EP1-29.
「改めまして初めまして。咲原 洋人です。」
周囲を見渡していた洋人は、ピースコネクトのメンバー全員がこちらを見ていたのに気付き、先手を打って挨拶をした。
メンバーは全員で7名。見た目の年齢も様々で、定年を迎えそうな人や学生を卒業したばかりに見える人もいる。
「こちらこそ初めまして。私はピースコネクトでBD開発部の副部長をしている廣田 雄二という、よろしく。」
挨拶をした廣田が手を出してきたので、洋人も手を差し出し、二人は握手を交わす。握手と同時に他のメンバーも会釈と挨拶をしてきたので、洋人は会釈で返した。
「ここにいるメンバー皆が私の部下だ。しかし専門は開発だからメンテナンススキルは少ししかないに等しい。それと質問は代表で私が答えよう。」
「分かりました。それにしても、ここはとても余裕がある工場ですね。」
洋人は工場全体を見渡すと、AF以外にもBDが格納出来るスペースがまだまだあり、メーカーが他の新型を用意しているかもしれないと考えた。
「そうだな。今回の技術提供で良い評価を貰えたら、新しいプロジェクトも立ち上げれる予定になっている。」
テーマパークのイベントが中止になった事で、ピースコネクトの皆は不満な顔をしているのが見て取れた。
「咲原さんが先ほど言っていた通り、あまり時間が無い状況だと思いますし、早速メンテナンスに取りかかりませんか?」
中堅クラスで取りまとめをしてそうな人が洋人に問いかけた。この工場のセキュリティを解除した一人だ。
「確かにそうですね。では、六B型に適応したオイルはここにありますか?最新型では合わないと思います。それと、大型のレーザーカッターのような物があったら助かります。」
「あのBDに対応したオイルは大丈夫だと思います。レーザーカッターは何に使用されるのですか?」
外に置かれている六B型BDをモニターで見ながらメンバーは質問をした。
「あの脚部に取り付けられたボックスを取り外したいのです。ここに来る前に助けられた物なのですが、中に何が入っているのか分からないのです。」
「なるほど、オーバーテクノロジーの可能性もありますよね。でも、中身が確認出来たら私達に把握されますけど?」
「それは問題ありません。私が用意した物ではないですし、調べてもらった方が良いかと思ってます。それと爆薬も少し恵んで頂けたらと思うのですが?」
手早く話していると色々と提供してくれそうに思えたので、洋人は要求を増やす事にした。
「分かりました。早速準備をして取りかかりましょう。機材などはあの端にあります。重要性が無い工具やサポートツールがありますので使ってください。」
メンバーが指差した方向には2トントラックが入りそうなコンテナが設置されていた。
「私達のBDもメンテナンスをしますが、くれぐれもここで見た事は他言無用でお願いします。」
「分かりました、感謝します。」
工場にいる全員がそれぞれの役割でBDのメンテナンスに取りかかった。
BD用の搬入口から六B型を工場内に入れている最中に、メンバーの一人が洋人に声をかけてきた。
「この搬入装置は数分かかる。少し話をしてもいいかな?」
搬送装置に運ばれている六B型は、光に照らされると色々な箇所に傷が付いているのがはっきりと見えるようになった。
「はい、大丈夫です。」
「私は加賀 人志だ、改めてよろしく。本当にエジプトではお世話になった。」
「よろしくお願いします。エジプトではただ戦っていただけでした。」
「とても律儀に見える。君がヨージンという名前を付けられていたなんて信じられない。まだ高校生くらいだろう?」
「ここだけの話ですが、今はここで高校生として生活をしています。」
「え?本当にそうなのか。という事はあの時は中学生…。その歳でキャンドルの悲劇を見るなんて、あまりにも…。」
加賀は少し涙ぐみ始めた。
「あの悲劇は思い出したくないですが、今でも夢に出てきたりします。」
「それを話すなんてすまない、私も思い出したくはないからな。今は高校生か日本支部所属かを偽っているということか。どうして、そんな事をしてまでBDに乗るんだ?」
