EP1-30.
エリア42に突然入ってきた「砂モグラ」がWPC日本エリアに潜伏しているという情報を調べるため、軍は部隊を編成してある場所へと向かっていた。
基地での騒動を鎮静化してすぐに作戦を開始したので、BDの消耗が気になっている状況だった。
奥多摩地方の森に阻まれてBDは真っ直ぐに進めない。BDの平均全長は10mほどなので、上空から見たら森に隠れてしまう。
「ブラボーチーム、各機の状態はどうだ?」
部隊の中央で進行しているBDから部隊全員に通信が入る。
「ブラボー2、少しバランサーに注意が表示されていますが、問題なさそうです。」
「ブラボー5、機体、自分ともに全然いけます!早く対応したいくらいです。」
各員がそれぞれ自機の状況を報告する。各員が搭乗しているBDは八型と呼ばれる現行機にカスタムを施したもので、精鋭部隊のみ許される武装を各員の好みで搭載しているのが特徴だ。
「こちらブラボー1、エコーチームの状況はどうだ?」
中央のBDは頭部サイドに大きなブレードアンテナを取り付けていて、広範囲に通信が可能な機器になっている。
「こちらエコー1。そちらとは2kmほど離れて行動している。こっちのメンバーも特に問題は無い。」
「ラジャー。どちらかに問題があった場合は無理はしない方向で考えている。深入りしても良いことは無い。」
「了解した。しかし、海獅子と呼ばれたお前が弱気だとチームの士気も下がるぞ?」
「砂モグラだけじゃなくデザートストーム本体までいると考えると、慎重過ぎるくらいが丁度良い。上からの指示で動いているが、本当は様子見したいくらいだ。」
「気持ちは分かるが、出てきた以上何も成果無く帰る訳にも行かないだろう?」
「分かっている。可能な限り近づいて情報は拾う気ではいる。そちらも山豹という通り名に曇りを付けるんじゃないぞ。」
「もちろんだ、さっきの戦いに物足りないくらいだからな。砂モグラを捕らえるくらいの気持ちさ。」
「信頼はしている。ただ、命は大切にするべきだと思う。」
「そうだな、フルマリンを使った危ない兵器も出てきたからな。50周年という節目を潰そうという組織がわんさかいそうな感じだ。」
「このメンバーだけでは対処が出来るとは思えない。だから出来るだけ偵察だけで済ませたい。」
「お前の言う通り、富士の麓にモグラがわんさか潜んでいたらとても厄介だしな。」
「ああ、いない方が良いに決まっている。」
「新しい兵器のウォーミングアップも良いと思ったんだけどな。」
エコー1のBDは腰部に刀のような武器を装着していた。
「高周波を飛ばせるブレードの省エネルギー版か。さっきの戦闘では有効に見えたが、山では使いにくそうに見える。」
「おいおい、山豹の腕を過小評価するんじゃない。お前もそのブーツをつかいこなしたいんだろう?」
ブラボー1のBDは重みがありそうなブーツが取り付けられている。
「そうだな、格闘に特化したブーツだ。これこそ山での戦闘で活かせそうな気がする。」
「まあ、あちらが動いてこないという事は危険が少ないとは思っている。少しリラックスでいってもいいんじゃないか?」
「いや、相手は砂モグラなんだ。潜伏しているのが当たり前、より慎重なのが良い。」
「ブラボー1!前方500に何か大きな機影が見えます!」
「全員進行停止!先ずは相手を見極めろ。」
先頭を進んでいたブラボー3からの通信とモニターに映し出された映像で、一気に緊張感が走った。
各機が森の木々を壁代わりにして、カメラをズームして確認する。大きな機影は木よりも倍くらいの高さがあった。
「見た事がない機体ですね。あれもBDなのでしょうか?」
「要塞にも見えます。あれだけの大きさなのに、どうしてここまで近くまでレーダーに引っかからないのでしょう?」
「おそらく、ステルス性の機器を使用しているのだろう。エコー部隊も待機していてくれるか?」
「一気に仕掛けた方が早い気がするが、仕方がないな。迂回して先に行こうか?」
「いや、あれが一体とも限らないだろう。さっきも言った通り、メインは偵察だ。相手の出方を窺ってみよう。」
「了解。」
見える範囲で大きな兵器を確認するため、色々な計器を使用して出来るだけの情報を取得する事にした。
「サーモグラフィはとても冷たいですね。稼働していないのではないでしょうか?」
「いや、こちらの常識が通じない物かもしれない。ミサイルランチャーの可能性もある。」
「ここからですと、何を装備しているかが確認出来ません。もう少し近づいてみませんか?」
「…そうだな、少しずつ行ってみるか。各機の距離を取りながら謎の構造物に進行する!エコー部隊はまだスタンバイだ。」
「ラジャー!」
ブラボーチームが未確認兵器をより確認するために、慎重に歩みを進めた。200mほど前に進んだ所に少し足場になる岩があったので、ブラボー3は這いつくばって岩に登り、偵察を始めた。
「ここなら相手をよく確認出来そうです。モニターを共有します。」
ブラボー3から共有された映像をチーム全体で確認する。その映像はエコーチームにも共有している。
「ただのトーチカみたいなものなのではないでしょうか?」
「それにしても大きすぎる。BDの搬送ユニットの可能性もあるか。」
「本当にただの箱にしか見えませんよね、武器が見当たらない。…ん?今一瞬小さく光ったような?」
「おい!すぐにそいつから離れろ!」
「!?各機、目標から離脱!エコー1、一体どうしたんだ!?」
「思い出したんだ!そいつは搬送ユニットみたいに甘いものじゃない!」
「あっ、また光りましたよ!って、起動しそうです!」
「くそっ!近づき過ぎたか、間に合わねぇ!」
岩を降りながらブラボー3が状況を確認すると、箱型の巨大ユニットは脇から筒状の物を出して、ブラボー3に照準を合わせて筒状の物体を光らせた。
「えっ!?」
その言葉だけを通信に残して、ブラボー3の右腕は一瞬にして破壊された。
「ブラボー3!一体何が起こったというんだ!?」
「詳しくは分かりません!一瞬にして腕がもぎ取られてしまった感じです!」
「あいつの中身は兵器で詰まっている!今やってきた武器は振動波による攻撃だ!早く500m以上離れろ!」
「巨大だから振動波でもあんな威力を出すのか!一気に離脱して体制を整えるぞ!」
メンバーはブースターで一気に加速して、巨大ユニットから500m以上離れる事が出来た。しかし、巨大ユニットは移動を始めており、じわじわとブラボーチームに近づいてきている。
「ここで対応するしかない!あいつの弱点は頭部の中央にある窪みだ!」
「どうして知っているんだ?情報に出てこなかった兵器なのに。」
「すまない。一度しか遭遇しておらず、共有も出来てなかった。」
「そうか。しかし、頭から狙うためには近づかないといけないな。どうする?」
「ジグザグに行動して振動波を避けつつ対応する。だが、箱の中には他の兵器もあるからな。あいつは他に何を持っているか…。」
「ブラボー1!少し奥にもう一体見えます!」
ブラボー4からの映像共有で、前にいるユニットの右奥の方に同じシルエットのユニットが近づいてきているのが見えた。
「散開して、相手をかく乱するしかないな。よし、各機はターゲットを中心に円状になって行動!ブラボー4と6で相手を叩く!ブラボー3はより離れておけ。」
「俺達も対応するぞ!エコー2は威嚇射撃だ!エコー3は俺に続け!他はかく乱対応だ!」
「「了解!!」」




