表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケモ耳紳士かと思いきや、激重感情拗らせた溺愛に蕩けそうです 〜獣人騎士団長との年の差婚姻譚〜  作者: 観世こより
第6.5章《リタルク・ルミナリア前夜譚》 それぞれの祈り、それぞれの夜
96/138

剣に託す覚悟 <レザト>

夜の帳が街を静かに包んでいた。

騎士団の部屋の窓から見下ろすと、リタクロスのあちこちで灯る秘石ランプが、地上に星を散りばめたように瞬いている。


祭りの準備は着々と進み、人々の笑顔と喧騒が、その光に照らされて揺れていた。

まるで祝祭の夢の中——無垢な期待が、あのランプのひとつひとつに込められている。


だが、その光の下には、確かに影がある。

魔獣が蠢き、死が近づいているのだ。


ノーマン。

あの男が、ただの無策で事を運ぶはずがない。

魔獣が街に出現することすら、計算のうち——自分たちだけは決して傷つかないよう、何かしらの術を講じているはずだ。


問題は、それが何か。

それさえ突き止められれば——


『確かに状況は不穏かもしれません。ですが、証拠なき疑念だけで街の祝祭を止めることはできません。それこそ、街全体の混乱を招くでしょう』


……カイの声が、脳裏で静かに反響する。


証拠——。

それがない今、ノーマンを断罪することは、己の名誉と街の安定の両方を危機に晒すことに他ならない。


加えて、あの紅の欠片が“輝崩化した秘石”であるという事実は、魔術院の極秘事項だ。

それを公にすれば、敵に回るのはノーマンどころの話ではない。

国家そのものの理不尽が、牙を剥くかもしれない。


そして……。

あの夜、瞳を震わせながら真実を口にしたエマの、あの覚悟の重さを。

彼女の誓いを、裏切るわけにはいかない。


だが、時間は……もう、ない。

傭兵や冒険者たちが街に流れ込み、治安は綻び始めている。

騎士団の騎士たちは日々の戦いと巡回で疲弊し、傷つき、崩れかけている。


市民たちは何も知らず、浮き立つようにランプの光に夢を託している。

だが、その光が地獄の扉を開いているかもしれないとも知らずに。


——このまま何もしなければ、リタクロスは沈む。


中止すれば混乱を招く。

糾弾すれば、証拠がないまま信頼を失う。

誰にも頼れない。誰も、この道を代わりに歩いてはくれない。


今、街を守れるのは——俺だけだ。


それが、この地を託された者の責務。

あとは、戦いの中で突破口を見つけるしかない。

誰よりも早く剣を抜き、誰よりも深く闇に踏み込むしかない。


——甘えは捨てろ。


考えるな、選ぶな。進め。

光があろうと、闇が濃かろうと、道はただひとつだ。


やるしかない。それだけだ。


誰もが“祈り”を捧げた祭りの前夜、レザトは剣に“覚悟”を託しました。

次回、いよいよ物語は《第七章》。

リタルク・ルミナリア当日、すべてが動き始めます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