「…今の生活に守りたい人がいる。そんなところです。」
洋人はBDの方に振り向き、そう話した。
「なるほど、複雑な事情がありそうだな。それを聞くと、私も君に守られたようなものだと感じたる。改めて感謝するよ、ありがとう。」
「いえ、僕はただ戦っただけ、それだけです。」
「その考えはあくまでも傭兵なんだな。君が守りたい人が無事にいれる事を祈っているよ。時間を取ってすまなかった。」
六B型の工場内部への搬送が終わったので、加賀から話を切り上げた。
「いえ。そちらも、どうかご無事で。」
洋人は用意していたオイルを六B型に補充し、カッターが用意されているメンテナンスエリアへと六B型を移動させた。
羽ユニットを取り付けたAFの状態を確認する為に様々な測定機器がオートメーションで取り付けられていた。今は非接触でもある程度のコンディションは確認出来るが、有線対応した方が素早く測定出来るのが現状である。
「AFの状況、改めて問題ありません。傷なども擦れ程度ですので、このまま運用出来ます。」
「よし、じゃあ湊君はホバリング練習をしてくれるか?」
「え、ここでするのですか?下手をすると天井をぶち抜いてしまいますよ!?」
湊はすでにAFの操縦席に座っていて、メンバーからの応答を待っていた。
「大丈夫です。高度リミットをかけていますので、危険な高さになると自動で止まってくれます。」
「本当なんですね?分かりました、やってみます。え~と、これだな。」
湊がボタンとレバーを操作すると、AFの羽ユニットが少し輝いて、空中へとゆっくりと上昇した。
「わっ、凄いです!本当に飛んでいる!」
「やったな、飛行機みたいに加速しないで飛べるのはきっと評価されるぞ。」
AFは少し加速をして、そして天井近くまで上昇するとピタっと静止した。
「ホバリングも大丈夫そうですね。では湊さん、今度はそのまま前進と後退をしてください。」
「了解です。少しずつ、少しずつ。」
湊は慎重にAFを操作して、前や後ろに動いたり、旋回したりした。
「空を飛ぶと、また感覚が違って楽しく思えます。」
数分程度操縦をして、湊は感覚を掴んできたのか、AFを動かすスピードも上がってきた。
「実戦だと単一な動きをしているだけではアウトですよ。結構な部分はオートで対応してくれると思いますが、湊さん本人が大丈夫じゃないかもしれません。」
「ジェットコースターみたいに振られちゃうのは駄目かもしれません。」
「よし、そろそろいいんじゃないか。あちらも終わったそうだしな。」
廣田は洋人がレーザーカッターでブラックボックスを切断し終えたのを確認して、湊に降りるように指示をした。
「ありがとうございました。大変助かりました。」
洋人は集合していたピースコネクトのメンバーに御礼を言った。
「いえいえ。もしかしたら、助けられていた所があったかもしれないですし、お互い様です。」
「これがブラックボックスに入っていた物なのですが、先ほど言った通り、こちらで対応して頂いても良いですか?」
洋人は切断したブラックボックスの中身をメンバーに見せた。中にはダイナマイトの様な形をした金属部品が入っていた。
「中身を簡易測定器で分析しましたが、詳しく分かりませんでした。」
「咲原さんが体験したのは、AIで動いていたBDをこのユニットが行動停止にしたのですよね?」
「はい、間違いありません。」
「凄い技術が詰まってそうな気がするな。もう一度発動する事は無いのだろうか?」
「六B型と専用通信でリンクし、発動させているような感じでした。詳しく解析したら分かると思いますが、今は時間がもったいないです。」
「そうですね、リンクしていない状態だと大丈夫そうに見えます。分かりました、大変貴重な物をありがとうございます。」
「お互いに他言無用で行きましょう。それでは、僕は先に出ます。ありがとうございました、気を付けて。」
洋人はメンバー全員に向けて御礼をした。
「こちらこそ、ありがとう。咲原君の未来に幸あることを願ってるよ。」




