幕間2 葵の花が枯れる時
「おやすみ、葵お姉ちゃん」
私はただ
その一言が聞きたくてずっと求めてた
私はその一言の少しの違いに気づけなかった
だから、ひなは
ーーー
「葵お姉ちゃんー」
ばたばたと白い髪をなびかせながらひなが自宅の階段を駆け下りてくる
「どうしたの?」
向かってきて飛び込んできたひなを優しく抱き寄せる
「今日ね、友達と海にってくるのー」
私は自分の頭の上にはハテナが出ていた気がするほど驚いた
「ひな、今冬よ?」
そう、今は二月後半
外はすごく寒くて海に行く気温じゃない
「景色見に行くのー」
「あぁ、なんだ。誰と行くの?」
「誰と行くんだっけ」
ひなはぱっとみても白化病かわからないほどもう髪は真っ白だった
ひな自身も何かを忘れているのは理解しているが、何を忘れたかは思い出せない
「結ちゃん?」
「あ、そうそう」
それなら一旦安心だ
唯ちゃんならひなといつも一緒にいて、ひなが一番最初に白化病のことを話しても今もまだ一緒にいてくれる
「じゃあ、景色見に行ったら写真撮って、二人も映って」
「えー、恥ずかしいよー」
「いいじゃん、思い出にね」
「わかったよー」
頬を膨らましたまんまひなは、部屋に戻っていった
「あ、そうだー。お姉ちゃん、これあげる」
部屋に戻ったはずのひなはすぐに戻ってきて
「綺麗なネックレスね」
赤色の宝石が入った、母の形見のネックレスを持ってきた
ひなが私になんでこれを渡してきたの
もらったのも忘れてしまったの?
「そうそう、なんかすごく高そうなものだったからお姉ちゃんに保管しといて貰おうかなって」
「壊しちゃいそうだから?」
「まぁ、そう」
「わかったわ、付けたくなったら言って」
「はーい、ありがとね。お姉ちゃん」
それを言い残し今度こそひなは部屋に戻っていった
ーーー
日が落ちて夕立が綺麗になってきた頃
私は昼寝をしていたのか目を覚ました
「んー、」
伸びをしてから起き上がる
ひなは、もう遊びに行ってるかな?
そう思って、スマホを見ると
『お姉ちゃんー綺麗でしょー!』
スマホには綺麗な夕焼けを背に少女が二人手を繋いでピースをしていた
「ふふ、海が映ってないじゃない」
『綺麗ね、海の方はどう?』
そう、送って水を飲もうと立ち上がろうとしたら
『あ、お姉ちゃん起きたのー?』
スマホ見てたのかな?
『今、起きたわ』
『ねぇ、お姉ちゃん。電話かけても良い?』
『良いわよ?どうしたの?』
それに返信が来る前に電話がなった
「もしもしー、ひな?」
『もしもしお姉ちゃん。あ、葵お姉さん、こんにちは』
結ちゃんもすぐそこにいるのね
「唯ちゃんこんにちは。それでひな、どうしたの?」
『いやー、お姉ちゃんと話したくなっちゃって』
「なによむず痒い、さみしくなったの?」
『そういうわけじゃないんだけどさ』
そこで夕日が赤く変わり、もう少しで日が落ちる
「二人とも、そろそろ日が落ちるから帰ってきな」
『⋯』
その言葉に返しはない
「二人とも?」
『ねぇ、お姉ちゃん』
「なに?」
『明日、私の机の中確認して』
「なんでよー、まって」
なんで、明日なの?
『それでね、伝えときたいことがあってね』
「まって、ねぇひな。あなた今どこーー」
それを遮るようにひなが続ける
『お姉ちゃんのことすっごい大好き』
「ねぇ、ひな。なんでそんな最後の言葉みたいな」
私は怖くなって立ち上がる。安全のために私が保管している、抗うつ薬と、睡眠薬が入った棚を開く
『お姉ちゃんと結がいたから私は今までここにいるんだと思うの』
「まってー、」
棚の中から睡眠薬だけがなくなっていた
『だからね、ごめんなさい。期待を裏切っちゃって』
「おねがい、そこにいて、ひな!」
『おやすみ、葵お姉ちゃん』
ガタン、と通話相手のスマホが投げ出されたかのような音がなる
「まって、やだ。ひな」
ひな、なんで
ーーー
家を飛び出してから
その後は、何も覚えてない
気づいたときには警察に保護されていた
私だけが




