EP1-26.
エリア38ではテロリスト達が一気に攻撃を始めて、日本支部は一時的にパニック状態になったが、部隊の規模が大きい事やこういう不測な事態にも訓練していた事も幸いしたか、時間が経過するにつれて体制を整えた日本支部は、テロリスト達を押し返していた。
その中でもアジュールDの活躍は大きく、破壊されそうになっていた日本支部のBDをギリギリのところで助けたり、少し大型でパワーが強いBDにも負けないくらいの高出力で対抗し、テロリスト達の数を減らしていた。
突然現れたADに翻弄されたテロリスト達は、分が悪い戦いだと判断する者が多くなり、後退する姿も見え始めた。
「よし、敵さんが撤退しだしたぞ。深追いはせずに、先ずは被害の拡大防止が最優先だ。」
ガンマ1が周囲の状況を確認しつつ味方機と通信をする。
「それにしてもアジュールDの耐久力は凄いですね!これだけ動いてもまだまだ稼働出来る状態です。」
戦闘が一旦終わって、少し心の余裕が出来たガンマ2は、アジュールDの状態をモニターでチェックする。
「こちらで専用武器に換装出来たのが良かったです。燃料もまだまだありますし、もう少し色々な戦い方を試してみたいです。」
「テストしていない武器を使用したくはなかったが、こいつとの相性は大丈夫そうだな。」
ADが使用していた散弾砲はエリア38に到着したすぐに弾を使い果たし、テロリスト達から拝借したライフルなどで応戦していたが、武器庫に辿り着いた時に、最新型のBDに搭載予定の小型レールガンがあったを発見したため、そちらに換装して戦闘を行っていた。
「レールガンって、エネルギーパックとかを用意しているイメージが強いですけど、BDの燃料をそのまま変換して使用出来るって画期的ですよね。」
小型レールガンは見た目はアサルトライフル程度の大きさだが、燃料を効率的に変換して、スナイパーライフルのような速度で発射出来る。
「そうだな。しかも、相手から奪い取る事も出来るから、燃料切れになる可能性も少なそうだ。」
レールガンの側面には伸縮型のスポイトみたいなのが取り付けられていて、それを相手の燃料タンクに突き刺す事で燃料をチャージできる仕組みだ。
「ここまで速くエネルギー変換させたり、こんなに小型化させるのにも開発陣は苦労したそうです。大切に使いましょう。」
「出力レベルを操作パネルで簡単に調整出来るのも有り難い。それなのにアジュールDの専用武器では無いから不思議だ。」
「操縦席のボリューム調整で出力レベルを変更できるので、専用武器と思われがちですが、新型の通信モジュールを使用した技術ですので、AD以外の新型も使用できる武器になっています。それにモード切り替えで散弾やマシンガンみたいに使用出来ますから是非試してみましょう。」
ベータ3は兵装システムや新しく取り付けたレーダーの状態を確認している。
「戦闘中に変形できる武装を考えながら対応するのは難しそうだが、思いつけば使用していこう。そういえば、先ほど入ってきた暗号通信は何だ?大物がどうとか言っていたな。」
アジュールDは他のBD達と一緒に破壊された建物の瓦礫を通路の脇に運んでいた。先ほどは戦闘状態だったため、暗号の方は後回しにしていた。
「エリア42から発信された通信ですね。こんな時にも暗号で通信してくるという事は重要ではないかもしれませんよ。」
大物が分かったという通信は日本支部がよく使用する専用通信で、極東地域の一部地域に発信されていた。
「内容はテロリストの本体が分かったそうとの事ですが、どこにいるかが記載されていません。」
「えっと、テロリストの親玉が『砂モグラ』という事ですね?ガンマ1は『砂モグラ』の事を知っているのではないですか?」
「『砂モグラ』か、確か中東地域で盛んに活動しているマフィアの幹部と聞いた事があるが、実際に対峙はした事がないな。」
「データではデザートストームというマフィア組織でゲリラからのし上がってきた連中らしいですね。でも知っていらっしゃるって事は砂モグラって結構手強い奴って事ですよね?」
マフィアやゲリラの中でも特に要注意人物はリーダークラスに情報が伝わっている。
「ああ、同僚の山内が中東で活動していた時に襲われた経験があったそうだ。その時は、前線部隊が激しい砂嵐のような攻撃を受けて壊滅的になり、後方にいた山内も危うかったそうだ。」
「砂嵐のような攻撃、まさに『デザートストーム』ですね…。」
「砂の中から奇襲をする事が得意みたいで『砂モグラ』という呼び名が知れ渡ったそうだ。」
「しかし、何で中東の組織が日本支部を襲う必要があるのでしょうか。まったく想像が付かないです。」
「そうだな。でも、戦っている感じはデザートストームの組織的行動ではなさそうだ。『砂モグラ』だけがこちらに来ているのかが分からないが、どういう事かエリア42の方で親玉という情報が入ってきたという事だな。」
「その砂モグラを叩かないとこのテロも終わりが来ないという事でしょうか?」
「それはなんとも言えないが、少なくとも我々は対応する必要がありそうだ。先ずは少し話を聞かないとだ。」
「通信は傍受される恐れがありますから、エリア42へと直接向かいますか?」
「それに関しては大丈夫だ、こちらからも暗号で通信を行う。あちらには信頼出来る同僚がいるからな。」
「ああ、『海獅子』こと荒木さんですね。」
「あいつなら、他が見たら分からない文章でもこちらの意図が分かってくれるはずだ。それとあっちに向かう時間を他に使いたい。」
「と言いますと?」
「『砂モグラ』がいそうな所が大体想像出来る。」
「攻めに行って一気に終わらせようとするのですか!?相手の戦力が分からないのに無謀ではないですか?」
「よく考えてみろ、敵さん陣地の隠れ家に戦力を残すほどの余裕もないだろう?」
「そうか、確かにそうですね。ではこちらも精鋭勢力で対応しますか。」
「ああ、そういう意味での暗号通信だ。」
「『海獅子』とガンマ1がタッグで戦うとなると…そっちの方が恐ろしく思います。」
「ちゃんと受け取った借りは返さないとだ!」
沈静化したエリア38でガンマ1達は上層部と話し合いを行い、『砂モグラ』の隠れ家を目指す事にした。




