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第12話 白化日

「で、白化日はいつなの?」

大体泣き終わり百合が安定したところで聞く

「白化日は三月十日」

「それは、」

それ以上の言葉が出なかった

百合は当たり前のように話してるが

それがどれほど残酷なことか

白化日というのは白化病の終わりを指す日だ

要は思い出がすべて跡形もなく消える日のこと


それが、

それが卒業式の日?

そんなもの、残酷以外の言葉が思いつかない

「大丈夫?葵」

少々、悩みこんでしまっていたみたいだった

「えぇ、三月十日、本当なの?」

「本当だよー運がないよね」

運がない?

そんな言葉で済まして良いものじゃない


いや、百合がこんなにも冷静なのに私が冷静を崩しちゃダメ

この子をさらに追い込んでしまう

「百合が白化病だって知ってるのは誰?」

「今はすみれと、お母さんと、お父さんと、保健室の先生と、担任の先生と、校長。気づいてる人がいなければこの人たち、かな?」

「良かった、すみれは知ってるのね」

「うん、相談は最初にしたから」

「そのまま、私と柚葉に相談すればよかったのに」

「ごめんってー」

「まぁなら一旦安心わね」

そこまで知っている大人がいるなら大丈夫でしょ

「あ、それよりご飯行かないと、先生に怒られちゃうよ」

「もうそんな時間!?」

スマホを開くと時間は七時半を指していた

「行こ行こー」




―――






「美味しかったねー」

クラスの皆とご飯を食べ終わり部屋に戻っていた

「ね、でもそれにしても百合、好き嫌い多すぎ」

「いいじゃんー、好きなもの変わるらしいし、それまで美味しいもの食べるのー」

「はいはい、あ、すみれ」

部屋に帰る途中、私と百合のホテルの部屋の前ですみれが待っていた

「どうしたの?」

その顔はいつもより余裕がなさそうで何か焦ってるみたい?

「いや、葵ちょっと、私の部屋行って柚葉の相手してもらってていい?」

二人きりになりたい、とそういうことか

まぁいいか

「いいよー、三〇四だっけ?」

「そう、あ、これ鍵」

「はいはい、お願いだから私もそこで寝るから変なことしないでよ」

「分かってるわよ」

「じゃ、お楽しみに」





―――



部屋に戻ると、すみれが待っていて

無理やり部屋に引っ張られてしまった

どうしたのだろう?

「どうしたの―――」

言い終わる前にベッドに押し倒される

「え、すみれ。そういうのはダメだって葵言ってたじゃん」

「違うわよ、バカ」

涙が一つ

私に落ちてきた

「どうしたの?すみれ、私なにかしちゃった?」

葵とずっといたから怒ってる?

んー

それ以外自覚がないんだけど

「なんで」

その瞬間すみれが


泣き叫ぶようにそれを言った



「白化日のこと黙ってたの!!」



―――



「白化日のこと黙ってたの!!」

分かっている、私を傷つけないためなのだろうが

それが一番痛い

頼ってくれなかった

重荷を共有してくれなかった

私じゃダメだった

「あ、ごめんなさい。葵から聞いたの?」

「えぇ、そうよ」

「なんで、私じゃなくて葵なの?私はそんなに頼りない?」

「いや、そうじゃ―――」

「じゃあなんで、葵に相談したの!!私じゃなくて葵に」

「それは」

「すみれが一番大切だから、あなたに傷ついてほしくなかったの…」

百合の瞳から涙がこぼれる

ごめんなさい、でも

でも頼ってくれなかったのはそれぐらい悲しかったの

「あなたが教えてくれないほうがもっと痛いわよ!!」

がたん、と立ち上がる

「顔見せないで」

そう言い放ち部屋を飛び出た




廊下に佇み、一人

誰に向けて言っているのかも今の自分にはわからない言葉を発した

「ごめんなさい」

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