第20話 胸の痛み
私はどうしたら良いのだろう
すみれも柚葉も葵も傷ついて欲しくない
それはもう
無理なのかな
―――
三日目の自由行動での遊園地
前に皆で行きたいなと話していた遊園地
「柚葉おかえりー」
施設に付いてるトイレから柚葉が出てくる
下を向いたままこちらを見ようとしない
「柚葉?大丈夫?」
「ゆ、ゆり、さん。もしかして、移動中、寝てたんすか?」
あの言葉を聞いていないの?
そう聞いているように聞こえた
「なんのこと?私、すみれに起こされて起きたから、ずっと寝てたけど」
柚葉がばっと顔をあげ、私と目が合う
その顔はやさぐれてて、今日の朝に見た柚葉とはまるで別人だった
口の横が少し汚れている
吐いちゃったのかな?
「そ、そ...う、なんすね。なんでもないっす」
言って柚葉が遊園地の入口に走っていく
それをいつもなら葵が追いかけるが、葵は動かない
「葵、柚葉お願い。迷子になっちゃう」
「わ、かったわ。連れて来る」
葵が柚葉に向かって重い足取りのまま追いかける
「ねぇ、すみれ」
「どうしたの?私達も行こ」
「今日は葵の隣に居てあげて」
「…、聞こえてたの?」
「うん、ごめんね」
「謝らないで、柚葉も本心じゃないだろうし」
「それは、どうなんだろう」
わからない、でもあれは
『馬鹿言わないで!!百合なんてどうでもいい、葵が傷つくのなんて絶対やだ』
本心としか思えなかったな
「わかった。けど百合、百合が全部背負わないでよ」
「わかってるよ、ありがとね。すみれ」
私はすみれの手を握って二人が走っていった方向に歩いていった
―――
「柚葉ー、あれ乗ろうよ―」
そういった百合はジェットコースターを指差す
「え、あれ乗るんすか?」
「そうそう、すみれ苦手だし柚葉一緒に乗ろー」
「良いですけど、二人はどうするんですか?」
葵の名前は呼ばない、何かあったのは確か
「良いよ、柚葉、乗ってきな。私は葵とクレープでも食べてくるから」
「なら、良いっすけど」
「じゃあ、決まり!柚葉早く行こー」
「わかったすよ。引っ張らないでください」
列に並んだ二人を確認して近くのクレープの屋台に葵は引っぱていく
「葵、大丈夫?」
「えぇ」
「柚葉となんかあったんだよね」
「何もないわ」
「バスでのあの発言のこと?」
それを言った瞬間に葵が口を抑える
「あ、ごめん。葵、大丈夫」
「大丈夫、だけど。クレープ私の分も食べて」
「わかった、けど。昼ご飯は食べてよね」
「努力はするわ」
葵にとっては、そこまでトラウマだったのか
でも、なんで?
大切なのはわかるけど、そこまで?
葵は、なにか
百合のなにかに惹かれている?
依存している?
わからないけど、聞いて良いものじゃない気がする
「今日はどうする?帰りのバスとか、辛かったら私を柚葉の隣にしてもらうけど」
「お願いできる?」
「えぇ、わかったけど」
今は会いたくない、そういうことだろうけど
それはいつまで?
柚葉にとっては葵は大切な人、いや、それ以上なのかもしれない
葵だって、柚葉は好きだったんじゃないの
どうにかしてあげないと
「お願いだから、仲直りはしよ?」
「出来るわけ無いでしょ!!」
「あおい――」
「あんな事言う人、友達でもなんでもない!!」
葵はガタンと立ち上がリながら言う
「ねぇ、葵。それは本心なの?」
「何、言って――」
それを言っている葵の声は震えて、目からは涙が沢山流れていた
「本心なら、そんなの出てこないでしょ?百合だって聞いてなかったんだし」
「それでも、私は、柚葉に、気持ち悪いって、触らないでって。言っちゃったの」
「葵、ねぇ、自分を責めるのはやめようよ。好きな人を否定するのってすごく」
「胸が痛いでしょ?」




