EP1-25.
「えっと、BDが見えなくなって、爆発音とか聞こえなくなったね。」
BDの姿が見えなくなった後も、智里達はモニターをじっと見ていた。
「終わったのかな?どうしよう、連絡してみる?」
「う~ん、遠くに行っただけかもしれないし。邪魔したら咲原君が危ないだろうし、もう少し待ってみよ。」
「そうだね、わかった。」
「見えなくなっても反応があったけど、今は反応が止まっているな。という事はあのBDはやられたんじゃないか?」
零奈の隣で測定機器を見ていた男性が、ディムディス反応を示す機器を指差して話す。
「ほんとだ、じゃあ咲原君が勝ったのかな?」
「どうなんだろう…。」
「危険な存在がいなくなっただけでも良かったわ。でも、まだ出れないよね。」
みれいの母親が話す。
「そうですね…。」
「みれい出たいよ~。」
「みれいちゃん、もう少し我慢しようね~。」
「そろそろ3分か。相手が動く気配は無いし、確認してみるか。」
洋人はBDが再起動するか静止している相手を警戒していたが、しっかり確認しようと近づいた。
「旧式でもアレンジしたら機敏に動くことが分かったな。パーツの進化は恐ろしく速い。」
静止している相手に近づいた洋人は、起動されて攻撃されないように腕パーツを切断した。
「フルマリンをエネルギーにする兵器。有害物質をまき散らしてまで必要な戦いだったと考えると俺は…。」
フルマリン砲を確認する洋人。バックパックにあるエネルギー精製装置から繋がっているケーブルを抜き取って、トリガーも破壊して起動できないようにした。
「あれだけの被害を出した兵器がまだまだ使用されている。俺は少しでもあの時の償いを進める。」
目の前のBDを持っている測定器でよく確認する。異常な数値がない事を何回か確認した洋人は、自身のBDから降りて、相手の操縦部に飛び移った。
「生体反応も無いが、実際はどうだ?」
操縦部を緊急解放する為のレバーを引っ張り、ハッチを開放して中身を確認した。
「…なるほど、AIの力も恐ろしくなったもんだ。人が動かしているとしか思えない判断力だった。」
中には黒い箱のような物が操縦席にセットされており、その箱から色々な機器へとケーブルが繋がっていた。
「…全ての機器がシャットダウンしている、これだと再起動する事も無さそうだ。後であいつがセットしたボックスも調べないとな。」
洋人は操縦席をある程度調べ、データを持ち帰ろうとメモリー接続箇所を調べたが、よくある場所にはなく、すぐに見つかりそうになかったので諦めることにした。」
洋人は相手のBDから地面に降りて、仮面の男が取り付けたボックスを確認する。BDには簡易的に溶接され取付されている。
「こいつ、どこにも蓋の様な部分が見当たらない。持っている物では破壊するしか方法がない。仕方がない、工場まで行ってから対応するか。」
操縦席に戻った洋人は、動かないAIBDをモニター越しに改めて見つめた。
「こんな兵器がたくさん投入されたら世界はもっと悪くなるな…。一体なぜこんな事に使うんだろうか。」
周囲の状況をレーダーで確認し、問題なさそうだと判断した洋人は通信を開始した。
静かになってから数分経ち、変化が無い状況にあまり興味がなくなった零奈達は、食事を再開していた。
「みれいのお腹は十分になりました~。」
「みれいちゃん、全部食べられてえらいね!」
先にゆっくりと食べていたみれい達と零奈達は合流し、みれいの食事を手伝いながら一緒に食べ終えた。
「ある物だけを使っての料理って結構大変だね。やっぱり平和で色々と食べられるのが良いよ。」
零奈達は片付けをしながら話す。
「ほんとそうだよね。皆に大変な思いをさせてまで戦争をするなんて許される事じゃない。」
「智里が目指す将来って、食材を研究する何かだったよね?」
「そうだよ。こういう保存食で簡単に調理出来て、うんとより良い栄養が摂れて、美味しく食べられる食事を世界に供給できるようにするの。皆がお手軽に美味しく食べられるようになったら戦争だって少なくなるはず。そういえば浩二君だって凄い将来を考えているよね?」
テーブルをふきんで拭いていた浩二に智里は声をかける。
「え?ああ、俺は小さい頃からSFっぽい未来に憧れていて、ワープ航法を実現したいって思ったんだ。そのために原子分野をより深く学んで、少しでも役に立ちたいって考えてる。」
「それって本当に凄い事だね。二人の将来が実現したら、どこにでも行けそうだし、すぐに美味しい食事が出来るしで、皆が何不自由なく生活が出来そう。それだと戦争なんて起きないかも。」
「でしょ?零奈だって夢見ている未来があるもんね。」
「うん、私も浩二君と似たようなものだけど。魔法のようなことが出来る世界にしたいって思ってるの。火や水、電気が大掛かりな物を使わずに用意出来たらもっと便利になると思うの。もちろん危険な事には使えないように制限する事も必要だけど。」
「魔法使いになりたいって言ってた時期もあったもんね、それにはびっくりだよ。」
「もう、なんか恥ずかしいよ…。」
そんな話をしていると、携帯端末からコール音が鳴った。
「あっ、咲原君だ。通信開始するね、もしもーし、咲原君?」
智里はスピーカーモードにして皆が会話出来るようにした。
「篠塚か、そっちは特に変化は無いか?」
「うん大丈夫だよ。ディムディス反応がしなくなったけど、終わったのかな?」
「ああ、問題のBDは鎮圧した。カメラ映像をそちらに送る。」
「オッケー。」
携帯端末を操作して、携帯端末の画面をシェルターのモニターに複製して表示できるようにした。
画面には洋人からリアルタイム送信されているAIBDの様子が映し出されている。
「見事に破壊されているね。」
「こいつはAIで動いていた。でも人間のようにとっても機敏に動いていた。」
「そうなんだ。工場とかの作業ロボットとか小型飛行機とかで実用化はされているけど、BDまで発展しているのは恐ろしいね。」
「えっと、咲原君は問題ない?」
零奈が少しトーンを低く話す洋人に気にかけて話す。
「俺か?ああ、大丈夫だ。少し知らない情報が多くて驚いているだけだ。」
「そっか、ケガが無かったなら良かった。周囲はまだ危ないの?」
「そっちに通信する前に日本支部と連絡をしてみた。あっちも結構沈静化出来ているそうだ。」
「結構って事は、未だ終わっていないのね?」
「詳細は分からないが、何かしらの大物が分かったらしい。」
「大物?黒幕ではなくって?」
「黒幕まで繋がっているかはなんとも言えないが、少しは出来る奴に接触したって事だろう
。」
「なるほど。えっと、私達はどれくらいここにいなくちゃいけないのかな?」
「ここはもう大丈夫そうだが、家まではまだ危険だと思う。」
「分かった、ちゃんとした連絡が入るまでここにいるよ。咲原君はどうするの?」
「このBDはもう少ししか行動出来無さそうだし、放棄処理をしてから次の行動に入るつもりだ。」
「なんだか全然違う所の人と話しているみたい。でも、気を付けてね。」
「ありがとう。あと、掘り出されようとしたフルマリンだが、反応できないように炭化させた。深い所まで掘られるとまだ残っているが、しばらくは大丈夫だろう。」
フルマリンは灯油と適切な比率で混ぜると反応を起こして炭化する。
「炭化処理、そんな事まで知っていたんだ。凄いね、ありがとう。」
「ああそうだ。もう少し我慢することになるから、こういうのも用意した。」
洋人は智里の通信端末にいくつかのコンテンツを送信した。
「あっ、勉強できる情報や子供向けの動画。それに皆が好きそうな情報がいっぱいある。」
「あっ、みれいこのクマさん動画大好き♬ありがとうお兄ちゃん!」
「えっと、こんなのどこで?」
「途中に図書館があったもんでな。そこで少しばかりメモリーを拝借してきた。」
「なるほど、ありがとう。」
「じゃ、またいなくなるけど問題ないか?」
「うん、大丈夫。咲原君、またちゃんと会おうね。」
「ああ、了解した。」
情報送信の完了を確認した洋人は、通信を遮断した。




