第19話 柚子の花が落ちる
「なに、これ」
バスの中でスマホを弄っていたら一つの投稿が回ってきた
座席の後ろから前に座っている女子を撮ったもの
その女子の髪は少し白くなっている
「ねぇ、柚葉これって」
「黙って」
横に座っている柚葉にすぐに言おうとしたがそれより先に柚葉のスマホを叩く指はすごく早く動いていた
「どうしたらいいの」
「とにかく元を特定して消させる。それ以外できない」
「でも、それじゃ改善には」
「わかんない、百合さんは何がしたいのか」
「私に手伝えることない?」
「ないよ」
はっきり言い切られてしまった
そんなに私は頼りないの
「じゃあ説得とか皆にしてみても、いい?」
私が皆を説得できれば百合も柚葉も傷つかない
「絶対やめて」
「なんで!」
「わかんないの?そんなのが逆効果だって」
「そんなわけないじゃない」
「でも、もしかしたら――」
「そんな事しないで!」
「どう、したの?」
「そんな事したら葵がいじめの対象になる。だからしないで」
「そのぐらいなら私、受け入れるよ」
言って柚葉のスマホをいじる手を両手で抱きしめる
「お願い、無理しないで。柚葉」
柚葉が辛いのは見たくない
でも、百合が傷つくのも見たくない
それなら、私が頑張ればいいから
「お願い、ゆず――」
「馬鹿言わないで!!百合なんてどうでもいい、葵が傷つくのなんて絶対やだ」
「なに、言って――」
バスの中でそんな大きな声が響く
「桃井、どうしたんだ?」
担任が前の方で立ち上がる
「あ、なん、でも、ない…です」
柚葉は、身じろいで、口を押さえて、黙り込んだ
「柚葉、なんでそんな事言うの」
バスの中、さっきの言葉は百合にも聞こえてしまってるかもしれない
「言葉のまま」
―――
「言葉のまま」
言ってしまった
最低だ
でも、そうだ
私は葵さえいればいい、葵が幸せにいられるなら手段なんて選ばない
「ほん、とう?柚葉、ねぇ、私の前だよ?嘘つかないでいいんだよ?」
「言葉のままって言ってるでしょ」
「そんな、わけ」
そこでうっ、と葵が口を抑えて下を向く
「え、大丈夫!?葵」
背中をゆすろうとした瞬間
「触らないで」
葵の普段の声からは想像できないような低い声
「触らないで気持ち悪い」
―――
「馬鹿言わないで!!百合なんてどうでもいい、葵が傷つくのなんて絶対やだ」
柚葉がそう叫んでた
そうだよね
分かってた。逆になんであそこまで私を気にしていたのか疑問だった
単純に私がいじめられてそれを見て落ち込んでる葵が見たくなかった、それが理由なら納得はできる
人なんてそんなもの
そうじゃない、今まで支えてくれたことには感謝しないと
『百合?起きてる?』
すみれから
心配かな?
ここで開いてもし返信したら?
すみれはどうするんだろう
柚葉を責める?
もう皆で遊ぶのは無理になっちゃう
それは、嫌だな
...ごめんなさい、すみれ
私はスマホの電源を切って、眠りについた
―――
バスが目的地につく
「お前ら今から班行動だ。迷子になるなよ」
そう担任から言われ、一人ずつバスから降りていく
バスから降りて地面についた私は目の前にいた二人に話しかける
「おはようー、すみれ、葵」
「よく眠れた?百合」
すみれは何事もなかったように、いつも通り私に笑顔を向ける
「うん、柚葉は?」
葵にそう問うと
「あ、ゆ、ずは、は今トイレ行ってて」
「そうなの?じゃあ、待とっか」
柚葉は悪くない
そう言い聞かせ私は二人に笑顔を見せた




