第1話 カネがない!
「❤️彼女の妹 彼女の親友 Ⅰ」(R-15版)
https://ncode.syosetu.com/n7952lw/
の続編。
※「❤️彼女の妹 彼女の親友 Ⅰ」
https://kakuyomu.jp/works/822139846243417799
の続編です。
《《2026年12月29日(火)》》
NYから帰国の二日後の午後、明美は真理子に電話した。
「今どこですか?」
「本郷の部室ですわ。恵美もいるわよ」
本郷キャンパスの「ゴスロリ文化会」部室に顔を出すと、真理子と恵美がPCの画面を前に揃って唸っていた。
部室の隣では「コスプレっ子❤️」が年末だというのに数人たむろして、「年末年始にコスプレで目立てる場所はどこか?」というしょうもない議論に花を咲かせていた。部長の遠藤女史の姿もあった。
テーブルの上には、真理子がソーホーから持ち帰ったMarieBelleのチョコレートの詰め合わせが開いていた。隣の「コスプレっ子❤️」の面々がそれを囲んでキャーキャー言っている。
「こいつらミーハーだから、これで喜んじゃうんだよなあ……」と恵美がため息をついた。
「真理子、そんなに深刻な顔をされて、どうされたんですか?」と明美が聞いた。
真理子が画面から目を離さずに答えた。
「財団のビルがね、彩花を引き渡さなかったこと、それと『ハワード&ニック探偵事務所』への依頼が過剰だとして、支払いを拒否してきたの。ハワードへの支払いだけで1000万円くらい。それとアンヌからの連絡で、保険が効かない彩花の帰国までの治療費と、アンヌ、凜花、遥の滞在費がしめて2500万円。合計3500万円が必要になったのよ」
また唸った。
「3500万円!そんなお金、どうやって?高橋家には連絡したんですか?」
「凜花がミネソタのパパと日本のママに連絡したの。貯金と高円寺の家を抵当に入れて工面すると言ってきたから、待て!って言ったわ。私に当てがあるから、家の抵当なんかしないようにって」
「でも、2500万円ですよ?」
「新宿のコンサートは一度限りで1500万円で権利を『アルファ』というプロダクションに譲渡したけど、駒場祭のユーチューブ配信の収益が三ヶ月で1000万円になったの。『コスプレっ子❤️』と半々だから、こっちは500万円。それで、『アルファ』の担当者の佐藤クンに連絡したら、ユーチューブ配信第二弾でスタジオ収録と、コンサート第二弾をやれるって言うのよ。ノリノリでね。問題は、メンバー。オリジナルは私、恵美、アンヌ、凜花、遥の五人だけど、三人抜けちゃっている。佐藤クンは1月に収録、2月にコンサートと言ってるけど、メンバーがいないのよね」
「私、やります!」明美が即答した。
「パートは、クラシックギターだったわね?」
「そうです」
そばで聞いていた遠藤女史が、チョコレートを口に放り込みながら会話に割り込んできた。
「こっちからメンバー貸してあげてもいいわよぉ~、真理子」
「……遠藤さん、あんたはいいけど、そっちの音痴軍団は使えないよ」と恵美が即座に切り返した。「それに、こっちは『コスプレっ子❤️』のコスプレじゃなくて、ゴスロリのパンツ見せだよ?演出が真理子だよ!お嫁にいけなくなっちゃうよ。最後なんか、下着だけのほぼ全裸だぜ?」
「でも、ユーチューブ配信と第二弾コンサートの収益、メンバーで山分けなんでしょう?」と遠藤が食い下がった。「お嫁なんて行かなくってもいいから、私はやる!混ぜて!」
「こちらの方は?」と明美が聞いた。
「『ゴスロリ文化会』が所属している本会、『コスプレっ子❤️』の部長の遠藤女史だよ」と恵美が答えた。
「遠藤さん、私、化学科の神宮明美です。NYに一緒に同行してました」と明美が自己紹介した。
「私は部長の遠藤です」と遠藤が丁寧にお辞儀した。
「遠藤、あんたの名前を今まで知らなかったよ」と恵美がぼそっと言った。
「それ、聞いちゃダメなんだよ、恵美」と真理子。
「……名前、言わないとダメ?」と遠藤が困り顔をした。
「あんた、プレイするのに『遠藤さん!次!』とか言わんだろう?」と恵美。
「言っちゃいなさいよ、あなたの本名を!」と真理子が扇子を広げた。
「え~、あのぉ……遠藤……『花』です……ハナ……」
遠藤がオズオズと言った瞬間、恵美が吹き出した。
明美はなんと言えばいいかわからず、ただ笑顔を保った。
(確かに、コスプレ部の部長にしては古風なお名前……辛かったんだろうな……)
「恵美さん、私は、第一弾の駒場祭、ユーチューブ配信と新宿コンサートを見ていないんですけど……」
「見たいの?見るのね?覚悟は良い?見てから、私、遠慮しますなんて、ダメだぜ。もう、出る!って言ったんだから……これの再演をするんだよ?」と恵美。
「恵美、誰が再演と言いました?この程度は序の口!もっとすごくしないと、収益、あがりませんことよ?」
「もう、見せるものなんてないわよ!」と恵美。
「パンツの中身と内蔵が残ってますわ」と真理子が恐ろしいことを言う。
「冗談だろ?」と恵美。
「半分、冗談ね……フフフ」
モニターの前に椅子を持ってきて、明美を座らせる。「ユーチューブが30分、コンサートが約1時間ですわよ」と明美に動画を見せた。『アルファ』からの直のデータなので、超ハイレゾで、下着の線までクッキリハッキリだった。
明美は、ユーチューブの最初の曲、”Wham!、Last Christmas”の過激シーンで既に仰け反った。
"Hey guys, Merry Christmas! At first, we will present to you,
"Wham!、Last Christmas"!!! I hope you have a wonderful holiday season!"
「ヘイ、みんな、メリークリスマス!初っ端ですわよ!曲は『"Wham!、Last Christmas"』!
すっばらしいホリデーシーズンを過ごそうぜぇ~!」
真理子が叫んだ。
ステージの中央に躍り出て、ゴスロリのフリルスカートを少し持ち上げ、パンツがちらりと見えるように
挑発的に腰を振る。黒いレースのゴスロリパンツが客席の視線を射抜いた。
すると、真理子は、前かがみになって、スカートの中に手を入れ、何かを左右に引っ張った。
上体を起こした……紐パンが、ストンと足元に落ちた。
真理子は、落ちたパンツを厚底で踏みにじって、遥の方に蹴飛ばした。
……これを私がやるの?……
「明美、こんなもんじゃないよ。本当にお嫁にいけなくなっちゃうよ。アンヌと私はもういいけどさ。若いあんたは……知らないよ」と恵美。
「❤️彼女の妹 彼女の親友 Ⅰ」
第2章 彼女の親友
第11話(1)~(3) 駒場祭
駒場祭本番映像が流れる。
(あ……これが、真理子が司祭になる瞬間……)
ステージの上の真理子は、部室にいる真理子と別人だった。「ですわ」口調が消えて、戦場の女神になっている。
(……Last Christmasのシャウトから、The Circle Gameの静寂へ……この落差で、客席が死んでいる……)
「明美、口、開いてるよ」と遠藤ハナが横から言った。
(Total Eclipse Of The Heart……遥のソロ……この子、こんな声が出るの?)
遥がマイクを持って歌い始めた瞬間、明美の背筋に電気が走った。
(……凜花が泣いてる……客席も泣いてる……なんなの、これ)
「ここで泣いちゃうんだよねえ、毎回見ても」と遠藤ハナがハンカチを取り出した。
(……私、この人たちと同じステージに立てるの?)
「❤️彼女の妹 彼女の親友 Ⅰ」
第12話(1)~(5) 新宿コンサートの動画。
新宿コンサート本番映像が流れる。
(Zepp Shinjuku……キャパ2500人……満員……)
(Don't Stop Believin'……イントロで客席が沸く……)
(残酷な天使のテーゼ……遥が一人で歌っている……駒場祭より声が出ている……)
「ここで私は死んだよ」と遠藤ハナが静かに言った。「悔しかったけど、負けた、と思った」
(Eye of the Tiger……なんで、ゴスロリでこれをやるの……)
(I Will Survive……真理子が脱ぎ始めた……え?え?恵美さんも……凜花まで……)
「明美、ここから先は覚悟して見なよ」と恵美が言った。
(……The Köln Concert……加藤恵美のピアノソロ……)
部室が静かになった。チョコを食べていた「コスプレっ子❤️」の面々まで、画面に釘付けになっていた。
(……これは、誰かへのレクイエムだ……)
一時間半の映像が終わった。
明美はしばらく動けなかった。
「……私、やります」とようやく言った。「絶対に、やります」
いつの間にか、「コスプレっ子❤️」の白石冬美が明美の隣に座って画面を見ていた。小柄で、ショートカットの、どこかボーイッシュな雰囲気の女子だった。
「私にもできるかな?パーカッションとドラムなら行けそう……音痴だけど……」と冬美が独り言のように言った。
「パンツ見せと……マリコの言う……中身・内蔵見せをするなら、『アルファ』のオーディションを受けて、仲間に入れてもいいよ。ね、真理子」と恵美。
「白石冬美はヴィジュアル的に明美と張り合えそうだわね」と真理子が扇子を広げた。
「真理子、エヴァンゲリオンしても良いですか?」と冬美が聞いた。
「……『キューティーハニー』と『けっこう仮面』を明美としてもらおうかしら?」
「……」
明美は、NYで肩を撃たれたばかりだということを、すっかり忘れていた。
【注意・免責事項】
※本作に登場するすべてのキャラクターは18歳以上です。
※制服・女子高生風衣装・部活動ユニフォーム等の描写はすべて演出上のコスプレ要素であり、現実の未成年を描写したものではありません。
※当シリーズの作品はすべてフィクションであり、実在の事件・人物・団体とは一切関係ありません。
※作中に描かれる出来事は、詳細な描写を意図的に抑制しています。
※本作は医療・倫理・社会的テーマを扱うフィクションであり、特定の思想・行為を推奨するものではありません。
※性的・暴力的要素を一部含みますが、描写は必要最小限に留めています。
※苦手な方は閲覧をお控えいただくことをおすすめします。
※本作は法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※飲酒・喫煙の描写が含まれます。




