EP1-21.
ADの操作権を任されたガンマ1は、重厚なBDの動きとは思えない左右の動きでテロリスト達へと向かっていく。
両肩に用意されたアームを操作しているベータ3は、ガンマ1の動きに合わせてガトリング砲を撃ち込み、テロリストの1体を攻撃封じた。
「よし!乱射しているだけでこの威力、さすが大口径です。」
「ベータ3、もう一体の行動パターンをトレースしました。行動確率80%です。」
ガンマ2はテロリスト達の解析を行っていた。ADの様々な箇所にカメラが搭載されていて、それぞれから記録されたデータによって相手のクセや行動パターンを分析する事が出来る。
「了解!上手くかく乱しますので、もう一体はガンマ1に決めて頂きましょう。」
「戦闘中に会話し過ぎると判断を誤るぞ、まあこの位の戦闘なら大丈夫か。」
ベータ3はテロリストのもう一体の左右にガトリング砲を撃ち込んで動きを封じ込める。
相手も負けじとロケット砲を撃ってくるが、ガンマ2の操作するシールドの展開によって砲弾が弾かれた。
テロリストの動きが緩慢になっている隙にADは相手の懐に入り込んで、右アームに装着されたショートスピアで相手の腹を撃ち抜いた。
テロリストの機体は火を吹きながら倒れ込んだ。もう一体は先ほどの攻撃により腕パーツを破壊されたことで退避していたが、ガンマ1はADを加速させて追跡する。
「戦場で背中を向けても情けはかけられんよ!」
ADは左手に持っている散弾砲で相手の機体を一撃で拡散させた。
「すごい威力でした。」
「相手にも家族がいるかも知れないと思うと少し悲しい気持ちになります。」
「その感情は忘れてはいけない。愛情は注げる時に沢山注いでおけ。俺達はそういった場所で生きているんだ。」
「相手に奢ってしまうと返り討ちになる事だってあります。」
「そうですね。こうやって生きているだけで有難いと思えます。」
ADは周囲の状況を確認する為にレーダーを展開して、近距離には大きな熱源が無い事を確認した。
「そういえば、どうやってこの場所にいると分かったんだ?」
ガンマ1がベータ3に素朴な質問をした。
「簡単ですよ。このADにメインBOXを組み込む前に一度認証試験をしたじゃないですか。」
「ああ!じゃあ、私達のIDをGPS検索して見つけたのですか。」
「なるほどな、そんな事があったのを忘れていたよ。」
「じゃあガンマ5と6も見つけられるのですか?」
「あのお二方は現在エリア36のシェルターに避難しているようです。何故か通信が遮断されています。」
「シェルターか…テロリストに見つかりそうになって避難したという所か。」
「応援に行きますか?」
「シェルターにいるという事はとりあえず無事なんだろう。先ずはテロの沈静化だ。」
「それに出れる状況になったら自分達で出てきますよ。」
「ここまで来るまでに戦況は確認出来たか?」
「テーマパーク内の騒動は落ち着きました、やはりBDを捕獲したかったのだと思います。エリア38は現在もテロと応戦中です。一番テロの規模が大きいかと。エリア45の開発特区が狙われましたが、我々が先に防衛出来たのでそこまで進行はされてない状況です。」
「メーカー側は無事でしょうか?」
「あちらもBDを起動させて避難しているようです。こちらが先に出てきたので、機体は確認できていませんが…。」
「状況を考えるとエリア38に応援に向かうのが良いな。疲れがあると思うが異論は?」
ガンマ1が二人に確認する。
「問題ありません!」
「一人でも多くの命を救いに行きましょう!」
二人は同時に返答した。
「サブブースターも起動していくから、勢いにやられるなよ。」
ADはメイン2基とサブ4基のブースターを立ち上げ、大きく加速して、エリア38へと向かった。
テロリスト達が近くにいないか注意深く確認しつつ辿り着いたガソリンスタンドで、洋人はBDの燃料補給と装甲の簡易補修をしていた。
BDから降りてはいるが、索敵モードをフルに活用しているので、レーダーに反応があった時はすぐにアラームで知らせてくれる。
「少し油漏れも見当たるな、持って半日という所か。」
脚部に異常を発見し、それをガソリンスタンドに用意されている溶接器具で補修対応する。
BDの整備を経験しているという事もあり、洋人は手際良くこなしていく。
「MOTも絡んできているとはな。東洋の戦争がまた始まってしまいそうな気配もするな…。」
BDの確認を終えた洋人はコクピットに乗り込み、モニターを確認すると、エリア36の方でレーザー照射の光が放たれているのが見えた。
もう辺りも暗くなってきているのでより光が強く見える。
「あっちには行政区画があるはず、都市機能を麻痺させる事までやろうとしているのか。テロリスト達だけの仕業では無さそうだな…。」
洋人はこの街の生活を早く戻す為にどうすれば良いか少し考えた。
「あまり軍は頼りたくは無かったが仕方がない。」
思いついたのは以前共に戦っていた戦友達と協力する事だった。洋人は高校に通う前に中東地域で日本支部と共闘した事がある。
「今は忙しいとは思うが…、!?」
モニターにアラート表示とアラーム音が鳴り響いたと同時に洋人はBDを横転させた。次の瞬間にロケット弾がBDが立っていた場所に着弾し、爆発する。
すぐに次の動作に入る洋人。発砲してきた場所をおおよそで判断してロングバレルにて発砲する。
「この距離だと威嚇にもならないと思うが。」
また、次の砲撃がきたので着実に回避していく洋人。ロケット砲の勢いを見て、相手は近づいているのが分かった。
「ガソリンスタンドから出てきた不明機!こちらは3体で包囲している!無用な抵抗は止めろ!」
相手から近距離通信が入ってきた。ノイズが少し混じっているが変声もしていないリアルな声だ。
「そうは言ってもそちらから仕掛けてきたんだろう!」
洋人も通信をオンにして相手に反撃する。すると相手の一体に命中したのか、少し遠くで煙が上がった。
「やりやがったな!停戦の意志は無しと見えるが間違いないか!」
相手が近づいている事で声もクリアに聴こえてきた。
「そっちも全く無いだろう!まずは所属を言ったらどうだ?」
洋人は相手から飛んでくるロケット弾を回避しながら答える。
「ん!?その特徴のある事はヨージンじゃないのか?」
相手はそんな返答をしてきて、攻撃が止まった。
「俺の事を知っているのか?日本支部の者なのか?」
洋人も回避行動は取りつつも攻撃を止めて相手を窺った。
「そうか、ヨージンか!俺だ、日本支部所属第24部隊のリンだ。」
「リン…?ああ、あのリンか!」
リンという人物は先ほど考えていた中東地域で共闘した知り合いの一人だ。
「日本にいるとは聞いていたがこんな所で会うとは。少し話そうじゃないか。」
そう言うとリンという者と他2体のBDは洋人と対面した。3人は現行型のBDに乗っていた。
「こんな状況で会う事になるのは何かの縁な気がするな。どうだ?共同戦線といかないか?」
「もちろんだ。早速だが、どこを優先した方が良いか聞かせてほしい。」




