令する方が、よほど女性の主体性を奪っているのではありませんの?」
スタジオが静まり返った。蜂須賀の微笑みが、初めてわずかに崩れた。蛇喰が何か言い返そうとしたが、真理子は静かに締めくくった。
「私は、自分の身体をどう表現するかを、自分で決めます。あなた方が『正しい女性の在り方』を決めて、私に押し付けるのは、もう結構ですわ。女性の身体は、誰の所有物でもありません。特に、あなた方のものではありませんのよ」
《《蜂須賀と蛇喰の正体》》
YouTubeライブ配信が終了した瞬間、スタジオに重い沈黙が落ちた。
蜂須賀徹と蛇喰凛子は、互いに視線を交わし、わずかに肩を落としていた。論戦では優位に立っていたはずだったが、真中真理子の静かで鋭い切り返しに、どこか押し切られたような感覚が残っていた。
二人が荷物をまとめ、控室から出ようとしたそのとき、後ろから落ち着いた声が掛かった。
「蜂須賀さん、蛇喰さん。今日の議論は非常に有益でしたわ。いかがでしょうか? ちょっとそこのバーで一緒に雑談をいたしませんか? ねえ、佐藤クン?」真理子が、深紅のゴスロリ姿のまま、優雅に微笑んで立っていた。
佐藤が慌てて横に並んだが、真理子は軽く手を挙げて制した。
蜂須賀と蛇喰はその誘いに乗った。蜂須賀は穏やかな笑顔を崩さずに答えた。
「……お誘い、ありがとうございます。時間がありますので、よろしければ」
「興味がありますわ。真理子さんの本音を、直接伺いたいです」蛇喰も鋭い眼光を少し和らげ、頷いた。
真理子は満足げに微笑み、佐藤に目配せした。「では、行きましょうか」
【注意・免責事項】
※本作に登場するすべてのキャラクターは18歳以上です。
※制服・学生風衣装・部活動ユニフォーム等の描写は、すべて演出上のコスプレ要素であり、現実の未成年を描写したものではありません。
※本作に登場する事件・設定・団体等はすべてフィクションであり、実在のものとは一切関係ありません。
※第4章以降では、過去の出来事や医療・倫理に関する重いテーマが語られますが、描写は簡潔に留めています。
※性的・暴力的要素を一部含みますが、過度に詳細な描写は行っていません。
※本作は特定の思想・行為を推奨するものではありません。
※苦手な方は該当章の閲覧をお控えください。
※飲酒・喫煙の描写が含まれます。




